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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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デュラハンの置き土産


「ねぇ、フェル! アルテしばらくタコ見たくないって言った!!」



 私だって押し付けられただけでこんなもの見たくなかったのだが、あの感じでは最低限これを押し付けるまで帰る気はなかっただろうな……。



「それにしても、こんなもの本当に要らんのだが……」



 今、タコはそれなりに値段が張るというし、好きな者に持って行った方がよかったと思うが。確かに、ラウルはたくさん食べるが。

 太郎は陽気で友人も多いのだから、いくらでもやる相手が見つかっただろうに。私はご近所づきあいすらサボっている。


 タコを抱えて悩んでいると、「ただいま帰りました!」と豆太が帰ってきた。



「おかえり」

「はい! それはなんですか、フェリクスさん?」

「……タコだ」

「タコ……? たこ焼きでもするんですか?」

「それもよいかもしれんな」



 満足そうに食べるラウルが目に浮かぶし。しかし、そうなると作るのが大変か。材料はどうだったか……。



「材料の方はラウルに頼んでおくとして……たこ焼き機を増やすべきだな。どこに売っているものか」

「え、本当にたこ焼きなんですか!? わぁ、僕、家で作るの初めてです!」

「そうか。では楽しみにしているといい」



 家電量販店でも覗くか。



「では、エマに言付けして出かけるか。豆太、準備してこい」

「はい!」



 最近ようやく涼しくもなってきたし、外出はしやすくなったな。暗くなるのも早くなって何よりだ。

 アルテはそろそろ「こたつを出して!」などと言っている。まだ早くないか? 十二月になってからでいいのではないか?


 エマにタコを渡し、ラウルに一部の材料のお使いを頼むJOINを送った頃、豆太がランドセルを置いて戻ってきた。



「少し薄着ではないか?」

「大丈夫です!」

「そうか……? 寒くなったら言うのだぞ」

「はい」



 そろそろ、防寒具もいくつか買っておく方がいいか。

 ラウルも去年よりだいぶ大きくなったからな……。小娘も一応確認しておく必要があるか。女物の服などよくわからんが……本人と店員に選ばせればそれなりのものになるだろう。



「そういえば、保護者さんへとプリントをもらったのですが、渡すのはフェリクスさんでいいのでしょうか?」

「そうだな。道満殿はまだ忙しそうだし、私が対応しよう」



 思ったよりも長引きそうだ、と頭を抱えていた友人を思い出す。

 正直、不憫には思うが、私が関与できる話ではないからな。一応、週に一度、豆太と通話できる程度の時間は取れているが、それもいつまでもつだろうな。双方、楽しみにしているようだからなるべく続けばいいと思うのだが。



「それでは、行くとするか」

「はい!」



 とにもかくにも、まずは今日の準備だ。一緒に焼いてみるのもいいだろう。ラウルや小娘もこういうのは好きそうだ。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


アルテはクーラーボックスに猫パンチ連打してる。

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