のぞきまわる
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ききおえたジョウカイは、杖の先でチョウイチの胸をつついた。
「さきほどの様子では、自分の魂がぬけるということを、百も承知のようだが」
玄関の板の間でふてくされたように胡坐をかく男は顔をそむけながらも、知っている、と口にした。
「昼間にためしてたら、訪ねてきた女に医者をよばれちまったことがあって、戻ったらおおごとになっちまったんだよ」
死人が、みごとに生き返ったと。
「それからは、用心するようになったよ。家には鍵かけて、女にも、勝手にたずねてくるなって言って」
「で?ふらふらととびあるいて、のぞきまわるのだな?」
「いいじゃねえか。すました顔のいいとこの奥さまが、実は旦那以外の男とできてるとか、どこだかの名士の娘が狐憑きだとか。いろんなもんみてきたよ」
「それで、相手をおどすのか?」
チョウイチは腕をくみ、とうぜんだ、とジョウカイをにらみあげた。
「このワザを金にかえるのは、それが一番はえエ。だいいち、みられたら困るもんがあるやつがいけねえんだ。 さっきの女だってそうだぜ。旦那の友達のうち、三人も関係してやがる。おどされてるにしちゃあ、コトをはじめたらすげえんだ。声はでけえし、あっちのほうも自分ですすんで動くし。金にもこまってねえから、言ったのより多めの金をもってくる」
なんだか威張ったように顎をあげて言うのに、坊主はため息を返した。
「―― のう、おぬしの魂の化身である、あの、《白いちょうちょう》を、喰うのがいるのを知っておるか?」
「・・・え?」




