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Prologue
今日もまた、病室の前にやってきた。
鉄格子の向こうの窓から、春の麗らかな日が差し込んでくる。
その清らかさを恐れるように、影の中でうずくまる存在に目を向ける。
それはかつての親友であった。
また針刺しの跡が増えていて、思わず目を逸らしたくなる。
名前を呼びかけても、かすかに小鳥のさえずりが聞こえてくるだけだった。
かつてこの国を破滅に追い込んだあの出来事は、もう起こることはない。
人々は平和を謳歌する喜びが、また遠くから聞こえてきた。
国を救うことができても、鉄格子の向こうへ幸せを届けることはできないでいる。
ヒメノをはじめとして、頼もしい仲間も根気強く協力してくれているが、状況は変わらない。
冷たい鉄に隔たれてはいるが、それでも今は可能な限りそばにいてやりたい。
だけれど、時間は残酷だ。面会の終了を告げられてしまった。
軽く別れの挨拶を述べて、病室を後にする。
どうしてこうなってしまったのだろう。