猫のやる気
我々は変異者たちが作った爆弾をぶん投げて、楽をすることにした。
この玉は魔力を込めると一定時間後に爆発する。ちなみに、爆発する規模は中に込めた魔力量による。私が適当に魔力を込めるだけで、かなりの効果がある。これがダンジョンでなければ、解体業者が必要ないレベルでバラバラになるだろう。というか、周辺含めて吹っ飛ぶ。
「この階は虫だったようだな」
「蜘蛛と蝙蝠ね。うーん、何も残ってないね?」
「あの程度の爆発で消え去るなら大したことなさそうだな」
後ろにいた大きな蜘蛛をサクッと片付けて魔石を手に取る。どす黒く、手のひらほどの大きさだ。足元には美しい糸が落ちており、ドロップアイテムだろうと拾い上げた。それを鞄にしまい込んだ。こういったアイテムは武器や防具、日常品の高級なものに使用できる。この手の糸だと……量があれば服に使用する者もいるな。
「ガッツがある蜘蛛ちゃんだったね」
「それだけでは我々には届かぬがな」
行けるところまではこの感じで行くか。別に鎌で斬ってもよかったが、油断すると服に血が付くのが嫌だしな。血の汚れは取れにくいのだ。
「フェル、次はアルテがやってもいーい?」
「構わんぞ。ほら」
「わぁい!」
アルテに渡すと、ワクワクした表情をしている。
まぁ、正直なことを言えば、自分が食らうのでなければ爆発させるのは結構楽しい。これを言うと引かれる可能性は高いだろうな。
そんなことを考えつつ、アルテを抱えて階段を上る。
「ふむ、このあたりでよいか。アルテ」
「準備ばんたーん♡」
次の階層へ続く扉の前で、アルテが振りかぶる。そして、私が扉を開くのと同時に玉をぶん投げた。そして、扉を閉める。
「どうどう?」
アルテに急かされて扉を開けると、大量の毒蛇が転がっていた。
この階層は蛇のようだな。しかも、奥の方からまだ出てきている。
「残っているぞ」
「え~……⁉ まぁ、フェルに比べたらアルテ弱いけどぉ」
「まぁ、どうせ消し飛ばすのだ。手段はなんでも構わんだろう」
普通ならば、アルテが投げたものでも相当な破壊力があるはずなのだが……。それだけ、強くなっているということだろう。
不服そうなアルテの頭を撫でて、「今からでも挽回は可能だぞ」と微笑むと、パッと明るい顔になった。
「じゃあじゃあ、今からアルテがここにいるにょろにょろ、ぜぇんぶ殺しちゃうね♡」
「ああ、お前の好きにすればいいとも」
アルテの力ならば簡単なことだろう。だてに私の使い魔を長年してきたわけではない。
確かに一部の変異者や魔族には敵わないかもせれぬ。しかし、彼女に傷を負わせることができるものはその『一部』だけだ。ただ可愛い猫だと思ってなめてかかれば後悔するのは敵の方だ。
頭の上に猫の耳、尻から尻尾が出てくる。獣人スタイルのアルテは周囲を見回してニッと笑った。
「じゃあ、やるね」
そう言って、彼女は杖を取り出した。
……だが、それはさすがにやり過ぎではないか?
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