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あさはかな
目をひらいたまま動かなくなった男の体を、ジョウカイはゆっくりと板間の上に置く。
首の横に指をそえ、脈をたしかめれば、なにもない。
「――― 死んだか」
色味をなくしてゆく肌をながめつぶやくと、ぐい、と男のあごをつかみあげ、口に指先を突っ込んだ。
「これで逃げようとは、あさはかな」
にっとわらい、抜いた指先には、白い蝶がもがくように挟まれている。
「先ほどの、辻を渡っていたのはおぬしであろう?家に戻るところだったか。―― ほお、いつもあのようにふらふらと? 散歩だと?嘘を申すな」
言うなり、再度指先を口に突っ込み、蝶を喉奥に押し込んだ。
とたんに男の顔に赤みがもどり、息もできないほどせき込みながらのたうちまわる。
ぜいぜいと息も整わない男の顔の前、ジョウカイは杖を立て、床を叩いた。
「のう、きかせてくれぬか? その、『魂』をとばす術、どうやって手にいれた?」
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