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3話目:意思崩壊三秒前

『どうしてそんなことをするのだろう』


 どんな理由でもいいが、そう思ったことは誰にもあるだろうか。

 無い人も中にはいるかもしれない。


 人間というのは不思議な生き物だ。今、自分が『なぜそうするのだろう』と思っていても、いずれは自らが同じ行動をしてしまう場合がある。どんな善いことでも、悪いことでも。


 自分は決してそんなことをしないと思っていても、だ。


 一人の若者がいた。第一印象はどこにでもいる好青年といった感じだ。


 そんな青年は今、片手にナイフを持っていた。彼の服とナイフには赤黒い血、そして目の前にはうつぶせに倒れた男。青年の瞳には光が宿っていなかった。


 一体何でこうなったのだろう。


 ――ほんの少し前の出来事。


 青年は走っていた。はぁ、はぁ、と息を切らせながらも死にものぐるいで。

 『走らなければ殺される』という思いを抱いて。

 彼の後ろには折り畳み式のナイフを持った男が追いかけていた。


 この二人の関係は、とても仲の良い親友だった。


 その親友の妹がある日、病で亡くなった。生まれつき身体が弱く、病をわずらっていた彼女。突然病状が悪化し、他界した。妹とも仲の良かった青年はたまたま居合わせていて、親友と共に深く悲しんだ。親友の方は悲しむだけでなく、数日間家にこもった。

 ようやく家から出て青年に会った際、たわいのない会話をしていた。そこで親友はおかしなことを言い出した。


「僕の妹に会ってくれないか?」


 もう妹はこの世界にはいない。それなのに彼はそんなことを言った。

「親友だもんな。あいつを一人に、寂しい思いをさせたくないって僕が願ってることくらいわかってるよな」


 そう言って、服のポケットからナイフを取り出した。

 そこでようやく青年は気がついた。


 ああ、親友は妹の死をきっかけに狂ってしまったのか。


「大丈夫だ、絶対に一人にはさせないからな。今日からこいつがお前と一緒にいてやるから」


 彼の焦点が合っていない。もう正気ではない。

 早く、早く逃げないと殺されてしまう。


 そして、逃走劇が始まった。


 走って走って、どれくらい走ったかもわからない。足が段々ふらついてきて力が入らなくなるほどになってきていた。普段なら余裕のはずの段差を上るのも正直キツい。その段差に足を踏み外し、こけた。

 ナイフを持って発狂してしまった友は少しずつ近寄ってくる。

 青年は力を振り絞って立ち上がると、友へと体当たりをした。

 友は少し驚いてバランスを崩す。その隙にナイフを奪った。

 慌てて友はナイフを取り返そうと手を伸ばすが、彼はかわして取られないようにした。


 青年はかわしながら考えていた。

 この親友をどうしよう、と。


 そうだ、解放してあげよう。この世界から。

 殺人にはならないはずだ。なぜなら彼のためだし、先に襲ってきたのはこいつだ。


 正 当 防 衛 だ。


 そうして、刺した。動かなくなるまで。


 しばらく倒れた彼を見つめていた。動かなくなった親友を。

 ふと、我に返ると様々な思いが交錯し始めた。


【どうしてこんなことをしてしまったのか】

【正当防衛じゃないか】

【でも刺したきっかけとなったあの考えは狂っていた】

【結局は自分も親友(とも)と同じだ】


 謝ってももう――


 遅い

        遅い

   遅い

           遅い

      遅い


「なぁ、俺もお前の妹のところへ行くよ。罪滅ぼしにはならないかもしれないけれどさ」


 彼は自らの心臓に刃を突き立てた。


 頬に後悔と悲しみなどの様々な念のこもった涙を流しながら。



 --3話目【意思崩壊三秒前】完--

あー、前の二つより長い気がする。

そして文法が変な気がする。


ホントにもう水夜はダメダメですね……(汗


最後に一言、親友が妹思いの枠を越えてシスコンになってしまいました(´Д`;)

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