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失禁するまで…… 行き過ぎた教育的指導の末路

作者: クリア

【1】


 白衣姿の男は固い椅子に深く腰掛け、窓から差し込む夕日に目を細めては誰に格好つけるでもなく黄昏れていた。フラスコやビーカーなどの実験道具が棚の各所に収納される部屋は一般的な教室の半分くらいの広さしかなく、向かいの席ではケトルが沸騰してことことと音を立てた。


 窓の下では部活帰りの生徒がまばらに小さく見える。放課後の理科準備室周辺は人の気配がない。それが男がこの部屋を選んだ理由だった。職員室や一般教室のある校舎からは離れており、仮に叫んだとしてもお互いの声が聞こえることはない。彼が理科の教科担任だったことも、この部屋を使う正当性を際立たせた。


 ドリップコーヒーを二杯準備していたところ、教室のドアをノックする音がして男は顔を上げた。


「入りなさい」


 引き戸が音を立て、奥から一人の女子生徒が入ってきた。


「座って」


 男が促すままに、生徒は椅子に腰かける。


 女子生徒は名を澄野芙美香といった。髪色は染髪して明るく、スカートは折って短くしている。比較的整っていると思われる顔は丁寧な化粧でさらに際立ち、ピアスも開けている。カーディガンも派手な色をしていることが示す通り、芙美香は見た目を着飾るためなら校則を破ることになんら抵抗のない生徒だった。


「いい匂い。コーヒー淹れててくれたんだ。気が利くじゃん、先生。砂糖とミルク、ある?」


 教師に一対一で呼び出されたというのに、芙美香は恐縮するどころかむしろ偉そうにふんぞり返っていた。


 男はそのことで彼女を叱りつける気にはならなかった。彼女にはどこか不遜な態度さえ許してしまえる愛嬌があるのだ。実際、授業に対する姿勢は決して真面目とは言えないのに彼女を心から嫌う教師はいない。


 とりわけ勉強ができるタイプではなかったが、世渡りが上手いというか、要領のいい生徒なのだ。人を使うのが上手いし、取り入るのも得意。教師陣も頻繁に校則を破る彼女を叱りつけようとするのだが、いつもフレンドリーな雰囲気に呑まれうやむやにされてしまう。


 しかし、今日ばかりはそういうわけにもいかなかった。


「そんな態度だけど、お前、呼び出された理由わかっているんだろうな?」


 男はシュガースティックを使い切った芙美香を見て、笑い出してしまいそうになるのをこらえつつ、演技っぽい怒り声を震わせた。彼女がブラックコーヒーを飲めないことは事前に調べていた。芙美香が砂糖を使うことを見越して、『特別な』ものを準備していたのだ。そんなことは露知らず、芙美香は口を尖らせてコーヒーを啜った。


「わかってるよ。田中ちゃんには悪いことをしたと思ってる」


 芙美香は面倒くさそうに答えた。


「だから、その態度が軽いんだよ。全然悪びれてない」


 男の受け持つクラスでは芙美香を筆頭とした垢抜けた女子のグループが幅を利かせていた。そして、彼女らはここ最近田中という女子生徒をからかって遊んでいたのだ。田中も少し間の抜けた生徒ではあったが、元々は芙美香と同じグループに属していたこともあって、最初は他愛もないイジりだったのかもしれない。しかし、日を重ねるごとにイジりはエスカレートしていき、ついに昨日大ごとになってしまったのだった。


「高校生にもなって、限度がわからないのか」


「いや、だから、私たちも本当にあそこまでする気はなかったんだって。高校生にもなってまさか本当に漏らすなんて……」


 そこまで言って芙美香は言葉を詰まらせた。罪悪感を覚えたわけではなく、失笑をこらえきれなかったようだった。


 田中に聞き取ったところによると、昨日彼女らが田中にしたイジりとは、トイレを使わせないというものだったらしい。午前中、最初にトイレに行こうとしたところ、女子トイレで芙美香を筆頭としたグループに囲まれ、トイレを使ったらグループから追い出すことを告げられた。そのときはそれほど我慢していたわけでもなかったので愛想笑いを浮かべながら引き下がった。田中も最初は自分を困らせるための冗談だと思っていて、しばらくしたら普通にトイレに行けると考えていた。ところが、昼休みになっても芙美香らはトイレを使わせてくれず、別の階のトイレを使おうとしても付いてくる始末だ。その上お茶を大量に飲むことを強要してきて、午後の授業が始まるころには哀れな女子高生の我慢は限界に達していた。


