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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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旅行の予定


 あのダンジョンのことは、ハンター協会に任せることにした。なぜか喜ばれているらしい。自分の成長がわかる、だとか、報酬がうまい、だとかで。

 まだ五十まで行っている者はいないらしいが、三十までは行けているらしい。



「階層クリアごとに帰れるのがいいですね! 素材回収量は確かに少ないですが出るモンスターも固定されているので特定の素材が欲しい時ならば粘る価値もあるかと」



 協会の連中はそんなことを言っていた。

 このダンジョンの最悪さは四十一階層以降に全振りしておいたので、進むことができた際にはぜひ堪能していってほしい。

 想像もせんだろうな。四十階を抜ければそこに広がるのはビーチだなんて。


 話し合いと並行して旅行の準備を進めていたのだが、家に帰ってゆっくりしたらアルテが温泉で二人きりは嫌、お風呂は嫌いというので、温泉は家族旅行にすることとした。

 ちょうど秋の連休もあることだ。たまにはいいだろう。



「私もいいの!? パンフレット……ごちそう……じゅるり」

「僕はお留守番の方がいいのでは?」

「何を言っている。何なら、ヘスティアたちにも先ほど誘いをかけたぞ。遠慮などいらん」



 豆太は「それなら……」と頷いた。

 ちなみに、ヘスティアは温泉という表示で一度気絶したらしい。何故だ。本当によくわからん女だな。



「大丈夫っスか? 俺、結構食べますけど」

「大丈夫だ。そういうことは子どもが気にすることではない……が、お前は気にするだろうから言っておく。ハンター協会が提携している旅館だ。その中でも、高位ランカーが利用することの多い場所だ」

「つまり、俺みたいによく食べるやつ向けのメニューも揃えてあるってことか」

「そういうことだ」



 表情がパッと明るくなったのを見るに、憂いが晴れたのだろう。普通の高級旅館でもそんなに気にすることはないのだが……。大体、誘っているのは私だぞ? そのあたりも考えているに決まっているだろうに。



「付近の観光地でその土地のものを楽しむもいいだろう」

「そういや、京都は避けたんですね」

「今京都になぞ行ってみろ。巻き込まれるぞ。ジジイも疲れているだろうしな。使える手が近くにあれば使ってくるぞ」



 アイツはそういうところがある。あのジジイが元気ならまた話も変わったかもしれんが、かなり振り回されていると聞く。



「そういえば、小娘の姉だが」



 小娘はどうでもいいかもしれんが、一応伝えておくとするか。



「あの執着狐と上手いことやっているらしい」

「なんと」

「来年春を目途に結婚の話も出ているようだ」



 清明の直弟子であり、顔が清明生き写しの、自分にぞっこんな男の束縛は気にならなかったらしい。そんなことあるか? と私などは思ってしまうものだが、当人たちが幸せそうにしているなら、まぁ、うん。よいのだろう。本当に理解が難しいが。



「姉は男の趣味が悪い……」



 小娘はそう言いつつも「めでたい話ではあるか」と言って頷いた。



「来年までに結婚祝いを用意できるようにしておく」



 まぁ、小娘の姉が清明の直弟子を捕まえたものだから、兄が結婚を焦っているそうだが。

 そもそも、昔ほど結婚を強いられるような状況ではないだろうに。まぁ、陰陽師界隈で相手を選ぶならできても数年先、ジジイに許してもらえてからになるのではないか? 知らんが。



「そんなことより、美味いもんいっぱい食べられるように色々調べましょう」



 ラウルは豆太と一緒にウキウキとパンフレットを捲っていた。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


そのころのお隣さん

ヘスティア「フェリクスさまとおふろ……?」

ジーク「姉さん、一緒に入るわけじゃないんですから……」

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