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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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厄介×厄介


 久しぶりに見た清明はかなり疲れていた。そして、その後ろにいる七尾の狐はご機嫌そうだ。



「随分と久しぶりな気がするね、フェリクス」

「私はこんなに高い頻度でお前に会いたくはなかったがな。しかし、随分と疲れているようだな」

「まぁね」



 足元にいる狐をジッと見つめて「いつまでその恰好でいるつもりなんだ、環」と口に出す。

 言葉を投げかけられた狐はくるりと一回転するとそこには清明の色違いが立っていた。



「自分と同じ顔と歩くのは嫌やって言うたのは祖やありませんか」



 きつね色の髪に黄金の瞳、そしてふさふさの尻尾が二人を別人であると示している。声もどちらかといえばこの青年の方が甘いだろうか。



「いやぁ、楽しみやわぁ……。祖いうたら、あんな可愛い子隠してたなんてお人が悪い。しかも、ボクの好きにしてええ子なんやろ?」

「限度は考えや」

「はぁい」



 ……私よりも目の前のこいつの方がよほど倫理観に疑いがあるのは気のせいだろうか。まぁ、清明の連れてくる者だからな。どうせ何かあるだろうとは思っていた。それに、小娘の姉は一応、一度は止めたのだ。それでも「イケメンと会えるなら」と食いついてきたのはあの娘だ。何が起こったとしても自己責任というものだろう。



「それで、千明は元気なのかい?」

「元気だ。お前、もうここまできたら素で通せばよいだろう」

「怖がられるだろう」

「頑張ってもすでに怖がられている」

「なぜ!?」



 いや、むしろなぜあれで怖がられないと思っているのだ。そもそも、千年以上生きているような術師とかどう考えても普通に怖いだろう。しかも、自分に圧をかけてくる相手だぞ。手遅れにもほどがある。



「でも、フェリクスは怖がられていないじゃないか」

「私は何というか……『父』なのだとか」



 最初は怖がられていたが、なぜか今は懐かれている。……飯か? それだけで父親判定されるのは不思議だが。



「一応『養父』は僕やねんけどなぁ……」



 そうだな。しかし、トラブル後に妙な恰好をさせて我が家に連れてきて、私に任せたのはお前だな。



「それで……小娘の家族はどうした」

「ああ。父親と長男は今現場にぶち込んどるよ。まぁ、少しくらいは役に立っとるかな。母親とその両親は……ちょっと療養中やなぁ」



 療養中が言葉通りの意味でないことを察して溜息を吐く。こんなのに喧嘩を売るなんて阿呆としか思えん。私もボチボチ言い合いはするが本当の意味で敵対しようなんて思わん。私ですらそうなのに、このジジイがちょっと大人しくしているだけで調子に乗る者が出てくるのが不思議だ。



「それで、ボクのお嫁さんはどこ?」

「向こうの部屋だ」

「さっきも言うたけど、ほどほどにしときや? お前の執着心でガッチガチに束縛すると逃げられるからな」



 清明の言葉を聞いて「やはり裏がある男だったか」と思っていると、小娘姉の嬉しそうな声が聞こえてきた。



「頭花畑と厄介執着男。ぴったりやろ」

「……そうか?」



 この後のことは全てジジイが対処するだろうから私はどうでもいいが、本当に大丈夫なんだろうな? いや、本当にもう私は知らないからな。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


安倍(あべ)(たまき)

 正真正銘清明の直弟子である妖狐の青年。尻尾は七本。目指すは九尾。

 清明に「見合いしてみいひん?」と聞かれて写真を見せてもらったらド好みの女の子が映っていてるんるん。ノリノリで清良を迎えに来た。

 顔が本当に清明に似ている。背は環の方が少し高い。能力も清明の方が上ではある。ただ、現在の妖狐の中では上位三本には入る強さ。

 今まで何回か恋人ができたことはあるが、好みの女性に対する執着心がかなり強く、束縛が激しいタイプなので振られてきている。JOINはすぐに返してほしいし、電話は3コール以内に出てほしい。

 これを聞かされた清明はドン引きした。

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