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2話 予期せぬ討伐

 巨大なイノシシに襲われ、怪我をした男を見つけたロジェ。


 あのイノシシは……魔物ボアーボだな……

 5ヤード近くある巨大なイノシシは、肩から血を流し、足を引きずる男に標準を合わせて体当たりしようと構えている。


 ……マズイな……


 ロジェは担いでいた魚を下ろすと、腰の剣を抜き構えた。


 剣に力を込めるとボオッと剣先が光り出す。


 ボアーボが怪我の男目掛けて突進していく最中、ロジェが光剣を振り下ろすと、剣先より放たれた光の斬撃がボーアボに向かって飛んでいく。


「「「ドカッ」」」


 斬撃が横腹に命中すると、激しい音を上げ、ボアーボの巨大な体は大きく横に吹っ飛んでいった。


 よし!! 成功した。

 真空の斬撃……斬撃波と名付けよう……

「おっと、こんな事考えてる場合じゃなかった」


 ロジェは急いで怪我人の前に飛び出す。

「あんた、大丈夫か?」


「ああ、すまない……助かったよ……」

「まだ、礼は早いよ」


 ロジェが吹っ飛んだボアーボを見ると、再度突進しようと前のめりに攻撃姿勢を取っていた。


 ロジェはまた、剣に力を込めた。

 二人目掛けてドシドシと真直ぐに突っ込んでくる巨大なイノシシ。


 構えたロジェが剣を三度振ると、三つの斬撃が突進するボアーボに向け放たれた。


「「「ズドン」」」


 三つの斬撃がボアーボに命中すると、巨大な魔物が後方に吹き飛ぶ。


 ロジェは吹き飛ぶボアーボに近づき飛び乗ると、頭目掛けて剣を突き刺した。

 巨大な魔物の頭は、突き刺さる剣を振り払おうと、激しく頭を振って抵抗している。



 ロジェは突き刺さった剣にさらに力を込めると、そのまま斬撃を放った。

「これで、終わりだ!!」


 放たれた斬撃が、ドカンという音と共に、ボアーボの頭ごと下に突き抜ける。

 ピタリと動きを止めた巨大な魔物は力尽き、その場に倒れた。


 額の汗を拭い、剣を引き抜いたロジェが怪我人の前に歩み寄る。


 男の意識はしっかりしているようだったが、肩から血を流し、足は折れているのか別の方向を向いている。

「あんた……酷い怪我だな……大丈夫か? とにかく、この回復薬を飲んでくれ」


「……ありがとう……」


 男は回復薬を受け取ると飲み干した。


 男の体が光輝く、肩の傷が消えて行くように治っていった。


「これは……ハイポーション……ありがとう。助かりました」


「いや……だが、足の回復までは無理のようだな……」


 ロジェは別の方向を向いたままの足を見ていた。


「大丈夫です。ここまで回復すれば魔法が使えるますので……」


 男は両手を怪我している足に添える。

「ヒーリング」


 両手を添えた足が光に包まれると、あっという間、足は元通り回復していた。


 ロジェは驚きながら、改めて男を眺めていた。

 ……あの傷を簡単に癒すとは……大した魔法精度だ……


 男の服は傷ついていたが、青色の法衣に見えた。


「その法衣……あんたは光聖教会の人間か?」


「ええ、私は光聖教会のエルトン・ヴァルドネルと言う者です。危ない所をありがとうございました」


 緑色の髪をした細身の男は、一見女性にも見えなくもないスッキリとした顔立ちをしている。


「たまたま通り掛かったから良かったものの、光聖教会の人が一人、こんな危険なところで何をしているんだ?」

 ロジェは危険な状態だったエルトンに怒りを覚えた。


「いえ……薬草採取に来たのですが、迷ってしまいました」


 キツイ口調でエルトンに詰め寄るロジェ。

「……ここは魔大陸だ。魔物も多く出現するんだぞ」


 エルトンは、自分の行いが如何に危険なことであったと反省すると、申し訳なさそう話す。

「……実は、この町に移って来たばかりで、ここが危険な場所だと知らずに入り込んでしまったみたいです……」


「そうなのか……次からは護衛を付けるとか、ギルドに依頼するとか、ちゃんとするんだぞ!! ……とにかく、町まで戻ろう」


