白い蝶
近々顔をださねばなるまい、と考えながら日当たりのよい畑がつらなる道を歩いていたときだ。
むこうから、白いちょうちょうがひらひらととんできた。
あたたかいこの季節には、めずらしくもなんともないその生き物が、ジョウカイには気にかかる。
――― どうにも、あれは・・・・
笠をもちあげて見送った先には、さきほど抜けてきたにぎやかな集落がある。
しばしののち、ジョウカイは踵をかえした。
街道筋のひらけた場所で、宿場としてにぎわうそこには宿屋の呼び込み女たちがそこかしこに立ち、客の袖をひいていた。
ジョウカイの身なりをみれば、手にした鉢に施しは入れてくるが、声はかけてこない。
どうやらこのあたりの坊主は、まじめにおつとめをしているらしい。
場所によってはまっさきに目をつけられて袖を引かれることがある。
そういう地の坊主たちは酒も女もすすんで『くう』、ジョウカイよりもひどい坊主であったりする。
ひらひらと二階建ての宿の軒をかすめてとぶちょうちょうは、ジョウカイにしか見えていない。
欄干に身をのりだす泊まり客の顔の前を通っても、誰も目で追わない。
ふいに、気配を感じたジョウカイがふりかえると、なんと、むこうの辻をわたる《白い蝶》を目にする。
――― まだ、ほかにいるか・・・
迷ったが、先に会ったちょうちょうをおいかける。