ボス部屋
扉を開くと、王冠を被った水色の大きなスライムが目に入って少しフリーズしてしまった。
なんだ、これは。
「かわいい!」
可愛くとも魔物である。
我々を見つけると、液体を吐き出してきたため、少しだけ血を撒いて膜を作るとそれが溶けた。なるほど、立派なスライムである。
「なんというか、普通にかなり強力なスライムって感じっスね」
「そうだな」
小娘にはダンジョンに入る前に防御用のアミュレットを渡している。無茶をしなければ酷い怪我はしないはずだ。本日着るように指定した学園支給の体操着はかなり良い防具でもある。
「俺も出ようか?」
「要らない。私一人で十分だ」
ラウルが小娘に問いかけると、何でもないように返してきた。声音には恐れはない。
「どうします?」
「このまま見ていることにしよう。危なければ止めに入る」
「でも、アンタ。それ、防御機能なんもない私服でしょう。当たるとヤバいんじゃ」
「問題ない」
あれに当たるほど、怠けてはいないさ。まぁ、子どもたちを庇うようなことがあれば多少痛い目に遭うかもしれんが、死ぬようなことはない。生物としての格が違うからな。
それに、小娘の実力ならば討ち漏らすこともあるまい。ミスをする可能性もあるが。
「一撃で仕留める」
刀を鞘に納め、スライムを前に構える。
そして、一瞬の後に動き出す。
それは、流れるような動作だった。踏み込み、抜刀。その勢いのまま刀が大きなスライムを切り裂いた。後には刀を納めた音だけが耳に残る。
「……あの人、本当に結構な腕なんスね」
ラウルの声には少し驚きが混じっている。
清明に期待されているのだ。驚くほどではないが、学生の間にここまでの完成度とは末恐ろしい小娘ではある。しかし、それほど才能をもったいないと思っていたのなら、多少無理をしてでも自分で育てればよかっただろうに。
崩れ落ちたスライムは大きな魔石と王冠を残して消える。
そして、小娘の前に結晶のようなものが現れた。
「これは……?」
「ダンジョンを制した証だ。手を出してみろ」
「はい」
小娘がそれに触れようとすると、強い光を放った。そして、小さな王冠の形の結晶が手の内に残り、周囲の光景が変わっていく。
「ダンジョンがなくなる瞬間って、変な感じっスね」
「そうだな」
いつの間にかダンジョンの入り口まで戻ってきており、残ったのは戦利品のみ。
稀に消えることなく、ダンジョンの支配権を制覇者が得るという特殊なダンジョンもあるが、今回は普通に制覇したら消えるダンジョンであった。
「この王冠って何に使えるの?」
「ふむ。これで見てみろ」
特種魔道具のルーペを小娘に渡すと、興味深そうに眺めている。これは『鑑定ルーペ』といって、魔道具や魔石等の鑑定を簡易に行う力を持っている。無論、魔眼を持っていたり、特殊魔法を持つ者の方が精度は上だが、ちょっと確かめるくらいならばこれで十分だ。
「これが鑑定ルーペ……お借りします」
結果として、あの大きなスライムが落とした王冠は、「自分より弱いスライムが言うことを聞く」という効果を持つ品だったらしい。まぁ、スライムが多いダンジョンのボスが持っているにふさわしいものではあるな。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
〇キングスライム
王冠をのせた大きなスライム。今回のダンジョンボス。
正直、あんまり強くはない。でも、スライムの正統な進化系としてまぁまぁの強さはある。
目がまんまるで結構可愛いが、溶解液を出すため注意。過去には、このスライムに魅入られてテイムしようとした者も存在する。
落とすアイテムは大きな魔石や王冠。稀に小さな王冠をのっけたスライム(テイムモンスターとして得られる)。




