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005 どうあがいても死のループからの最終選択肢

「……。」


えぇ……。いきなり通り魔に刺されるとか、そんなことある?


えっ、どうしたらいいの?無理じゃね?完全に気配なかったよ。暗殺者かなんかだろあれ、絶対回避不可じゃん。


俺はその後、百回ほど、ちろるの断り……百回ほど死ぬことになった。


トラックを避け、ちろるの手を握り、謎の通り魔から逃げるために走った。逃げ切ったと思った瞬間、ゴミ箱の中から謎の通り魔が現れ、襲われる。


「あの野郎……ジェイソンかよ……。」


取っ組みあいになっても、勝ち目はなかった。結局俺とちろるは、百通りの殺され方をし、ちろるの告白まえへと巻き戻った。


青春は生きるか死ぬか……みたいなことを言ったけど、本当にこれほど死ぬことになろうとは……。


どうあがいても、何をしても、あの通り魔からは逃げられなかった。


そして、やはり今も目の前には、頬を染めたちろるがいる。


「あの……先輩。私、先輩がすきです!」


そう告げて、ちろるは俺の身体に抱き着いてきた。


体が密着した瞬間、彼女の身体がふるふると震えて、心臓の鼓動がバクバク脈打っているのはもう分かった。


「………。」

「………///」


俺の脳内には、やはり三枚の選択肢が書かれたカードが浮かび上がった。



本命、やっぱり俺には神崎さんしかいねぇ、告白を断る

対抗馬、ちろるんこんなに頑張ってんじゃん、、ちろるの告白をOKする

穴馬、回答を保留する。


そうか、選択肢が間違ってたのか。俺が取るべき選択肢は……


「ちろる、俺でいいなら……付き合おうか。」


「ふぇっ?……いいんですか?」


そんなに嬉しそうな顔するなよ。なんか申し訳なくなる。


「先輩っ!大好きです~!」


ちろるは、再びぎゅっと抱き着いてきた。


これで、死を回避できるなら……そうするしかない。


客観的に見ても、ちろるは可愛い。見た目だけでなく、サッカー部のマネジとしても、いつも甲斐甲斐しく働いてくれる良い子だ。そしてこれほど真っすぐに、自分の好意をぶつけてきてくれる。


こんな子と付き合えるなんて、それで十分幸せじゃないか。これは中途半端な返事ではない。俺はちろるを心から愛すると決めた。


俺は自分の心をごまかすように、そんな言葉を脳内に浮かべていた。


ちろるの華奢な身体に腕をまわし、抱きしめ返そうとした時だった。


突如、俺の腹部に激しい衝撃が走った。


「………えっ?なんで……」


背後には、黒のフードを被った謎の男が立っており、その手には血に濡れたナイフがあった。


力なく俺はその場に倒れた。


「先輩っ!!」


フードの男は、そのままどこかへ走り去っていく。ちろるの悲鳴が聞こえ、俺の意識は消えていった。


――――――――――――――――――――――――――――――


「………。」


何が正解なの…?まさの穴馬……回答を濁すのが正解?


目の前には、緊張した面持ちのちろるがいる。


「あの……先輩。私、先輩がすきです!」


そう告げて、ちろるは俺の身体に抱き着いてきた。体が密着した瞬間、彼女の身体がふるふると震えて、心臓の鼓動がバクバク脈打っているのはもう百回ほどやって知ってる。


「………。」

「………///」


俺の脳内には、予想通り、三枚の選択肢が書かれたカードが浮かび上がった。



本命、やっぱり俺には神崎さんしかいねぇ、告白を断る

対抗馬、ちろるんこんなに頑張ってんじゃん、ちろるの告白をOKする

穴馬、回答を保留する。


回答保留すんの?それが正しい選択なの?……しかし、まぁ、回答を濁すということが、適当な返事をしないという解釈もあるかもしれない。


俺はもうどうやっても死ぬんじゃないかと思いながら、告白の答えを濁すという選択を選んだ。


「なぁちろる……。」


「……はい。」


俺は彼女の震える肩に手をあて、俺の身体から引き離した。


「……。」


ちろるは全てを悟ったかのように、足元を見つめた。


「ごめん、今までそういう風に、お前の事を見てなかった。……だから、今は返事ができない。」


「……。」


「勝手なこと言ってるよな。本当にごめん。」


「いえ……わかりました。」


ちろるは制服の袖で顔をこしこしと拭った。そしてにこっと笑顔を作った。やはり少しぎこちない笑顔だったのだけれど、それはどこか決意に満ちたような表情だった。


「そうですか!……ということは、私にもまだまだ希望はあるってことですね!」


「おっ……、おう。」


我ながらなんだその情けない返事は。しゃっきりせんかい。


「これからばんばんアピールしますからね!全力で惚れさせにかかりますから、覚悟してください!」


「……。」


「ちょっと、何か反応してくださいよぉ~!不安に……なります。」


ふてくされたように、ちろるは頬を膨らませた。


そうだな……。好きな人に思いを伝えるのは不安なのだ。


どう思われてのか?嫌われていないか……?とつい一喜一憂してしまうものだ。ここは、少しでもちろるの不安を取り除いてあげれる言葉がいい。


「……ははっ。そうだな。どんどんかかって来い!返り討ちにしてやる。」


「返り討ちにされるんですかっ!?」


「そうだな。俺のことを惚れさせるように、せいぜい頑張ってくれ。」


「はぁ!?なんかムカつくんですけど!……ふんっ、雪ちゃん先輩なんかもう知りません!」


結局俺は、道化を演じるという選択肢を選んだ。少しは元気が出てくれたようでよかった。


ちろるを家の近くまで送り、俺は再び一人で帰り道を歩く。


帰り道で通り魔に遭遇することもなく、事故にもあうことなく、やっとのこと俺は無事に自宅まで帰りついた。


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