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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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ちょっとしたお祝い


 家で楽しそうに本を開く豆太を視界に入れながら、私は近くの小学校への編入準備を進めていた。この学校は私学で入学金やら授業料がやたら高い代わりに比較的治安が良い。逆に、この地域の近くの公立はすごいぞ。ラウルが進学するときに見に行ったが、ワーウルフの子どもが酷い虐めにあっていた。頭が人ではない性質を持っているというだけであのように残酷になれるのだから恐ろしい。

 まぁ、そういったこともあって、ラウルは私学を選んだ。

 豆太を引き取って、再び両方の視察をしたが雰囲気は変わらないようだったので今回もラウルの母校へ行かせようと思う。道満殿が戻ってきて兵庫に帰るのであれば、それはまた彼らの都合で学校を選べばいい。



「フェリクス様、夕食に誘っていただきありがとうございます♡」

「よく来たな、ヘスティア」



 せっかくジークたちと共にケーキを選んだからな。彼等姉弟も招待した。食事はエマに任せているので問題ない。

 私が作るものでは子供たちの腹を満たすのは困難だからな。主に時間的にキツイ。



「私も少しばかりおかずを買って参りましたの」

「助かる。ありがとう」



 ヘスティアは気の利くやつだな。

 礼を言うと、嬉しそうに頬を染める。なぜ。


 そして、ヘスティアが来ると子どもたちがジークと一緒に少しばかり距離を取る。



「気を使いすぎだ、お前たち……」



 我々のことなど気にせず、無邪気に遊んでいればいいのに。どちらにせよ、ラウルが成人するまではどうこうするつもりはない。私も男だからヘスティアのように美しい女に迫られるのは悪い気はせんのだが、そこはけじめというものだ。



「俺ら、別室で食べましょうか?」

「バカ者。今日はちょっとした祝いの席だ。そんなことをしてどうする。リモートで道満殿も参加するのだぞ。そもそも、二人で食事をしたければ外出する」



 どうせ、気になってチラチラ見に来るだろう。お前たちは。私の方が落ち着かん。それくらいなら前もって予約して二人だけで出かけるとも。一日くらい留守番できるだろう。



「……おでかけ。ふぇりくすさまと、おでかけ……ふたりっきり……」

「あ。ダメです。フェリクス様、姉がフリーズしています」



 ジークがヘスティアの目の前で手を振るが、まるで反応がない。まぁ……こういうところが初心で愛らしくはあるが。



「もう少し耐性をつけないと難しいか?」

「そ、そんな……! ヘスティアは大丈夫です! すぐにでもあなたのお求めに応じられます!!」



 何を考えているのか顔を真っ赤にしているが、別に何も求めんからな? もっと自分を大事にしろ?

 というか、この間、一緒に外出しただろうに。



「なぜ、フェリクス様はこの誘惑に耐えられるのか……」

「まぁ、自分で言ってる通り結構年齢重ねてるからすでに色仕掛け食らいつくしてるんじゃねぇスか?」

「ああ……確かに昔からよく色仕掛けされてましたね」



 どういう会話をしているんだお前たち。呆れた顔で二人を見ながら軽く頭を叩く。



「豆太の教育に悪い」



 私の言葉に二人は顔を見合わせて「まぁ……」「確かに?」と呟いた。


 この後、エマが用意したご馳走を見た子どもたちはテンションをぶち上げていた。道満殿は元気そうな豆太を見て泣いていた。


 まぁ、豆太にも機を見てネットリテラシー講座を開いた後に通信機器を持たせるか。昨今は海外とも通話できるからよいな。便利な世の中になったものだ。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


豆太の日記

「フェリクスさんがスマホを買ってくれました。『さっこんはふしんしゃも多いので、連絡用に持っているのは悪いことではない』と言っていました。いい人です。道満さんと電話できるようにもしてくれました。とてもいい人です。

今度、小学校の制服を買いに行きます。ぼくが学校に通えるようになるとは思っていませんでした。

お勉強をがんばりたいと思います。」

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