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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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急な依頼


 豆太が小学校に行くようになった。授業にもついていけていると聞くし、楽しそうに学校の話をしてくれるので合っていたのだろう。

 ちなみにだが、道満殿に制服姿の写真を送ったら「いくら払えばいい」とかなり本気な声で言われて私はかなり怖かった。道満殿から預かった金で全て賄えているとは伝えたが、何か話が食い違っている気がする。ラウルが微妙な顔をしていた。ラウル曰く、「写真を買おうとしてるんだと思いますよ」ということらしい。ただのスマホで撮った写真だぞ? 私はプロではないのだから、そんなものを買っても仕方がないと思うのだが……。

 いや、そういえば私も仕事で家を空けた時にラウルを預かってもらった際は同じことをしようとした記憶がほんの少しだけある。親の性かもしれぬ。



「あの子は学校に行く時間は暇になったな」



 おかげで積んでいたゲームや本の消化ができるというもの。昼時には時折、ヘスティアとジークも来る。

 椅子に座って、膝の上にアルテを乗せていると平和さにホッとする。



「こういうのでいいのだよ」

「にゃあー (それー)」



 こういった暮らしを「退屈だ」という者がいることは知っているが、私の性にはあっている。まぁ、私がそう言ったところであまり信用してもらえぬのだが……。

 確かに過去には少しばかり暴れていたが、私の本意ではないというのに。


 さて、そんなときに限ってスマホが震えている。無視したい気分でしかないな。

 溜息を吐き、渋々表示された名前を見る。

 そこには珍しい人物の名が示されていた。



「織田信長……第六天か」



 かなり面倒である。

 日本全体の変異者・魔族を束ねる魔王である彼女は時折、私たちのような他所の国からやってきた者たちを保護する。そして、その代わりに仕事を手伝うことを約させる。そして、おそらくその件だろう。清明が肩代わりすると言っていたが、我々では得意なものが違うのだ。そうできないものがあったとしても仕方のない話だ。



「すぅ……、もしもし」

『出るのが遅い』



 それはおそらく、私に限った話ではないと思うが、余計なことを言って藪を突きたくないので「すまないな」と短く謝罪を入れておく。



『貴様等で交わされた契約の件は知っておるし、清明から報告も受けておる』

「ならば、清明では対処できない案件か?」

『相変わらず、話が早い』



 愉しそうな声に溜息を吐きそうになる。拗ねた時が厄介なのでそれを飲み込んで「では、なんの依頼だ?」と問うと、急に雰囲気が変わった。



『ダンジョンが溢れそうな兆しが見える』

「わかった。後で座標を送ってくれ。早めに対応する」

『わし、フェリクスのそういうところが大好きじゃよ♡ どうだ? 婿に来んか?』

「すでにお前には嫁がいただろうが」

『ん? もうすでに死んでおるのだからせーふじゃろ。生きておったらまあまあの修羅場じゃったかもしれんけど。それともナニかぁ? 最近来た魔女にめろめろなんかぁ?』



 この酒でも飲んでいるのかと思うようなウザがらみ……! 本当に苦手だ!!



「もう、そういうことでいい。切るぞ」

『照れちゃってもう~♡ わしはいつでも大歓迎だからネッ』



 電話を切って、思いきり投げたくなった私は悪くない。

 清明曰く、誰でも誘っているわけではないというが信じられんほど軽い。


 着信音が聞こえてメールを確認する。仕事は早いな……。



「思ったより近いな……。ここが間引きできていないというのは信じられないが」



 だが、あの魔王はそんな意味のわからん嘘を吐くような人物ではないからな。さっさと片付けるとするか。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


〇織田信長

 戦国時代に変異者となった人物。

 男であり、女でもある。今は好んで女性の恰好をしているため、彼女と呼ばれる。相手はどちらでもイケるらしい。

 第六天魔王を自称しており、かなり強い。本能寺の変をきっかけに人としての表舞台から去り、彼女自身は日本の裏の世界を守りながら暮らしている。かなりの美少年を一人、小姓としておいている。

 フェリクスのナンパは半分くらい趣味だし、五割本気。

「こいつの血を継いだ子とか、ちょー役に立ちそう♡」

 果たして彼女(彼?)に人の心はあるのか。

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