お出かけは二人で
約束通りにヘスティアを迎えに行ったら、どんな高級店に行くのかと言いたくなるドレスを着ていたので、さすがに着替えさせた。
行き先はヴェルグの店だと言っているのに、なぜそんな恰好に行き着いたのだ……! とはいえ、本当に二人での行動であるということには満足しているのか、満足そうではある。アルテは「お昼寝するから今日は行きたくなぁい」という意味のやる気がない「にゃ~お」という鳴き声で同行しない。まぁ、私も今日は留守を頼むつもりであったからよいのだが。
「日傘を差したお姿も素敵です」
「そういうことを言うのはお前くらいだぞ」
思わず呆れたような声音になる。というか、そういうことを言う者は本当に少ないと思うが。まぁ、やたらとべったりしてくるからヘスティアが日傘を持つ必要がないのはよい……ことか? 嫌がる者もいそうだが。少なくとも、帽子とサングラスで顔も見えない相手とか嫌じゃないか?
私としてはそう考えるが、ヘスティアは「フェリクス様と一緒ならば、私はなんでもいいのです」と私を見上げて微笑む。……物好きめ。
彼女を連れて歩いていると、やたらと目立つ。ヘスティアは言動こそちょっとアレだが、美しい女だからな。仕方がない。だが、そのあと私を見て舌打ちするのをやめた方がいい。今日はヘスティアが私を見ていて周囲に微塵も興味がないから目溢しされているが、普段ならば焼死体の山ができる可能性がある。
「あら、どうかしましたか?」
「なんでもない。お前の美しさを再認識しただけだ」
魔女として目覚める前から、美しさに目をつけていた人間がいるほどだったのだからな。そいつらはもう死んでいるが。まぁ、ヘスティアの美しさは外見だけのものではないのだが。だが、うん。それ以上に問題点もあるから、なんともな。
「どうした。具合でも悪くなったか? 少し休むなら、涼しい場所を探すが」
いきなり足を止めた彼女にそう問うと、「私も、なんでもありません」と返す。真っ赤な顔でそれはあまり信用できるものではないのだが。
「だが」
「行きましょう、フェリクス様」
ヘスティアをじっと見つめるが、機嫌が良さそうだ。もしかすると、これは照れているだけなのかもしれない。
「……体調がおかしければ、すぐに言うのだぞ。我々には長い時間がある。機会はこれだけではないのだから」
「はい」
素直に頷くヘスティアの返事を確認して、再び歩き出す。
到着すると、ヴェルグが武器を用意して待っていた。ヘスティアを連れて行くことも連絡しておいたからか、驚くことはない。
「フェリクスから聞いてはいたが、珍しい組み合わせだな」
「ええ、ようやく二人でお出かけしていただけるようになったの」
ヴェルグの視線が私に向く。なぜか微笑ましいものを見る目だ。く、そういった目を向けられる年ではないぞ……!
「それよか、ほれ。千明ちゃんの対魔武器じゃ。それと、こっちが預かっていたもんだ」
渡されたのは小娘にやる刀と、私の大鎌だ。
大鎌は私の手に渡ると赤い光となって散り、手首にそれが集まるとブレスレットに変わる。
「まぁ……メインの方を預けていたのですか?」
「ああ。メンテナンス時期だったからな」
やはり、これがあると少し安心感があるな。使う機会など、ないに越したことはないが。
「しかし、嬢ちゃんの武器は自分で取りに来させてもよかったんじゃねぇか?」
「あの小娘、いらないことをやらかす気しかせん。最初は私の目の届く範囲内でしか触らせたくない」
さすがにそこまでポンコツではないと思うのだが。思いはするのだが。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
フェリクスは「いくら小娘でもそこまでポンコツではないだろう」と「いや、やはりあの小娘はそこまでかもしれない」を反復横跳びしているよ。




