子どもたちの試験結果
子どもたちが日中、学園に行くようになって、私にも時間ができて何よりである。
やはりな、私にも一人の時間と言うのは必要だと思うのだ。いや、膝の上にアルテはいるが。
とはいえ、私は夜行性だからな。子どもたちを見送った後は寝るが。ふふ、こういった怠惰な生活こそが私の求めていた生活である。
寝直して、夕方に目を覚ます。
心なしか家事用オートマタのエマ(マデリーンが名付けた)は不服そうだ。しかし、静かにしているのは私が人という種族でないからだろう。
「おそらくラウルたちはまだ帰って来ぬだろうし……」
それまでゲームをしよう。
そうやってゆっくりしていると、気づけばラウルが帰ってきていた。部屋を覗いて「ただいま帰りました」と言う顔は呆れているように見える。
「おかえり。では、私も下に行くか」
「飯はまだですよ」
「別に食事の時だけ一階にいるわけではないのだが」
アルテを抱き上げて、立ち上がるとバタバタという大きな足音とエマの「止まりなさい!」という声が聞こえる。
「ドラクルさん、後輩! 見て……補習回避」
「あの悲惨な状況からよくぞここまで……」
「いやまぁ、俺的にはまだ悲惨な成績に見えますけど」
今は赤点回避だけでも十分な戦果だ。むしろ、あの状況から短期間で赤点を回避するところまでいけたならば上出来だろう。ここから点数を上げて行けばいいのだ。
「先生に泣かれながら褒められた」
「「だろうな」」
あの学園の教師も、小娘がなまじ戦闘技術があることから「もったいない」と思っていたのだろう。もう少し成績が良ければ軍に入るでも、高位ハンターを目指すでも、いろんな進路を切り開くことができる。
ラウルも同じことを考えていたのか、答えが被った。
こういうところがなんというか……血のつながりよりも家族を感じるな。ラウルが幼い時は様子を見に来てくれていた星見の魔女に「寝相がよく似ていますこと!」と呆れたように言われた覚えがある。
「この調子で頑張れって」
おそらく、学問で褒められたことがなかったのだろう。とても嬉しそうだ。
何か期待するかのような瞳に、少し笑ってしまう。
「では、補講回避記念に今度ケーキでも焼くか」
「俺、チーズケーキがいいです」
「む、ズルいぞ後輩! ドラクルさん、ショートケーキ! イチゴがいっぱいのやつ!!」
便乗するラウルも試験結果を差し出しながら要求してくるのを見て、「相変わらず頑張っているな」と口に出す。文句の出ない成績である。
「両方作ればいいだろう。……余らんだろうしな」
ラウルが我々の倍以上の量を余裕でたいらげるのは想像に難くない。そう。私が作るのが大変なだけだ。オートマタに作ってもらってもいいのだが、まぁ褒美だしな。私が手ずから用意してやろう。
「そういえば、手紙が来てましたよ」
「何……? げ、火炙り……」
なぜフランスの方にいるはずの火炙りの魔女がわざわざ手紙をよこしてくるんだ!? 厄介ごとではなかろうな。
昨今、火刑が実施されることなどそうある話ではないから、欲求不満だという話なら私はもう聞くつもりはないぞ。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
一話抜かしてた…
〇ヘスティア
フェリクスからは『火炙りの魔女』、世間一般には『業火の魔女』と呼ばれる世界有数の魔女。
淡い水色の髪に黄色い瞳。たれ目+泣き黒子のたわわな美女。
かつて、魔女の力に目覚める前はたくさんいたきょうだいと一緒に暮らしていた。しかし、ある時、彼女を狙った好色な神官に目をつけられたことで、平穏な生活は崩れ去る。
神官の誘いを断った彼女は逆上した彼に『魔女』として訴えられ、きょうだいたちは姉を守ろうと命を落とした。末の弟の命が奪われそうになったとき、彼女は魔女として目覚めることになる。
そして、その夜。彼女は月光のような金色の髪と赤い瞳の吸血鬼と出会う。
フェリクスの助けによって吸血種になったとはいえ弟の命は救われ、復讐を果たすことができた。
そんな運命の夜から、彼女はたったひとりに夢中なのだ。
当のフェリクスは「ちょっと怖い」と述べている。
でも、みんな、自分のことが大好きなおっとり美人で、えっっっ……なぼでーのおねえさんは大好きなはずですよね?




