自由な少女
ヘスティアが家事用オートマタで買収されそうになっている。
「マデリーンがお隣さんになることで、定期メンテナンスも安価になります!」
「で、でもお高いのでしょう?」
「ふふー。フェリクス様が材料を分けてくれるなら、そのあたりも改善……」
「さすがに自分で狩れ。私の貯蔵はアルテとラウルのためでもある。依頼は受けるが、私は高いぞ」
そう返すと、マデリーンはしょんぼりした。人形二体に叩かれているが、これは変らんぞ。自分だけのために貯めたわけではないのだからな。
「フェリクス、まだ色々貯め込んでるんですか?」
「当たり前だろう」
ラウルは何とも言えない顔をした。なぜだ。子どもを育てるという決断をした段階である程度の資産を用意したいと思うものでは。できるかどうかは別として。まぁ、人によっていろいろ事情があるからな。
「フェリクス様の場合、やり過ぎなのでは?」
ジークにそんなことを言われたが、心外である。ジークを独り立ちさせてヘスティアのところへ返すまでにも、私は相当な物資をつぎ込んだぞ。人を一人育てるというのは、それだけの覚悟がいることではないのか?
「フェルは優しいから、身内に入れるととっても甘くなるの。アルテ、そういうとこ大好きだよ♡」
何か納得した顔をしているが、私はそんなに優しくはないぞ。敵対する相手には容赦なく色々とやってきたしな。年を食って丸くなった自覚は少しだけあるが。
「まぁ、手加減なくやる時はフェリクスほど怖い存在もないですからね」
何か思い出したのかラウルがそう言って苦笑する。ジークも頷いていた。
「けれど……材料に関しては私が融通しても構いませんので、導入は真剣に検討させていただきたいわ。フェリクス様の家でなく、私の家に住んでもいいわけですし……」
「? あら。離れを案内されたので、もう住んでいいのかと思って、マデリーン、工房を用意してしまいました」
「なに?」
どういうことだ?
小娘に目を向けると、少し考え込んでからポン、と手を叩いた。……心当たりがあるのか。聞くのが怖くなってきたぞ。
「確かに向こうのお家の半分くらい、改造されていた。鍛錬場とお部屋は変らなかったし、倉庫もそのままだったから、ドラクルさんの許可を得ているのかと思っていた」
……そうだな。突然、魔女が工房を作って我が物顔で居座り、私の知り合いだと紹介されたらそう思うものかもしれんな。いや、思うか? 思わんだろう。普通は思わんよな? 私がおかしいのか?
「疲れてきた」
「以前から彼女は自由ですから」
ジークがそう言って、私の目の前に玉露を差し出した。とてもいい匂いだ。
確かにマデリーンは初めて見たときから自由か。敵対する相手の魂を蠟人形に閉じ込めて火をつけ回っていたものな……。あまりにもかかわりたくなくて、救援要請を「魔女に喧嘩を売るのが悪い」と言って断った覚えがある。
結局、罪なき人々へ被害が出そうになったので止めに行ったのだが。
「そういえば、人形の魔女様はなぜフェリクス様に懐いているのですか?」
「わからん。マデリーンの魔力が切れるまで遠隔で戦い、倒れた頃に捕獲して魔力を押さえつける魔道具を使用の上で家に招いて、やらかした出来事に関する事情を問いただしただけだが、なぜか懐かれた」
本当に不思議である。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
マデリーン曰く
「フェリクス様は、あったかいおうちで、あったかいごはんをくれて、お話をきいてくれたのですよ! マデリーンのことを虐めた人にも、お前が悪いと言ってくれました♡」
とのこと。




