Epilogue
前話と同時公開しています。
本日、箱庭内部の知的生命体、アンスローとの接触に成功。こちらが方法を模索しているうちに、向こうから来てくれた。
彼らがあの紫の濃霧を突破できることは驚きだ。ノゾムという前例はあれど、それは圧倒的少数派だ。それまで前例がなかった。だから、こうも頻繁に突破する人物が現れるというのは、何か意味があるのかもしれない。
とにかく、この接触により、今後の彼らの扱いについて伝達することができた。ただ、ノアは少しばかり、抜けているような印象があり、内容が正確に伝わっているかは不安が残る。しかし、キョウサクのやつが捕まったと知れば、ドニスの方からアクションがあるかもしれない。
とりあえず、やるべきことが一つ減った。あるいは、その目処がついた。今後のため、やるべきことをまとめておこう。
第一に、紫色の鉱石の発掘場所を突き止めなくてはならない。キョウサクは人目を避けるような生活をしていたのだから、行動範囲だってそれほど大きくはならないはずだ。第二のKが現れる前に、一刻も早く見つけなくてはならない。
手がかりは、「近くの山の獣道の先」だ。これはヤツの記録に書かれていた。ただ、その獣道はヤツ自身が隠蔽したとも書かれている。この辺りで山なんて一つしかないものの、それをノーヒントで歩き回らねばならぬとは。ヤツの裁判が終わって、刑務所にぶち込まれたあとの面会を待った方が早い気がしてならない。
第二に、タンナのある方の箱庭への接触である。こちらも、キョウサクの悪事が施されているので、その謝罪をしなければならないし、今後のことについて話さなくてはならない。ただ、こちらには国が3つもある。ノアのいる箱庭の3倍だ。ただ、ノアはそれぞれの国に対して影響力のある人物と親しいらしい。もしかすると、この件に関しては特に私は何もしなくても済むかもしれない。
第三に、アンスロー達の箱庭の移設だ。キョウサクの作り出した生物は処分すべきだ。しかし、アンスローは人権を認めるべきほどにコミュニケーションが可能だ。そして、これはちょっとした下心ではあるが、我々人間と良好な関係を気づければ、魔法と科学技術の文化交流が望めるかもしれない。どんなに努めたところでいずれは彼らの存在がバレてしまうだろうから、せめてそんなふうな、良好な暴露で済ませてやれたらいいだろう。
移設場所は、例の鉱石の発掘地点。アンスローはその鉱石から発せられるエネルギーを利用して生きる種だ。だから、箱庭そこへ運び込んでしまえば彼らは今までと変わらず生活ができるだろう。もっとも、擬似太陽の働きを実物へと移さなければならないのは少々不便を被らせてしまうが、まあ、それは我慢してもらうほかあるまい。そのあとは、発掘地点を放射性物質がどうたらとか、半時間性物質がどうたらとか、それっぽい理由をつけて封鎖して仕舞えばいいだろう。上のクソッタレどもは私にこの面倒ごとを押し付けてきやがったが、それくらいの協力はしてくれるだろう。
第四に、魔法器官から作成された、奇妙な物体。あれはどうすればいいのか困る。倫理観を考慮しなければくまなく調べたいところだが、あれがどう作られたか知っている以上、そんなことはできない。アンスロー達に返せばいいかと思えば、彼らは死んだら死体は残らずに、プロタンティスと呼ばれる生物が骨も残さず食ってしまうそうだ。つまり、埋葬という文化がない。死体処理という概念がない。だからといって、こちらで勝手に処分してしまってよいのだろうか。箱庭の移設までには、何かしらの決断を下さねばなるまい。
ここまででもう嫌気がさしてくるが、あと一つ、最後に最も面倒なものが残っている。それは、ユウカの探索である。
ユウカとは、アフーラで誕生したアンスローである。ただし、箱庭内部の時間で、現在の数千年前にいた人物だ。記録はほとんど処分されていたので、正確な期間は不明。どうせなら、完全に抹消しておいて欲しいものだ。
閑話休題。ユウカは、キョウサクが最初に接触したアンスローだ。初めは孤独なもの同士、良好な関係を築くことができていたものの、言い争いをきっかけに破綻。そのまま別れ、行方不明になってしまった。
体格差を考えれば、ユウカは逃げられるはずはなかった。キョウサクはユウカがいないことを嘆いている様子を、後の記録でしばしば見ることができたのだから、これは不自然だ。そして、この原因はユウカを発見、確保するために理解するべきことでもある。
ユウカはアンスローなのだから、魔法が使える。その魔法は、人格を作り出すことだ。AIがそこらを歩く現在ではつい感覚が麻痺してしまうが、これはとんでもないことだ。膨大な時間の学習をすっ飛ばして、例の鉱石のエネルギーだけでポンと新たな人格を作り出してしまうのだ。
ユウカはキョウサクの脳内に人格を作り出して、処理落ちさせた。それが、残った記録を読み取ったことによる予想だ。これも、本人に話が聞けない現状では、確認しようがない。もしかすると、人格そのものの起動という意味で、意識を操ることも可能かもしれない。実に厄介だ。
唯一の救いは、鉱石は限られた場所でしか見つかっていないということ。だから、発掘場所を見つけた時、案外あっさりとそこで会えるかもしれない。ただ、魔法を使えないアンスローは人間にとって貧弱だから、もう死んでいる可能性もある。その場合、死体は残らないから、確認しようがない。
ただ、それはまだマシな状態だ。もし、ユウカが人格を作る能力を十分に発達させていたらどうなるか。と、これは長くなりそうなので、捕獲作戦を練るときにでも考えよう。
まとめると、やるべきことは5つ。鉱石の発掘場所特定、もう一つの箱庭のアンスローへの接触。箱庭の移設。肉の木の処分方法。そして、ユウカだ。まあ、こんな奇妙なことをすることもないだろうし、楽しもう。
なあ、楽しいか?未来の私。あるいは、その後継者だったりするのかな?
オクロク
前話でも言いましたが、感想や評価を貰えると嬉しいです。
ところで、話は変わりますが、この物語であなたが好きになれるようなキャラクターは、いたでしょうか。それが達成できたのであれば、より一層嬉しいです。
こんなところまで読み続けてくださり、ありがとうございます。振り返れば、この小説は21万字もあったそうです。こんな未熟者のお話をここまで読んでくださり、感謝いたします。
特に、序盤のところを読み返してみれば、かなり読みづらい文章でありました。本当に申し訳ありません。
以上です。ご縁があれば、またお会いしましょう。




