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001 俺の告白は無限のデッドエンドをループする。

時刻は午後の五時四十五分。放課後のサッカー部の活動を終え、俺は急いで制服に着替えて、約束の場所へと向かった。


口から心臓や消化器官やらが出てきそうだ。


まだ約束の時刻まで時間はある。


彼女が到着するまでに、俺は何度も深呼吸し、何度も手汗を制服の袖で拭いた。汗臭くないかな……半袖の白シャツに鼻を押し付けると、普段使っている柑橘系の制汗剤の臭いがした。


あと、五分だ…。そろそろ来るだろうか。そわそわする。


「ごめん、お待たせっ……。」


パタパタと茶色のローファーがコンクリを叩く音とともに、愛しの神崎さんが現れた。


ひざ小僧が少し見えるくらいのスカートの丈、純白の半そでシャツ、CMで起用されそうなさらさらな黒髪が風に揺れている。


「あっ、部活おつかれ。ごめんね、急に呼び出しちゃって……。」


よかった。声は上ずらなかった。


体育館裏に呼び出すなんて、我ながら手垢のついた古風な演出だ。


家に帰っても練習するのだろうか……。彼女の手には、吹奏楽部で彼女が担当している楽器、フルートが入っているであろう、黒い皮のケースが提げられている。


「どうしたの?部活終わりに呼び出して……」


いやいやいや……、ほんとはもう察してるでしょ?このシチュで告白以外の行動をとる奴がいたら、もうサイコパス認定受けると思うんだけど。


「……。」

「……。」


何黙ってんだ俺、今さら引けんだろ。さっさと覚悟を決めろ。


「ふぅ……。えっとさ……。神崎さんのことが……、好きです。付き合ってください。」


よっしゃ言えた。あとは深々と頭を下げ、右手をさっと彼女の前に差し出すだけ。


震えそうになる手を、なんとか制御して前に出す。OK、さぁ……審判の時間だ。


「……。」


あぁ怖い。死刑宣告待つのってこんな感じかなぁ……。って何で振られる気でいるんだ。でも、勝算は……まぁ三割あればいい方だろうか……。


「……青葉くん。……。」


うぅ、頼むから溜めないで。殺すなら早く殺してくれ。


「気持ちはすごく嬉しいんだけど……。」


あっ……、終わった。


一気に空気の密度が千倍になったような気がした。眩暈がする…息できない、苦しい。


「ごめんなさい。」


死刑宣告頂きました。あっ、やばい……涙零れてきそう。あぁまじで死にたい。


その瞬間、心臓がグッと誰かに握りしめられるような感覚がした。


「ぐっ!?……うぐっ。」


胸が……苦しい……。息ができないっ……。


えっ、まじ死ぬの?何これ…?心臓発作ってやつ?


俺はそのまま膝から崩れ落ち、顔面を駐車場のコンクリで思い切り強かに打った。そしてそのまま視界は暗くなり、俺の心臓は鼓動を止めた。


――――――――――――――――――――――――――――――


「……。」


瞼を開くと、俺は体育館裏の駐車場に立っていた。


「……あれ、生きてる。」


周囲を見渡したが、さっき俺を振ったはずの神崎さんの姿も見当たらない。


「……は?」


夢……?まさかの夢落ちか……?


俺は慌てて時計を見た。時刻は五時四十五分である。


「……まーじで?」


呆然と立ち尽くしていると、パタパタと茶色のローファーがコンクリを叩く音とともに、愛しの神崎さんが現れた。


「ごめん、お待たせっ……。」


夢と同じだ…。フルートが入ってるであろう黒い皮のケースを持っている。


「……。」

「……。」


神崎さんは、黙ったままの俺を眺めて、「うん?どしたの?」と小首を傾げた。あぁ、もうその動作が可憐でかわいい。


「あっ、ごめん。えっとさ……。」


どうしよう…。夢とはいえ、さっき振られたしな。同じ言葉で告白するのは縁起悪そうだ。


「出会った瞬間から、もうずっと一目ぼれでした!神崎さん、あなたの事が大好きですっ!」


少し思い切った勢いある告白、そして深々と頭を下げ、右手をさっと彼女の前に差し出す。


「……。」


あぁやっぱ怖い。さっき夢で振られたけど……こんなもん、何回したって怖い。


「……青葉くん。……。」


うぅ、頼むから溜めないで。お願いだからOKして。


「気持ちはすごく嬉しいのだけど……。」


あっ……、駄目だこれは。


「ぐっ!?……うぐっ。」バタッ


まただっ!また心臓が……止まる……………。


――――――――――――――――――――――――――――――


「……。」


瞼を開くと、俺はまたまた、体育館裏の駐車場に立っていた。


「……まっ」


まーじで?腕時計の針は、午後の五時四十五分を指している。


「いや、これは……絶対おかしい。」


いったい何が起きているんだ……。また夢でもみてたのか?わからない……。


夢を夢じゃないと判断する方法はない。ブッダだって、「この世は夢だ」とか言ってたし、夢の中で頬つねったら、夢の自分は痛いと認識するからだ。


なんてくだらない哲学してても仕方がない。考えられる可能性としては、本命が夢おち……そして対抗馬があるとすれば……。


「……。」


ひょっとして、神崎さんに振られる度に、再び告白する前に巻き戻しみたいな……もしかして、タイムリープ的な?


「……うそ……だろ。」


もしかして、神崎さんに告白してOKもらえるまで、何度も巻き戻るとか?


「ごめん、お待たせっ……。」


「神崎さん!」


「えっ?はい……?」


「世界で一番、あなたを愛してる!一生幸せにします!付き合ってください!」


「ごめんなさい……。」


「うぐっ……ぐはっ。」バタッ


……そして時は繰り返す。

――――――――――――――――――――――――――――――


「ごめん、お待たせっ……。」


「神崎さん!」


「えっ?はい……?」


「I LOVE YOU!!!!」


「青葉君……?どうして英語……?Sorry…….」


「Oh……no……。」バタッ

――――――――――――――――――――――――――――――


「神崎さん!」


「えっ?」


「ずっとお前に言いたいことあったんやけど…。俺、お前のこと好きやで」


「どうしてえせ関西弁?ごめんやけど……無理やわ。」


「なんやて……神崎……」バタッ

――――――――――――――――――――――――――――――


「神崎さん!」


「えっ?」


「神崎さんの人生半分くれ 等価交換だ」


「……???等価交換……何のこと?。」


「ハガレン……見てください……」バタッ


――――――――――――――――――――――――――――――


「神崎さんっ!もう頼むからっ…ぐすっ、御願いだから、付き合ってよぉ……!!!」


「えっ!?どうしたのっ…青葉くん!?」


「うぐっ……。」


泣き落とししても無駄だった……。きっつ……。


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