最愛
頬に触れてくる大きな手のひらに、ふいに何かを思い出しそうになる。
…してるよ、
と呟いた声に、そう、と薄く笑いながら応えて、渡久地はゆっくり目を閉じる。
重ねられた唇は、少しだけ冷たい。
違うな、と頭の隅でぼんやり思い、何と?、と自問しながら、相手の舌に自分の舌を絡ませる。
熱を帯びていく身体を、大きな手のひらがじわりと撫でる。
ひく、と背中を反らせると、ぐい、と引き寄せられ、更に口付けが深くなった。
何度も、
…してるよ、
…してるよ、東亜、
と、うわ言のように繰り返す声は、渡久地の耳に優しく響いて、脇腹の辺りをぞくりとさせる。
だのに、何を言われているのか、頭の中には入ってこない。
ただ、その優しい響きだけが、渡久地の身体を包んだ。
一晩だけの行きずりのつもりだったのに、気が付けばこうして何度も会っている。
何に惹かれているのかわからないが、何故かこの男の誘いを断れない。
乞われるままに身体を預け、柔らかい愛撫に身を委ねた。
何かを思い出しそうになる、その手のひらの指に、自分の指を絡ませて、もっと言って、と吐息混じりに囁くと、
愛してるよ、東亜。
と再び声が渡久地を包み、ぎゅっとその指を握り締めた。
違うな、とまた思って、だが今度は自問することを止め、これ以上何も考えなくて済むように、絡んだ指を外して、男の肩に腕を回した。