武器は後日渡し
私たちが帰宅するころには子どもたちも帰っていたので、小娘も呼びだして対魔武器を目の前に置いてやった。どこかソワソワしている。
「これが小娘の新しい武器だ。次の休みにダンジョンへ連れて行くから、そこで試し切りを行え」
コクコクと頷いて、小娘は刀を手に取った。
「ダンジョンに行く際は、いつも使っているものも持ってこい。それと……小娘?」
「あ、お前!」
鞘から抜こうとしているのが目に入って、私とラウルは慌てて小娘を止めた。
何をやろうとしているんだ、小娘! 最近はちゃんと勉強しているのではないのか!? これは普通の武器ではないのだぞ。
「「バカ者!!」」
「え。あの、何か、問題が……?」
「対魔武器は所有者の魔力に応じた様々な力を持つ。初めて持つ武器の場合はどんな効果が出るかわからねぇ」
「だから、外で試すのだ」
極端な話、鞘から出た瞬間、異常に大きな刀になる可能性だってある。家具が壊れたりするだけならばまぁマシだが、小娘自身やラウルが大きなケガでもすると洒落にならない。
「……当日まで没収する」
「そ、そんなぁ……」
「小娘が中身を見てみたいという欲求に抗える気がしない」
しょんぼりする小娘だが、これは割と最近やらせたテキストに載っていたはずだ。もう一度復習させなければならんな。基礎知識があるのとないのとでは、後の扱いに差が出る。これでも、マシにはなったのだがなぁ。
「フェリクス、俺も試し切りん時は一緒にダンジョンに行きます」
「うむ……頼む」
まぁ、小娘はこんなでも実力はあるからな。大したことは起きないと思うが見張る目は多い方がいい。
「はぁ……、そんな顔をするな。何もやらぬ、と言っているわけではなかろう?」
「そうですけど……」
「とりあえず、ヘスティアと出かけた時に買ってきた土産もある。夕食が終わってから食べるといい」
世話のかかる小娘である。
最近は友人もできたらしく、少しは学生らしく過ごしているようだ。成績が上がってきたことも加えて預かった娘の扱いとしては及第点だろう。いや、もう少し色々詰め込む必要はあるが。
「土産……食いモンですか?」
「ああ。いつもの店のケーキだ」
ラウルの表情がパッと明るくなる。そういえば、ラウルも好きだったな。ケーキと聞いたからか、小娘も一気にソワソワし始めた。どうしてだろう。対魔武器の時よりテンションが上がっているように見える。なんというか、こういうところが憎めないところではあるな。
「エマが作り終えるまで、とりあえず今日出た課題でもしていろ。なければ自習していろ」
「了解です」
「はい!」
ウキウキしながら部屋を出て行く子どもたちを見ながら、私は溜息を吐いた。
「にゃあーん? (何笑ってるの?)」
「いや、子どもというものは愛いものだ、と思っただけだ」
膝の上に乗ってきたアルテにそう返す。そのまま膝の上で丸くなった彼女を撫でる。撫でるのをやめようとしたら噛まれた。
もしかして、これ、アルテの許可が出るまで続けなければならんやつか?
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
猫ちゃんは気まぐれ。
気分が変わったらがぶっといって後ろ足で蹴るまでしてから離れる。
吸血鬼もまた、猫の下僕なのであった。




