表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

1話目:狂乱覚醒八秒前

 誰もが言う。


 『人は強い』と。


 本当に人は強いのだろうか。

 人間は弱い生き物なのではないのか。


 弱いからこそ誰かを笑い、見下し、上に立とうとする。

 最下位にいることに怯えている。


 誰か『自分は弱くない』とか『そんなことはない』と言う人もいるだろう。

 それでも結局は誰かを見下しているのだ。弱い(あかし)となる行動と知られていることは定かではないが。



 一人の少女がいた。中学校に通う、どこにでもいそうな優しき少女であった。

 彼女はある時、学校の先輩に陰口を言われていることに気がついた。廊下や行事、部活ですれ違うたびに、会うたびにひそひそと話しているのが聞こえるのだ。


 そこで、『弱いから私を下に見ようとしているのだ』と思うことによって、心が傷付かないようにしていた。


 もしも、その彼女の思いが消えてしまったら。

 唯一の心の支えが無くなってしまったら。


 おそらく彼女は狂ってしまうだろう。

 優しき少女の面影など残さないだろう。


 そんな彼女はそう遠くない未来で、実際に狂ってしまった。

 陰口が段々エスカレートし、彼女のあの思いだけでは耐えきることができなかったのだ。

 周りがとても怖かった。誰かの笑い声が自分を責めているように聞こえた。


『みんなみんな、消えてしまえばいい』


 彼女の心にはそんな思いが巡るようになった。

 そしてとうとう少女は狂った末に学校に火をつけてしまった。

 生徒が逃げまどう中、一人だけ逃げようともしなかった。

 恐怖に怯えた素振りも見せなかった。ただ、静かに笑っていた。


 教師の声が聞こえた。どうやら少女が一人だけ逃げ遅れたと思われているのだろう。必死にどこかにいないか探しているようだ。


 結局、教師とは長い廊下で目があった。こちらへ向かってくる。『よかった』と言いながら。


「どうして今みたいに助けてくれなかったの?」


 彼女の言葉に一瞬動きが鈍った。


「気付いていましたよね。こんなにも深い傷になってたのに。あなたも、友達も、みんな見て見ぬ振りをした――」


 少女と教師の間に天井の一部が崩れ落ちた。

 教師はそこでようやく我に返ったが、もう遅い。


 『あはは』と少女が笑っている。死の直前にいるというのに。



 狂ってしまった。



 あはははは……

                        あはははは……

              あはははは……

                               あはははは……

      あはははは……

                   あはははは……




 彼女の瞳から頬に雫を伝わらせながら笑っていた。

 最期の最期まで少女の笑い声が燃えさかる校舎内に響いていた。


 時に楽しげに。


 時に悲しげに。


 時に苦しげに。



 --1話目【狂乱覚醒八秒前】完--

すっごく短い……


大丈夫か……自分……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