 そして、男が教鞭を取る理科の授業中、田中は急に立ち上がったかと思うと、さめざめと泣きだした。何事かと慌てて駆け寄ったときには彼女は高校生にあるまじき粗相をしている最中だった。哀れな彼女は同級生が遠巻きに見守る中でびちゃびちゃと音を立てながらお漏らししてしまったのである。


「笑いごとじゃないんだよ。田中、ショックで学校休んでるじゃないか。どうしてそんなにへらへらしていられるんだ」


 男が冷たく言い放つと、芙美香は気まずそうに目を逸らした。それから少しだけ姿勢を正して、乾いた口を潤すためにコーヒーを啜った。


「本当に、悪いことをしたと思っています。ちょっとした悪ふざけのつもりが、やりすぎちゃいました。反省してます。……これでいいですか?」


 言葉の端から不貞腐れているのが伝わってくる。他にも田中を嵌めた生徒はいるのになんで私だけ、とでも言いたげに。


「犯罪だぞ」もちろんそんな態度で謝られても許すつもりはない。


「は?」


「犯罪だって言ってんの。お前たちは悪ふざけのつもりだったとしても、そんなの社会じゃ通用しない。これで田中が学校に来れなくなったらどうするつもりだ? どうやって責任取るつもりだ?」


「んー、たぶん、あの子は大丈夫だと思うよ。メンタル強いし」


「なんて能天気なんだ。……やっぱり、なんにもわかっちゃいないな」


 男は大仰にため息を吐き、ゆっくりと芙美香に歩み寄った。


「手を椅子の後ろに回せ」


「え? なんで」


「いいから回せ」


 男の口調は有無を言わさない。芙美香が怪訝そうにしながらも言われた通りにすると、すかさず白衣の中に隠していた手錠で手首と椅子を繋いだ。


「ちょ、せんせい?」芙美香は突然のことで状況を飲み込めていないようだ。


「犯罪者には相応しいだろう?」


 畳みかけるように、男はもう片方の手も椅子と手錠で繋ぎ、麻紐で芙美香の足首を椅子の脚に縛り付ける。完全に四肢の自由を奪われた芙美香は自力で拘束を解く手段を失った。


「ちょっと、先生やめてよ。こんなのおかしいでしょ」


 なんとか拘束を解こうともがく芙美香を後目に、男は出口の戸を開けた。


「安心しろ。この時間、いくら叫んだって誰にも聞こえないし、ここの部屋も施錠しておく。誰にも邪魔をされずにしばらく頭を冷やせ」


 捨て台詞を残し、男は部屋を後にした。



【2】


 それから男は40分ほど職員室で雑務処理に取り組んでいた。理科準備室では芙美香が助けを求めて叫んでいるかもしれないが、案の定なにも聞こえない。夜の帳が下り始め、外の景色が暗くなっていく。教師も半数近くが帰宅し、室内の人口密度も低い。


「そろそろ戻るか」誰に言うでもなく、男はつぶやいた。


 理科準備室に戻るや否や、芙美香の怒声が男を出迎えた。


「遅いよ! もう十分反省したから、早くこれほどいて!」


 そう急かす芙美香の動きは忙しない。腰を奇妙にくねらせ、足をがくがくと震わせている。顔は熱を帯びて発汗し、目にはうっすら涙がにじんでいるようだった。そんな彼女の表情は妙に艶めかしく、年が倍近く離れているはずの男にさえ劣情を催させた。


「本当に反省したのか? その割には落ち着きがないようだが」


「反省したって言ってるじゃん!」


 芙美香は半泣きで、落ち着きのない動きを繰り返した。男がその様子を正面からじっと見つめると、芙美香は頬を染めて目を逸らす。


「うぅ……と、トイレに行きたいの……だから早くほどいて」


 男は思わずにやけそうになってしまう。狙い通り。すべて男の仕掛けた通りに物事が進み、望んでいた光景が目の前にあった。


 見た目も愛らしく、老若男女問わず人気があり、愛嬌のある女子高生が思わず身悶えしてしまうほどのトイレ我慢をせざるをえない状況に追い込まれている。男は、学校の一室で椅子に拘束されたまま尿意を催してしまった女子高生の、切迫する尿意に焦りを隠せずにトイレの懇願をする姿を待ち望んでいた。


