太郎再来
タコはラウルが美味しく食べた。
無事になくなって安心した。さすがに捨てるには忍びないからな。
「それはそれとして、もう二度とやるな」
「HAHAHA! それは先生の行い次第ですね!」
またやってきた太郎にそう言うと、豪快に笑い飛ばされた。それに呆れて溜息を吐く。
再び来るのはよいのだが、屋内に馬を連れ込もうとしたので、それは止めた。なぜその選択があるんだ。おかしいだろう。
「それで、今日の用事はなんだ」
「家を紹介してほしくて」
思いのほかまともな理由ではあるが、それは私に頼むべきことか?
私が「何言ってるんだ、コイツ」という顔をしているのがわかったのだろう。思案するような声を漏らす。
「実は、馬小屋付きの家が見つからなくて……」
「建てろ」
「土地を売ってもらえなくて……」
S級ハンターの資格があるんだから、金で引っぱたけばよいものを。
「何というか……最終試験で邪魔して来たからボコボコにしたヤツが、有権者の娘の推し? だったらしくて、少しばかり苦戦してます」
「は? 弱いのが悪いだろう、それは」
「ですよねぇ!?」
そもそも、妨害したのならば仕返しを食らうことぐらい想像がつくだろうに。そんなだからS級に上がれんのだ。
その有権者の娘も娘だ。要らんことをするな。
「今住んでるところも、追い出される寸前なんですよ」
「それはたぶん、馬を部屋に入れるからだろう」
「なんでわかったんですか!?」
当然のように我が家に連れ込もうとしたからだが?
「でも、小屋がないんだから仕方なくないですか? それに、多少は離れられますが、あれはもう一人の自分みたいなものだし」
それでもどうかと思うぞ。そもそも、あの馬はやろうと思えば姿を消せるだろう。それでさせんから追い出される寸前になるのだ。
「じゃあ、うちの裏でも使うか?」
「裏?」
「狭いがあるだろう? 囲いの中に雑草の生い茂っている土地が。あれも面倒な人間が隣に来ると嫌だから私が買った土地なのだが」
ヘスティアの土地は魔王が譲ってくれなかったのだが、もう一方の隣の土地と前の土地も買っている。税金は取られるが金はあるからな。
「私から借りてもらうことにはなるが」
「いや、むしろいいんですか?」
「いいぞ。ただ、私に面倒をかければ追い出す」
そのために売るのではなく貸すのだからな。
「ただ、お前もハンター協会や周囲のハンターとの関係を改めて構築し直すように」
「はい!」
「いい返事だな。言っておくが、できなければ、本当に見捨てるぞ」
「……はい!」
ほう……。やはり返事だけしておけばいいと思っていたな?
そうはいかないからな。私はやると言えばやるぞ。
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