デート?の約束
私が子どもたちが家に居ない状態だと、思いのほか怠惰に暮らしていると知ったらしいヘスティアが心配して押しかけてくるようになった。私は家で静かにゲームか読書をしているだけの引退老吸血鬼なだけだというのに……。
「物事には限度があります。身体に悪いですよ」
「まだこの暑さだからな。家に居る方が健康的だというもの」
「またそんなことを言って!」
私は人間や魔女たちとは身体の作りが違うのだ。これは言い訳ではない。
「なぜ家事用のオートマタもいるのにカップラーメンを食べたりしているのですか」
「美味いぞ。いや、本当に。企業の努力とはバカにできんな……」
各企業、麺の太さ、出汁の種類、ソースの味……様々な工夫があって飽きない。まぁ、さすがにそこまで頻繁には食べないが。一人だとなんかこう……食べたい気分の物が変わる。ラウルがいると気分やノリではなく栄養を考えもするが、一人だとそういうのは全部面倒だからな。
「そうだ。私が毎日ここでフェリクス様のご飯を作るというのはどうでしょう? きゃ♡ 言っちゃった♡」
「料理というのは思いのほか面白いが、面倒な時は死ぬほど面倒だろう? 私もそれなりの年齢のジジイだ。身の周りのことはできるので気にしなくてもいいぞ」
優しいのは利点だがなぁ。そう思いながら顔を上げると、少しショックを受けている。
……もしかして、これは私と距離を縮めるための提案だったか? そうかもしれん。
「しかし、ふむ……。そこまで言うのなら、たまには一緒に昼食を取ってもいいかもしれんな」
「本当ですか!? ふふ、うれしい」
笑顔が愛らしい。が。
おい、ジーク。扉から顔を出して親指を上げるのをやめろ。ちょっと腹が立つ。
「では、さっそく明日食材を持ってきますね」
「いや、明日はヴェルグのところへ行く。だから、一緒に昼食を取るならば外食だな……。馴染みの店での予約しておこうか」
「こ、これは……」
ヘスティアはいきなり立ち上がると、顔を真っ赤にして震え出した。一体何があったのかと首を傾げると、「デート! ですね!?」と叫んだ。いや、別にそんな意識はなかったが、言われてみれば逢引と言えるか?
「まぁ、なんでもよかろう。嫌ならばいいぞ」
私一人なら、適当に済ませればいいしな。一食くらい抜いても死なんし。
「いいえ! ぜひ、お供させてください! あ……っ、明日用に気合を入れて服を選ばないと♡ 明日を楽しみにしておりますね」
「そんなに楽しいところではないと思うが」
行くのは鍛冶屋だぞ。ヴェルグとはお前も知り合いだろうに、なぜこんなに浮かれているんだ。
小娘の新しい武器を取りに行かないといけないし、私の武器のメンテナンスも終わったらしいからな。試し切りに裏のダンジョンに行くのもいいかもしれない。
「ふっふーん、デート♡ デート♡」
なんだか、とても、浮かれているな。
もしかして、良い店を選ぶべきか? ……いや、そうすると、「プロポーズ!?」とか言い出すな。
そして、ジーク。スケッチブックに大きく「ナイスです!」と書いてあるそれは何だ。
その謎に上げた親指はなんだ!?
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
ジーク「姉が喜んでいる姿はとても良いものです」
し、シスコン……‼
なお、ヘスティアはフェリクスが本当にいい店を選んだら本当にプロポーズかと思ってたぶん気絶する。




