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014 言葉先輩の告白はきっとからかっただけだ

「とりあえず、この希望調査の紙を、種目ごとに分けていったらいいですよね。」


「うん。そうだね!分けてから、エクセルに入力していこうか。」


各学年、男女別で、個人の名前を書いて希望種目とその理由を書いて投票する。


各クラスで多数決とって、その結果から決めれば楽ではないか……という意見が聞こえてきそうだ。というか、ほとんどの学校はそうしているだろう。


なぜそんな生徒会選挙なみの面倒な投票が行われるかというと、生徒が自己の主張を持ち、社会参加する自主性を促す一環だそうだ。


昨今、選挙に行かない若者が増えている。自分の意見など、社会に何も影響を与えない。どうせ誰も聞いてなんかくれない。そんな自己の影響力の欠如は、きっと大人になるまでに育成されている。


学校というものは、子供が大人になって、本当の社会に出る前の模擬社会であるといえるだろう。この模擬社会において、「クラス投票なんかしても、自分は多数派に挙手しておこう……」だとか、「どうせ少数派の意見なんて聞いてもらえないだろう……。」という考えで、ろくにやる気のない生徒も多い。そんな学生時代の負の経験こそが、本当の社会に出てからの自己影響力の欠如を助長していると言ってもいい。


そこで姉貴は、球技大会の種目決めですら、自己の意見を持って意欲的に参画する機会を設けさせるようにした。


理由のない投票は無効、納得のいく理由を書いて投票された意見は、十票分の価値を与えるという姉貴の案により、真剣に自分の意見を学校という社会に訴えかけよう、自分の考えをもとうという生徒の数も増えている。


まぁ……おかげで生徒会の仕事量は、昨年の何倍にも膨れ上がったそうだが……。


「やっぱり、色んな考えを持った人がいるねぇ。」


投票用紙を種目別、理由が記入されているかどうかに仕分けしながら、俺と言葉先輩はどんどん仕分けしていった。


「ふふっ、サッカーとバスケは、サッカー部とバスケ部がキャーキャー言われて調子に乗ってムカつくから卓球にしてくれ。リア充死ね……だって。」


「まぁ気持ちはわからんではないが、そんなもん、だったらお前もサッカー部やバスケ部に入れとしかいいようないですね。」


それにしても、似たような理由で卓球を押す意見が多くみられる。まるで卓球部による組織票のようだ。そしてどの文面にも、おどろおどろしい字で文末に「リア充死ね」という言葉が添えてある。


「なんか……似たような文面で卓球を押してる票がいくつか見られるんですけど……。」


「なんか、最近リア充しねしね団とかいう変な団体ができたらしいよ?」


なんだその新手の宗教団体みたいなものは……。


「えらく物騒な団体ですね。まぁ……リア充じゃない俺には関係ないですけど。」

「あれ?弟君まだ彼女できてないの?」


ぐさっとくる一言である。中学のあの辛い年越しを迎えてからというものの、俺には一切彼女はできていない。


約一年半ぶりに、ようやく重い腰をあげ、先日神崎さんに告白したものの、見事に撃沈して謎の死のループに入り、なんとか抜け出せたかと思うと、今度は後輩のちろるから告白され、それもまた死の無限ループに陥ったのだった。そしてなんとか抜け出して今日にいたる。


「もう、こんなに可愛い弟くんなのに、どうして彼女ができないんだろうね~。」


と、言葉先輩は再び俺にすぐそばまで顔を近づけてきた。


美人なお姉さんに顔を寄せられ、思わず鼓動が高まってしまう。


「ねぇ……おとうと……くん。」


言葉先輩の吐息が、ふっとかかる距離だ。耳元から立体音響のように、甘い声が聞こえてくる。


「私でよかったら、……付き合ってみる?」

「……………。」


あり……?どうしてこうなった……。すごいドキドキと鼓動が脈打っている。おい、バカ沈まれ。俺には神崎さんという心に決めた人が……。


これはきっと、神様に試されてるに違いない。


「…………あの、からかうのは止して下さい。」


そう言うと、言葉先輩はくるっと回転しながら、元の位置に戻った。


「残念だなぁ~。弟くんなら別にいいんだけどな~。」


やっぱり、からかっただけ……だよな。若干言葉先輩の頬が染まっている気がしないでもないが……。


「……。」


ってか、今のって告白じゃないよね、からかわれただけだよね?もし告白だったら、俺ってまた死ぬんじゃないか?昨日みたいな死の無限ループ始まっちゃうんじゃないだろうか……。


約五分ほど時間が経過しても、突如通り魔が現れて刺し殺すなんてことは起きなかった。どうやら、本当にただからかわれただけで、告白だとは認められなかったようだ。


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