人形の魔女マデリーン
「まぁ! マデリーンが知らない間に、エマがとっても賢くなっているわ!」
「恐縮です」
早朝、ラウルたちが学校に行った後、マデリーンが「メンテナンスに来たのですよ!」と言いながらやってきた。エマに言って全ての家事用オートマタを集めると、彼女は速やかにメンテナンスを始めたのを見て、私は「終わったら声をかけてくれ」と二度寝しに戻った。
部屋の戸が叩かれ、呼びに来たオートマタと応接室に向かうと、マデリーンは優雅にティータイムに入っていた。
マデリーンは、相変わらずフリルたっぷりの動き難そうな服を着ており、それがかなり似合っている。この服装を好むようになったのはマデリーン曰く「フェリクス様の影響ですね!」とのことだがまるで記憶がない。
「まぁ! フェリクス様ったら、お寝坊なのですね」
「私は夜行性なのだが」
「でも、ラウルがちっちゃな時はこの時間にはお目目ぱっちりでした」
「子どもが小さな時はそういうものだろう?」
ゆるくウェーブがかった金色の髪をかき上げたマデリーンは、楽しそうに笑っている。
「それで、聞いたのだけれど……ヘスティア様もお隣に越してきたのですって?」
「ああ。もう広まっているのか?」
「はい。とはいっても、ヘスティア様がいつかフェリクス様を追いかけるなんて、皆さま想像していたことかと思いますけど」
それでも文句を言う連中もいるらしい。なんでも、長年支援してやったのに、だとか、恩知らず、だとか言っているそうだ。
「むしろ、ヘスティア様から受けてきた利益の方が多いので、大半の人は白い目で見ていますけど」
「お前は最近どうなのだ?」
「変わりませんよ。元々、今の人間たちから隠れて暮らしていますからね」
そう言って、マデリーンは肩を竦める。
彼女は関わる者を極端に制限している。マデリーンは元々人見知りである上に、一部の人間から酷い扱いを受けたこともあるので、それは仕方のないことだ。実際、ラウルたちが学校に行っている時間にわざわざ訪ねてくるくらいだしな。
「うちは随分騒がしくなったよ。ジジイから預かっている小娘や、道満殿から預かっている子どももいるし、隣にはヘスティアとジーク。裏には太郎……教え子が住むことになってな」
「……なんだか、楽しそうですね」
「悪くないぞ」
面倒なこともあるが。
「マデリーンも落ち着きたいのですが、ほら。定住するならば対価を求められるでしょう? あまり人と関わりたくないので、それくらいならば放浪していた方がまだマシなのです」
自分が暮らすうえで受け入れられることと、できないことというのは大切だからな。私もそれなりに放浪してからここに落ち着いたわけだし。
「幸いにも、フェリクス様からのお給金で生活はできますし」
「お前の作ったものは便利だからな」
手放せなくなるレベルで、本当に便利だ。
オートマタがいなければ、屋敷の維持が大変だった。昔は使用人がいたが、今は一般魔族だからな。あまり、他者を家に入れたくないということも考えると、オートマタは本当にありがたい。
「オートマタを大量に作ることができるのであれば、起業してレンタルもできたかもしれんが」
「その方々がマデリーンのお人形を大事にしてくれるかわからないもの」
マデリーンにとっては我が子でも、他の者から見ればただの道具故、仕方のないことではあるな。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
マデリーンのオートマタが欲しい人とかはいっぱいいる。でも、マデリーンが見つからないのであきらめてたりする。
見つかっても売ってもらえるかとか、レンタルできるかとかは別問題だよ。