 もちろん、男の欲望はこんなところで終わるわけがなかった。


「それで、お前は田中をトイレに行かせてあげたのか?」


 冷たく吐き捨てると、芙美香は唇を噛みしめて表情を歪めた。


 相手が膀胱のかよわい幼児や小児であれば、トイレを我慢しては股間を抑えたり地団駄を踏んでしまうなどのみっともないおしっこ我慢の姿を頻繁に拝む機会もあるだろうが、高校生にもなって人前でそのような所作をすることはほとんどないと言ってもいい。法律上は未成年として扱われているとはいえ、女子高生の体は大人のそれとなんら変わらないのだ。特に女性は他人に自身の排泄を意識させることが恥ずかしいことだという認識をしていることが多い。芙美香らにいじめられた田中も失禁の間際まで教壇の男にピンチを悟らせなかった。


 女が、トイレに行きたくてじっとしていられなくなっている。それは、彼女の膀胱に湛えた尿が限界量に近いことを意味する。


 それを踏まえて芙美香の様子をじっと見つめる。意味もなく腕を動かして手錠を鳴らす。内股になって忙しなく脚を動かすたびに太腿の肉が揺れる。顔に余裕はなく、瞳孔が開き、呼吸を荒げる。


 どこからどう見てもお漏らし寸前の不憫な女だった。


 同時に、まだ諦めていない。男に拘束を解いてもらって、トイレに駆け込む。パンツを下ろして便座に座る。その時まで決して漏らしたくはない、と言わんばかりに苦しみの我慢を続けている。


「本当にもう、いい加減にしてよ。自分がしてることわかってんの? 普通に犯罪だからね」


「俺はお前らが田中にしたのと同じことをしているだけだが」


「さっき自分で犯罪だって言ってたじゃん! 死ね! 馬鹿! 変態! 教育委員会に訴えてやる……!」


「その態度じゃあまだまだ許すわけにはいかないな」


 男はおもむろにロッカーから三脚とビデオカメラを引っ張り出して、芙美香の目の前で組み立て始めた。


「な、なんのつもりよ、それ」


 ビデオカメラ越しに覗く芙美香の顔に怯えの色が浮かび始める。さすがの彼女も状況を理解し始めたように見えた。


「田中の気持ちがわかるまでお前にはこのままでいてもらう。それは究極的には失禁するまで、ということになるが……嫌ならそれなりの誠意を見せることだ」


 男は荒くなる呼吸を抑え、努めて冷徹に言い放った。


 そのまま、男はしばらく芙美香の監視を続けた。


「ふざけんなよ、変態がよぉ……」


 口先ではどんなに強がっていながらも、体は正直である。眉間に皺を寄せて男を睨みつける今もなお、芙美香の太腿はもじもじ、もじもじと忙しない。悪態を吐きながらも本当はトイレに行きたくて行きたくて仕方がないのだ。先生、もうおしっこが我慢できません。少女が口にできない代わりにその体が雄弁に物語っている。


 男の両足の付け根はすでにはちきれんばかりに膨張していた。この時が永遠に続けばいいとさえ感じた。


 始めの方こそ、芙美香は威勢もよく「死ね」だの「通報してやる」だのと宣いながら男を睨みつけていたものの、そのような言葉では事態を好転させることなどできないことに徐々に気付き始めた。少女の顔が、怒りと焦りが入り混じったえもいわれぬ色を帯び、男の嗜虐心を刺激する。


 トイレには行きたい。しかし、そのためには目の前の憎い男に詫び、尿意に屈服したことを認めて拘束を解いてもらわなければならない。


 失禁の末路を避けるために四肢を拘束された芙美香ができることなど一つしかない。しかし、その屈辱的な唯一の手段を取ることを少女のプライドが邪魔をする。そんな葛藤が見て取れた。


 乙女の焦燥と自尊心のせめぎ合い。男は心を鷲掴みにされた。悪事を犯した少女の膀胱には、コーヒーに混ぜた裁きの利尿剤によっていつもより早く尿が溜まっていく。芙美香自身、トイレが異常なまでに近くなっていることに疑問と恐怖を覚えていることだろう。だが、どんなに焦ったところで尿意は彼女を解放してくれない。女の目の前にそびえる扉は、失禁か屈服の究極の二択。残酷なまでの生理現象に抗う少女の姿は、どんなアダルトビデオよりも男の情欲を掻き立てた。


