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坊主と白い蝶のはなし  作者: ぽすしち


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13/22

不思議な夢


 ぼっつ、と落ちた提灯が燃え、女の姿はどこにもなかったが、小さなやしろの扉が閉まったように感じた。


 じりじりよってあければ、小さな祭殿に、お神酒みきと、なにやら大事そうに真ん中に置かれた古い箱があるだけだった。

 舌を打って、勢いよく燃える提灯によれば、家紋など持ち主の身元がわかりそうなものは、すでに燃え尽きていた。


「なんだよ、ありゃ。狐憑きかなにかか?」


 こんな時間にお参りをして、自分の『正体』うんぬんと言っていた。



 せめて残ったろうそくで賽銭箱を照らそうと提灯の中身をとりだそうとしたところ、近くできらりと光るものをみつけた。


 ――― 金か?


 拾い上げた金色の粒は、それなりの重さだった。が、どうにも形がしっかりと丸い。


 試しに歯をあててみると、がり、とかじりとれた。


「っにが!」


 それは子どものころにひどい熱をだし、むりやりのまされた『薬』をおもいおこさせた。


「これが・・・『秘薬』か?」


 本当は誰かに売りつけたほうが金になるだろうが、かじってしまったのでそれはできない。だいたい、何に効くというのだろうか。



「狐憑きの大事な『秘薬』か?」

 それはおもしそうだと、チョウイチは残りをのみこんだ。







 

 その夜、不思議な夢を見た。

 



 チョウイチはふわふわと夜空をとんでいた。

 月が雲にかくれても、ひどくはっきりと景色がみえた。


 しばらくあてもなくとんでから、ふいに、山のほうへ行ってみようと思った。


 途中から、目指す場所がはっきりとした。もう、何年も足をむけていない郷里だった。



 あっという間に懐かしい景色の山間につき、変わらない並びの家の間を漂った。


 その中のひときわぼろい家によれば、中からふわりと、線香のかおりが漂った。

 軒のすきまからはいり、梁にとまれば、汚い布団にねむる懐かしい顔をみた。



 ――― おやじか・・・


 数年ぶりに見た父親は、すっかり年寄になっていた。

 おまけに顔色がひどい。



『チョウイチのやつア、ほんっと親不孝もんだ』

 だれかの嘆く声。すすり泣き。


 よくみれば、おやじの布団のまわりにはみたことのある顔がならび、みんなが泣いている。


 ひときわ大きな泣き声をあげた女が、布団の男にすがった。

 


 ――― ああ、おふくろか・・・


 そこで、ぱちりと目がさめた。



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