家族旅行3
夕方になって目を覚ました私は、のんびりと本を読みながら夕食の時間を待つことにした。食事の時間等と子どもたちに伝えてあるので、遅れることはないだろう。食事を一番の楽しみにしているやつが二人もいるわけだしな。
気付けばアルテが膝の上に陣取っていたが、これはいつものことだ。
そう思いながら待っていると、子どもたちが元気に「ただいまー」と言いながら帰ってきた。ラウルと小娘が持っている紙袋の中身はほとんど食べ物だった。こいつららしいというか。
一方で、豆太は何かよくわからんカッコいいドラゴンのキーホルダーなどを土産に買ってきてくれた。私たちに遠慮はいらんのにな、とは思いつつ、子どもが自分のためを思ってしてくれたことというのは嬉しいものだ。礼を言って家の鍵につけた。ちなみにカッコいい狼のキーホルダーもついているが、これはラウルが小学生の時の修学旅行で買ってきたものである。
楽しそうな子どもたちの後ろで、ヘスティアは少しばかり悲しそうな顔で呻いていた。
それでも、買い物を楽しんではいたのだろう。購入品は多いように見える。
「フェリクス様が誘ってくださったから一緒にお出かけできると思っておりましたのに……」
「夜に散歩する予定だが……」
「我々は吸血鬼ですので」
ジークは輝かんばかりの笑顔でヘスティアにそう返した。そう、我々は吸血鬼親子。夜間の方が動きやすいのだ。更に言うと、夜の方が人が少ないし、ハンターの多いこの土地でも恐れられずに済む。まぁ、襲撃される可能性もあるが……私たちは強いのであまり問題はない。
「夜ですね! 今度こそ私もフェリクス様と……♡」
「私もいますからね。姉さん」
呆れたような声音でそう言うジークの言葉は届いているのか、いないのか。
せっかく旅行に来たのだし、少しばかり散策をするか、というだけで、すぐに戻って温泉に入るつもりだ。
「せっかくですし、夜は向こうの大きい浴場へ行ってもいいかもしれませんね」
「そうだな」
「なるほど混浴」
「行かんからな」
念押しをしておくが、鼻血を出しているヘスティアには届いているだろうか。
ジークに視線を向けると、頭が痛いというように額に手を当てていた。ああ、うん……。そうだろうな。
「フェリクス様、姉には後で釘をさしておきます」
「そうしてくれ」
あと、なんかすごい顔をしていることも言っておいてやれ。なんというか……大丈夫か? ヘスティアの尊厳的なものは。
「それより、今日の飯ってなんですか?」
「カニだ」
「カニ」
「この辺のダンジョンで討伐されているレッドクラブというカニの魔物がいるのだが、大きくて美味いため養殖されてブランド化されているのだ」
どこかの国で「日本人に食べ物扱いされてしまったかー」「絶滅するまで食うぞ、あいつ等」などと言われているらしいが、今のところはたくさん湧いて出ている上に養殖もかなりうまくいっているためそんな心配はなさそうだ。
いやまぁ……ウナギっぽい魔物が出た時はかなりの勢いで狩りに向かう者がいたらしいが。
今の日本でウナギはかなり高級だからな。魔物でもいいから食べたいとかなりの者が押し掛けた。
その結果、狩猟を禁止されてしまったのはいつ思い出しても面白い。「魔物だぞ!」「絶滅してもいいだろ!!」というブーイングも出ていた。
ちなみに、少ししてから食事が来たが、みんな黙々と食べていいた。
人だろうが魔族だろうが、カニを食べる時は静かになるものである。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
カニはおいしいですよね。
鍋。そして、締めに雑炊もおいしい。