 しかし、あらゆるものに終わりがあるのと同じように、芙美香の我慢も永久には続かない。それどころか、ものの20分足らずで芙美香は根負けした。


「っ、せんせぇ、ごめんなさい……」ついに芙美香は泣きだしてしまった。「わたしが悪かったです。もうしませんから、トイレに行かせてください……」


 手が動かせず、顔を拭うこともできない。止めどなく溢れる涙は頬を伝い、制服に染みていく。


 男の教育的指導により拘束されたままトイレに行きたくなってしまった女子高生。じっとしていようにも波のように絶え間なく押し寄せる尿意がそれを許さない。スカートの裾から覗くほっそりとした太腿をふるふると震わせる。芙美香とて、純然たる女子高生の性的価値を理解していた。うら若き彼女が生足を艶めかしく悶えさせる仕草があらゆる男性に劣情を催させることも知っている。それは、教師とて例外ではない。指導と抜かして女子生徒を拘束するような変態教師にこれ以上の性的興奮を与えたくもないのに、「おしっこをしたい」こと、そして「男の前で着衣のままお漏らししたくない」という相反する欲求が芙美香を大人しくさせてくれない。


 おもむろに男は芙美香のスカートを捲った。


「うーむ」


露になったパステルカラーの下着を覗き込む。


 平時であればとうていあり得ないことだが、芙美香はそのことについては特に触れなかった。今にも漏らしてしまいそうな尿意という緊急事態のさなか、下着を見られることなど些事に過ぎなかった。


 残酷な尿意をせき止める芙美香の股間がひくひくと動くのが下着越しにわかった。男には女がどのようにおしっこを我慢するのかわからなかったが、きっと意味のある動きなのだろうと解釈した。


「しかし、まだ大丈夫そうだな」


 芙美香の下着には染み一つなかった。彼女の反応から見ていくらかちびってしまったものとばかり思っていたが、まだ我慢できそうだ。堪え性のない女め、と男は独り言ちる。


「せんせぇ、やめて……」


 芙美香の顔と股間を交互に眺める。十代の女がおしっこを漏らしそうになって泣きじゃくる姿は、見ているだけで絶頂しそうになる破壊力がある。しかし、男は身を震わせて堪えた。まだフィナーレには早い。


「田中がどれくらい辛かったかわかったか? あいつは漏らすまで泣かなかったぞ。他のクラスメイトにだって見られていたのに」


「ごめんなさい……。せんせぇ、おねがい……トイレ……」


「先生はトイレじゃないぞ? 解いてもらわないとなにがどうなるんだ、はっきり言え?」


 その瞬間、下着のクロッチ部分に透明な丸い粒がぷくっと膨らんだのを見逃さなかった。粒はすぐに潰れ、芙美香の体の凹凸に沿うように線状の染みとなった。


 ついに芙美香がちびってしまったのだ。


「あ、あぁ、せんせぇ、ほんとに、もう……」


 ちびってしまってから、明らかに芙美香の体の動きがおかしくなった。手足の動きはいっそう激しくなり、下着の奥も痙攣したかのようにぴくぴくし始める。


「ごめ、なさい、せんせぇ、おねがい、せんせぇ」


 たった一滴だったとしても一度液体を通してしまった尿道は機能不全に陥ったようで、断続的にちびっては下着を濡らした。最初は線状だった染みもどんどん太くなっていき、三角形に染まっていく。下着は一部分だけぐっしょりと濡れ、吸水しきれなくなって椅子を濡らし始めた。


 もはや男の目には芙美香の下着しか映らなかった。決して漏らしたくないという女の切望に反して徐々に濡れていくパンツ。女がいくら身をよじり、呼吸を荒げても押し寄せる波を跳ね返すことは敵わない。女が小水をちびるたびに、下着が濡れて教えてくれる。


 そして最後の時が訪れた。


 断続的な漏水が止まり、痙攣もぴたりとやんだ。芙美香の手足も動きが止まり、一瞬の静寂が訪れる。ふと、彼女の顔を見上げる。宙の一点を見つめる歪んだ顔を見て、嵐の前の静けさを悟った。


「もれ、やぁ――」


 最後の声は、涙に呑まれ意味のある言葉にならなかった。


 下着が濃く染まったかと思うと、瞬く間に透明な水があふれ出した。


 ついに、愛らしくも儚い女子高生がおしっこを漏らした。いじめのお仕置で椅子に縛り付けられ、必死にトイレの懇願をするも受け入れてもらえず、男性教師に間近で見られている前でやっちゃいけないとわかっているのに、その意志に逆らってパンツの中におしっこを漏らしてしまった。


