ごはん目当て
マデリーンはそのまま昼食を食べて、昼寝をしている。とりあえず、エマを一緒に置いておいた。
せっかく起きたので何かやるか、と思いながら動画を流し見していたところ、菓子作りの動画が流れてきたので、材料があったななどと思いキッチンに立った。
まぁ、計量して混ぜて焼くだけだが。
タイマーをセットしておいて、決まった時間に出せばよいから……ふむ。また暇になってしまったな。
「本でも読んでおくか」
そう考えながら扉を開くと、マデリーンが立っていた。驚いて一度、扉を閉めた。
そして、少し考えてからもう一度開いた。
「いや、なんでこんなところに立っている」
「良い匂いがしたものですから……。それで、今焼いているのは何ですか? 甘い物ですね? マデリーン、甘い物は大抵大好きです」
「パウンドケーキは寝かした方が美味いからな。食べられるのは明日だぞ」
「そんな……! 嫌です! マデリーンも絶対食べます!!」
私の知り合い、こういうのばかりか?
「お庭を借りて、一晩泊まり込むので!」
「普通に買った方が美味いだろうに」
「フェリクス様の手作りだということに意味があるのです!」
なんか、前に同じようなことを言われたなァ!!
そう思いながら、ヘスティアの家の方に少しだけ目を向けた。
「ちなみに晩御飯はオムライスです」
「フェリクス様。マデリーンもここに住みます」
「やめろ」
どいつもこいつも、私の家に住もうとするな。
「エマを引き上げます」
「待て。少し相談をしよう」
く……! 的確に困るところを抑えられている。
とりあえず、落ち着かせるためにも晩御飯までは滞在させるほかないか。
「だが、お前はラウルのことも苦手だったろう? 今は他の子どもたちもいるが」
「確かにフェリクス様以外の殿方は苦手ですが……」
「……? 女子ならばいいのか? であれば、離れの小娘のところに泊まるといい」
「小娘? そういえば、そんなことも言っていましたね」
少し考え込んだマデリーンはエマに「案内して」と言い、エマもそれに頷いた。
そのことでようやく、私の背を叩く二体の人形が離れた。
「それにしても、相変わらずだな」
マデリーンは魔女としてはかなり若い部類だ。五十年も生きていないだろう。幼くして魔女になったが故の苦労は計り知れない。
それはそれとして、わがままを言っていい相手に選ばれているのはなぜだろうな……。まぁ、私が年長者であることには変わりないからな。少しくらいは甘やかしてやるとするか。
だが、いくら相手がマデリーンでも敷地内に女が増えたと知ると、ヘスティアがうるさいだろうな。
「一応、教えておくか」
押しかけてくる予感しかせんが、黙っていて、今回のことが突如バレるよりも確実に事態はマシだろう。
やれやれ、食事目当てに住み着こうとするのはやめてほしいものだな。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
マデリーンはノリノリで工房を作ろうとしていることを今のフェリクスは気づいていなかった。




