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ジャックの通り路  作者: 『ジャック』
1/2

1_同級生『B』

歪んだ友達の作り方。




まず初めに充分に与えられなかった人間を見つけます。





次にその人間に自分なりの愛を与え続けます。






ダメな事をしたらダメだと分からせる事がポイントです。





皆さんもやってみましょう。





「さみしーぜ。お前がいないとメシが不味くなる」



お前がいないとつまんない世の中にさせたんだから責任をとらないと。






そう、分からせてあげましょう。

とある学校の校舎の屋上で昼休憩中に1人で菓子パンを食べていた男子生徒Aは昨日人を殺した。





終電が過ぎた塾の帰り道。


Aは仕方がなくタクシーを拾おうと父親に渡されていた財布の中に充分なお金があることを確認して、近くのタクシー乗り場まで向かっていた時の事だ。



背後から「ミィー、ミィー、」と力無く鳴く声が聞こえてくる。


振り向くと白くか弱そうな子猫が男の元へ歩み寄ってきていた。右足が怪我をしているようでよたよたと歩いており、今にも倒れそうだった。



(可哀想に… 警戒心もないほど弱りきってしまっているのか)



Aはとりあえず常に持っている菓子パンをカバンの中から取り出し、千切ってあげてみた。

中に苺ジャムがどっさり入った男のお気に入りのパン。


ジャムは食べれないだろうからと避けて小さく千切ってあげると、子猫は全く逃げもせずに夢中でパンに齧りついた。



一欠片食べ終わると子猫は「ンナァー」と鳴いた。目を細めて笑っているように見える…


(満足したのだろうか)


男はもう一欠片、もう一欠片と大丈夫そうな所をあげて少し待っていろと頭を撫でると、子猫が食べ始めたところを確認して近くのコンビニへと向かった。



可愛い子…と思いながら男はコンビニでキャットフードと紙皿、それとレジ横に置いてあった常温の水を買い、その子猫の場所に急いで戻る。



しかし、



「ここにいやがったのかこのくそ猫」


「なんだこのパン屑… 誰があげたんだか」



子猫の飼い主らしき男女が2人、怯えて震えている子猫を乱雑に持ち上げて連れて行こうとしていた。


子猫は今持っている力を振り絞って必死に抵抗し、呆然と見つめている男に気づいたのか、「ミィー、ミィー」とか細い声でまた泣いた。



そしてその声に反応したAは…







「おい、ニュース見たか?」


「学校の近くであったんだろ? 怖えよなぁ」


「野次馬に行った奴ら曰く、2人とも原型留めてなかったらしいぜ」



今日のクラスメイト達の話題はどのグループも昨日の事件で持ちきりのようだ。


男子生徒Bは窓際の1番後ろの席でつまらなさそうに空を眺めて、ある人物を待っていた。


(うるせぇ蝿共だな…)


頼んでもいないのにうじゃうじゃと集まって来た蝿の会話を全て無視して深い溜め息を放つ。


(まあ、あいつを待っているのも俺の勝手だよな)


そう思いながらこそっとスマートフォンを手にして何かを文字打ちはじめた。





何度も打っては消し打っては消しを繰り返していると、教室の古びたスライド扉がガラガラ…とゆっくり開いて、誰かがこちらへ近づいて来た。


Bはもしかして…と期待を寄せながら足音の方へと向ける。



「あ〜『A』。どこ行ってたんだよぉ」



Bは見えていない蝿共を押しのけながらAの後ろに回って肩を組んだ。


嬉しさのあまりニヤケ顔を抑えられず、甘えた声を出しながら『A』の硬い頬を親指の先で引っ掻くように撫でる。




「…メシ食ってた」


AはBの手を振り解きながら、先ほどまでBが座っていた自分の席に腰を下ろし、引き出しの中から取り出した本を読み始めた。


Bは残念そうにしながら窓に寄りかかる。

そしてスリープモードになっていたスマートフォンのロックを解除して、本を覆い隠す様に画面を見せた。




「…!!」


一瞬動揺して目を見開いたAを確認してからBは満足したかのように画面を閉じる。


「さみしーぜ。お前がいねぇと飯が不味いんだから」


そう何かを含んだ様に言いながらBは何も言わないAの頬を掴んで自分の方へと向けさせて親指でまた撫でた。


AはされるがままBを見つめる。



「な、何見せたんだよ。俺にも…」


この異様な光景にドン引きしていた蝿達もどうにか和に入ろうとBに恐る恐るだが話しかける。


が、勿論Bにとっては邪魔な汚物でしかない。

害虫がテリトリーに入れば駆除されるのは当たり前だろう。


Aに向けていた屈託のない笑顔とは真逆のドスの効いた鋭い睨みで一蹴した。


声も出せないまま害虫たちはまとめて散り、一部始終見ていたクラスメイト達も顔を青ざめながら関わるまいと自分達の会話に戻っていく。



「『B』、痛てぇ」


「!」



Aの声で我に帰ったBはまたあの笑顔に戻って頬を撫で…


…いや、煩悩塗れの笑みの間違いだ。


醜い笑みでAを撫でたのだった__。


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