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引きこもり吸血鬼の怠惰なる引退生活  作者: 雪菊


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課題終了!


 なんとか夏季休暇の課題が終わったことを確認してホッと一息吐く。まだ詰めるべきところは多いが、これだけ詰め込めば……まぁ、最低限の評価は得られるだろう。



「では、これからはとにかく基本からやるぞ。鍛錬の時間も取らなければならないのと、最低限の家事は覚えた方がいいからその時間も必要だな……」



 学生ゆえ、ある程度自由の利く時間もほしいだろう。さすがに課題が真っ白なのはいただけなかったため、拘束時間が長くなったが、とりあえず課題は終わったわけだし、少しばかり友人と遊びに行くのもよいだろう。小遣いは清明のやつからもらった報酬から高校生が必要であろう金額を渡せばいい。

 だから小娘の意思もある程度反映していこうと思った。



「とも……だち……?」

「もういい……」



 この様子では、思想を染めるためかもしれんが、友人と遊んだ経験もなさそうだ。というか、友人を作ることも許されていないのではないか? いや、そこまでするの、普通に怖いが。



「まぁ、あと数日で学園も始まるし、少し視野を広めていくのもいいだろう」



 意外と今の小娘ならば、すぐに友人ができるかもしれんな。というか、もはやそれを祈る気持ちがある。

 それにしても、頑張った。

 小娘もだが、私も頑張った。小娘のモチベーションをある程度保ちながら課題をやらせ、説明を行うのは割と大変だった。

 本当に、互いに血がにじむような努力だった。


 ここまできたらあとはオートマタに任せてもいいだろう。

 そう判断して、小娘を戻らせて一息入れる。

 いやぁ……本当に、頑張ったな私。これは、私だって遊んでもいい。しばらく引きこもってゲームとかしていてもせめられないはずだ。ソシャゲのイベントもあるし、予定通りポチモンをやってもいい。


 優雅に茶でもしばこうかと思っていると、ドタバタと大きな足音がする。

 扉がバンッと音を立てて開くと、小娘が泣きそうな顔で立っていた。



「ドラクルさん、どうしよう! 私の刀、燕丸! 折られてた!! 新学期に間に合う!?」

「予備とかは……」

「もらってない!」



 刀、と聞いて思い出す。

 ……確かに、小娘の刀はラウルが折っていたな。



「だが、あれは対魔武器ではないだろう」

「? 私の刀はあれだけ」



 もしかして、だが。



「まさか、そんなわけが……」



 魔物用の武器を与えていない!? 国立対魔防衛学園に入れておきながら!?

 魔物用の武器には特殊な金属や術式、製造方法によって魔物の傷を治りにくくしたり、能力を削ぐ機能等が備わっている。せっかく入れるからには早く死んでもらっては困るからな。大抵はそういった武器を持たせるものだが。

 あの刀はよいものであったが、そういった魔物用の武器ではなかった。



「明日、修理と新しい武器を作成しにいくぞ」

「新しい武器? いるの? 燕丸だけではダメ?」

「今後、魔物を倒す職に就こうと考えるなら持っておけ」



 素材は……確か倉庫にあれがあったな。

 小娘は妙に嬉しそうだが、それでいいのか? いや、新しい武器と修理のことだけ考えているならそれはそれでよいか。暗いことなど考えないに越したことはない。

 しかし、あの武器だけで今までの実習等を乗り越えてきたのならば、ジジイの言う通りその腕は本物……というか天才と言える人間かもしれん。

 


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


〇燕丸

 ラウルに折られた千明の愛刀。素晴らしい職人によって誂えられた最高の刀だが、人を斬るのに向いていても、魔物を斬るには向いていない武器。

 父によって与えられた唯一の武器。春清は「対魔武器は家を任せている妻が手配するだろう」と思い込んでおり、結果、彼女がそれを手にすることはなかった。

 とはいえ、優れた剣の使い手である千明が使うにあたって、その切れ味も性能も、不足なく、今日に至るまで彼女を生かし続けた良い武器であることは確かである。

 ちなみに、『燕丸』の名前は千明がつけた。

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