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皇軍、青森防衛~神軍到来4~

 艦長と一通り挨拶と雑談をした進は、自室に戻った。そこで初めて記憶媒体を抜き忘れていたことに気付いた。誰かが触れた形跡はなかったが、進の不安は拭えなかった。

 警笛が鳴り、船の出港を告げた。


 青森弘前市防衛線

 国道7号線沿いに長く薄く造られた防衛線にまだ年端もいかない少年少女兵が、数少ない正規兵に率いられ《神軍》相手に苦戦を強いられていた。7号線の両側は弘前市と山がある為被害はあまりでていないが、中央の部隊は凄惨であった。前方に津軽平野、後方を青森平野に挟まれ隠れる場所が皆無であった。塹壕をや蛸壺を掘り、巧みに偽装して四方から敵をかく乱しながら戦うしかなかった。

 ここで《神軍》について現在までで判明していることを説明しておきたい。

 1.神軍は悪軍と違い、飛行タイプが多く確認されている。

 2.また、固体固体の大きさが非常に大きく遠めに見て取れる。

 3.しかし、個体数は決して多くない。

 4.ただ、物理防御をなすバリアーのようなものを備えている。

 5.敵の多くは球体を発生させる。それを喰らった兵士は消滅する。

 6.また、精神攻撃が見られるが詳細は不明。

 7.姿形は人間によく似ており、神話に登場する神々を連想させる。

 8.隊長クラスは金色、一般クラスが銀色となっている。

 9.戦術においては金色を中心に鶴翼陣形をとる事が多い。


 これが主に世界で認識されている9条項であった。

 そのため、兵士たちは正面からの殴り合いはせず地道に隠れ死角からの攻撃がもっぱらである。また、元々は東南アジアの密林地帯での戦闘を想定していた軍を過去に持つだけに擬装はこの時代でもトップクラスであった。重慶防衛線などでは大いに活躍していた。また、本土決戦においては山が多く起伏が激しいのを利用し、山をくり抜いて造られた地下基地や稜線陣地が数多く存在し、日本各地で長期的なゲリラ戦が可能とされている。この青山も北の仮想敵大国の元ソ連を想定した大規模な陣地が造られている。しかし、元々平地の少ない日本において野戦の戦車決戦などは想定されておらず平野などは全て無視されていた。平野を敵に与え、敵をそこに集中させ四方に連なる山にある陣地からの攻撃で漸撃するのが主旨であった。そのため、開けた場所での戦闘になれていない日本だけに苦戦は免れない。ただ、国民性の我慢強さがここに現れていた。

 

 『こちら、弘前最終防衛線司令部である。本日の午後3時をもって市民の疎開完了とする。よって午後3時より自衛軍の主力が到達するまで我が部隊はゲリラ戦に移行する。各車両はコンクリート製の建物に隠蔽。自走砲並びに長距離多弾頭噴進弾部隊は後方に退去ののち、展開、こちらの合図をもって弘前市に対しての絨緞砲撃を開始する。各隊長はプランを確認の後、午後3時までに所定の配置につくように。なお、主力の到達は明日の明朝とされている。以上、弘前最終防衛線司令代理』

 先をいき過ぎたが、この時点で青森防衛戦は既に二日目に突入している。すでに全戦線は膠着状態にあった。本来なら既にこの防衛線は突破されているのだが、それは人間相手の戦争である。さきの記述にはなかたっが、《神軍》には敵をある程度のレベルで感知できる固体がいる。これは生物が放つ生命電気信号を固体で感知するのである。鮫のよう物だとおもっていただければ幸いである。しかし、位置を判明するまでには至らないため、後は他の個体が見つけ出し殲滅するまで続く。そのため、空を飛ぶ割には進軍速度は極端に遅い。


 防衛戦司令部からの伝達を聞いていた学兵旅団第二大隊第一中隊長はすぐさま陸軍から派遣されている陸曹を呼んだ。

 「佐藤陸曹長、司令部からプランに従い、所定の位置に展開とのことだ。20分以内に準備を終え、所定の位置に展開する。携行型のミサイルは残っているか?」

 「先ほど、最後の補給がありかなりの数があります。迫撃砲を改良したものもありますので」

 「では重火器のみを携行していこう。負傷兵は装甲車並びにトラックと共にここ置いていきます。一個分隊を警護に」

 「了解」

 「陸曹長。これから我々はハリネズミだ。一本のハリを触れば何本ものハリに刺される。今からは他隊との連携が大切です。学兵には忍耐がないのでローテーションを忘れずに。こんな状況ですから完全に回復する事はできませんが」

 「隊長殿はよく考えてらっしゃる」

 「元は教育者でね。何を間違ってか徴集されてね。今じゃ学兵を率いている」

 「因果なものですね」

 陸曹長はそういい、去っていった。

 残された元教育者の佐渡大尉は最近吸い始めたタバコを咥え、火をつけた。慣れない煙にむせた。涙ぐみながらも吸い続けた。


 司令部から通達を受けた各部隊は中隊規模ごとに所定のポイントに移動した。移動にはもっぱら地下水路が利用された。中には下水道を使う部隊もいた。地上を歩けない為、地下に潜り多少時間が掛かってもこれで移動することが厳命されていた。これを無視して地上を行軍した部隊は殆どが壊滅した。

 司令部は市役所の地下に造られていた防空壕に司令部を置いていた。司令部には最新型のノートパソコンが大量のケーブルで繋がれている。この防空壕は三段階方式で一番下に司令部、真ん中は医療施設などで一番上は弾薬や日常生活品が溢れている。この青森防衛の中核を成している第9師団。しかし、主力の部隊は熊本戦線に駐屯していてここは留守部隊が少数いただけだ。司令代理を務めている渡辺准将は壁に据え付けられたスクリーンに目を移していた。そこには青森の地図に部隊の詳細な情報が一寸ごとに映し出されていた。

 「部隊の展開は予定時間内には終ります。砲撃隊による攻撃は定時通りに」

 「ごくろう」

 報告をした部下を労い准将はスクリーンの一点を見つめた。そこには




 

  

 


 

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