「分かりました。ありがとうございます……その……」


「ああ、俺は冒険者のロジェ。好きに呼んでくれ。あっ、戻る前にちょっと待っててくれ」


 ロジェはエルトンをその場に待たせると、先刻に依頼魚マースを置いた場所まで戻る。

 マースを担ぐと、次は倒れているボアーボに近づく。


 ボアーボの首付近にズドンと剣を根本まで突き刺すと、

「よいしょっと」

 5ヤード近くある巨体を持ち上げ、剣に差したまま肩に担いだ。


 エルトンは巨大魚と巨大イノシシを担ぐロジェを見て唖然としている。

「そんなに持って重く……大丈夫なんですか……」


「ああ、何とかな……」


 ……ボアーボは、肉も毛皮も爪も牙も高値で換金されるからな……勿体無くて置いていけないよ……この人には悪いが……ラッキーだ!!


 ロジェは笑いを堪えながら歩き始めた。


 湖に沿って歩き続けると、やっと街道の入口までたどり着いた。

 辺りはすっかりと暗くなっている。


 ロジェは乗ってきた馬車の荷台にボアーボとマースを乗せると疲れたのか、肩をグルグルと回している。


 明らかに荷台より大きな荷物だが、不思議と荷台が潰れるような事は無かった。


 エルトンが不思議そうにロジェに尋ねる。

「これは……どうして荷台に乗るのですか……?」


「ああ、これは荷台に魔法陣があって、魔力で荷物を軽くしながら固定するらしい。ギルドの借り物のだから、良く分からないが……」


 ロジェがエルトンに話しかける。

「えーっと……エルトンさん、だったか……」


「ええ、エルトンで良いですよ」


「じゃぁエルトン、あんた帰りはどうするつもりだ?」


 エルトンは困った顔で辺りを見渡した。

「……私も、ここまで馬に乗って来たのですが、馬には逃げられてしまったようです……」


「……そうか、だったら一緒に乗っていきな」


 幸運をくれた相手を無下に扱ったら罰が当たるからな……

 ロジェは親指を立てグーポーズをした。


「そう言ってもらえると助かります。ありがとうございます」

 エルトンはホッとした表情で頭を下げた。



 二人を乗せた馬車は町の西門に到着した。


「それではロジェ殿、私はここで降りますので」


 ロジェが馬車を止めると、エルトンはゆっくりと馬車から降りた。


「今後は気を付けるんだぞ」


 ロジェが手を差し出すと、エルトンがその手を握る。


「ええ、本当にありがとうございました」


 二人は握手を交わす。


 ロジェは握手を終えると軽く手をあげ、ギルドに向けて馬車を走らせた。



 冒険者ギルドの裏にある倉庫に馬車を乗りつけたロジェ。


 倉庫の壁には大小様々な包丁が置かれ、天井からは鉄のフックが掛けられている。


 倉庫にいる白髪交じりの髭を携えた、小柄でガッチリとしたスキンヘッドの男が驚きの表情でロジェをみている。

「ボアーボか、これ……また、デカいのを持ってきたなー」


 ロジェは笑顔で男に話しかけた。

「ルクドのおやっさん、いつも通り解体してくれ!!」


「よし、分かった。すぐに取り掛かってやるから、ギルドで待ってな」


 ルクドと呼ばれたスキンヘッドの男は、馬車の荷台から、倉庫内の巨大なテーブルにボアーボを移すと、巨大な包丁を手にした。


「よろしく頼んだよ」

 ロジェは手を振るとギルトに向かって歩き出した。


 ボアーボは高値だから、金貨20枚は固いな……もしかしたら30枚かも……しかもマースの依頼は銀貨8枚……ラッキーだ。

 ロジェは心から湧き上がる笑いを必死に堪えた。



 解体倉庫内


 ルクドがボアーボの解体を始めようと巨大な包丁で首を落とした。


 何かを確かめるように、注意深くジッとボアーボの肉を眺める。


「ん? ……これは……」


 急に顔をしかめるルクドの額から、一滴の汗がポタリと落ちた。

ヒーリング=光魔法 初級……傷を回復する

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