 女は嗚咽混じりの吐息をこぼしつつ、自らのおしっこで下着を汚していく。その水流はちょろちょろというような生易しいものではない。堰を切ったように漏らした小水はじょぼじょぼというべき水勢で薄い布地を呑み込み、太腿を彩った。


あっという間にパンツは色濃く染まり、椅子を濡らす。失禁してしまった小水は艶めかしい太腿を伝い、あるいは座面から床に落ちて滝となる。卑猥な瀑布が音を立てて水たまりを広げていく。


 男の視線は、小水がこんこんと溢れ続ける下着に釘付けになった。息がかかりそうなくらい顔を近づけると、ほのかにアンモニアの臭いがした。


 芙美香は耳まで顔を赤くしておしっこを漏らした。男の視線に気が付くと、顔を歪ませつつ、目を瞑って顔を背けた。男は芙美香の髪を引っ掴んで無理やり顔を覗き込んだ。羞恥心や敗北感をこれでもかと滲ませた女の絶望的な表情に男はこれまでに経験したことないほどの悦びを感じた。


 利尿剤入りのコーヒーを飲まされた女が椅子に縛り付けられた上トイレにも行かせてもらえず、迫り来る凶悪な尿意に怯え、涙を流して懇願するも許しをもらえず、花も恥じらう女子高生としてあるまじき粗相をした。しかも、女性器から漏らした小水が彼女の下着を汚し、太腿を濡らしていく様を異性に目前で見られ、さらにビデオカメラにまで撮影されてしまう。教師の用意したいじめの懲罰は芙美香の想像を軽く超えていた。


 芙美香の失禁は1分近く続いた。その間、男も芙美香も一言もしゃべらなかったせいで、尿が床を打つ音だけが嫌に響いた。


 男は白衣に飛び散った飛沫を気にする素振りもなく、芙美香の様子を改めて視姦する。我慢も果てて羞恥のお漏らしを終え、弛緩しきった肢体。絶望や屈辱に打ちひしがれた顔、ぐしょぐしょに濡れたパンツとスカート。脚を伝う尿筋が艶やかに光り、床に広がる水たまりが彼女の粗相を物語っている。


 このまま自分も出すもの出したい心地だったが、じっと堪える。男にはまだするべきことがあった。


「田中の気持ちがわかったな?」


 男はいかにも教師然とした口調で語り始める。


「わかっているとは思うけど、これは指導だからな。仮に他の教師とか、教育委員会に報告したとしても、無駄だから。万が一、誰かに言ったと俺の耳に入ったら――わかってるよな?」


 男はビデオカメラを指さす。


 芙美香の返事はなかった。項垂れて、ぴくりとも動くことはなかった。


 男は芙美香の態度を承諾と解釈し、後片付けの準備を始めた。


 拘束を解き、着替えさせた後、念のため芙美香を校門まで見送った。操り人形のように覚束ない足取りで家路につく芙美香の様子を見て、魂でも抜けてしまったのかと思った。



【3】


「ちょっと、もう本当に許してよ芙美香……マジで結構やばいんだから」


 女子トイレの中、一人の女子高生が内股になりながら相対する女子生徒の集団に懇願していた。


「別にトイレに行っちゃダメなんて言ってないよ? ただ、今日トイレ行ったらこれからはハブるって、それだけ。ねえ、田中ちゃん」


 芙美香の隣では田中が薄ら笑いを浮かべていた。


「一日中なんて絶対無理だから。お願い、許して」


「しょうがないなあ」芙美香は後手に持っていた300mlのペットボトルを女子生徒に渡した。「それ、今ここで全部飲み干してくれたら次の休み時間にはトイレ行ってもハブらないよ」


 言われるがままに女子生徒はペットボトルに口を付ける。芙美香は田中と目を合わせ、片目を瞑る。それを飲んでしまえば1時間も我慢できなくなってしまうというのに、愚かな女だ。


 あの日芙美香を凌辱した変態教師のことは、帰りの足で警察と教育委員会に通報した。あの薄汚い男は学校を去ったが、彼は芙美香に新鮮かつ前衛的な楽しみを教えてくれた。


「――ふぅ、飲んだよ。これで次の休み時間にはトイレに行ってもいいんだよね?」


「もちろん。……あと1時間我慢できたら、ね」


 ペットボトルを飲み干した女の潤った唇を見つめ、芙美香は静かな微笑を浮かべた。



 終わり


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