どこがかゆいのかと、ぼくの腕はどんなんだったか どっちも分かんないや
ぼくは本当は、300メートルの身体を持つ。
体というには薄すぎる膜というか、硬質の発光する巨大なタイルだ。数ブロックにわたって自律する滑走路だ。
そう、ぼくの身体は、道なんだ。
本来はね。
でも僕の魂はこの小さくて柔らかく、ちょっとだけ柔らかい骨にへばりつく肉、付随する液、何か、毛、軟膜、が、なんらかの不条理な秩序にしたがい構成された体にボスンと入れられてしまったのだ。
だからゆめにみる。ほんとうのすがたを。
キラキラした道だよ
今日も、寝ぼけると、体に厚みがあるのに違和感。腕がある。腕が…少ない、というより、ぼくのうでは本当は任意に伸びる道なのだから 足りない、足りない、ああ、足りない、なんで、ぼくの道には指はないしこんな、円筒みたいな形ではないのに、たすけて きもちわるいよ
こんなのは僕の体ではないたすけてと思うけどぼくのちいさい口からはうごぎゅ ご という音しか出ない あ
からだがかゆい それを掻こうとする腕の感覚に発狂しかけて、脳がはじけとびそう あ゛あ゛あ゛って叫びたい かゆいぼくの体かえして 光る道を かゆいよ 不快 脳がバケツに入れられてブクブクいってるみたいなんだよ なんで肉なんか 嫌だのに
人間の腕が勝手にぼくの背中をバリバリ掻いた。けど、どこもかゆくない。ぐわ。どこだ。どこだ。もうなんでもいい。人間の爪でいいから ああ あ
ごあー〜〜っ と、喉の使い方思い出して 小いちゃめにさけぶ ああ ちょっと目が覚めた
ぼくは人間だった 忘れかけた一晩
からだじゅうにみみずの腫れ どこがかゆいかすら分からなくなる時、あるよね