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012 突然の呼び出しと突然の声かけ事案

午前の授業が終わって、お昼休みの時間となった。ゆっくり神崎さんの横顔を見ながらお昼を食べようと思ったその時、スマホにラインのメッセージ通知画面がポップアップした。


“昼休み、生徒会室に来てもらっていい?少し仕事を手伝ってほしい。”


姉貴からのラインであった。青葉家においては基本、年長者の言う事は絶対である。


いや、それだとおかしいな。俺のいうこと全然風花のやつ聞きやしないし……。言い直そう。青葉家において、基本的に姉貴の言う事は絶対である。


姉貴の要請メールにそれでも必死の抵抗を試みようと、俺はこう返信を返した。


“えっ、俺生徒会じゃないのに……。”


そう返信をかえすと、わずか五秒たらずで返信がきた。


“学期末で忙しい。弟の手もかりたい。弟にもすがりたい。いいから来い。”


俺への助力を頼んでおきながら、お前の力なぞは所詮、猫の手や水中の藁とどうレベルだと軽くディスッてくるあたり、そして最後はもう御願いではなく命令口調になっている、さすが姉貴だ。


“わかったよ。いきます。すぐいきます。”


姉貴の命令に従い、俺は昼休みに弁当を持ったまま、生徒会室へと向かおうとした。


「あれ?青葉くんは教室でお弁当食べないの?」


風鈴がちりんと鳴るような涼し気な声、神崎さんに声をかけられた。


「えっ、あっ、ちょ、ちょっと姉貴に、仕事手伝えって呼び出されてさ。」


きょどりすぎだろ俺……。しっかりしろ。


「そうなんだ。やっぱり青葉君はお姉さん想いだね。やっさしー。」


ころころと子どものように笑う神崎さん。いや、これもう神様だって天使と間違えるわ。だって、何か後ろにキラキラしたスクリーントーンが見えるもの。背景に笛加えた子どもの天使が舞ってるもの。


「そっ、そんなことないよっ。っじゃあ、またね。」


「うん、お疲れ様。」


ひらひらと手をふる神崎さんに、軽く手を振り返して俺は教室を出た。そして激しく後悔した。


またねじゃねぇよ俺……。何早々と会話切り上げようとしてんの!もっと気の利いたジョークの一つでもかませよ!


「お姉さん想いか。そうだね、俺の半分は家族への愛と、もう半分は神崎さんへの愛でできているよ。」くらい冗談っぽく言ってみろよ。まぁ死んでも言わんけども……。


ってか、神崎さんも悪い……。いきなり声かけてこられると困る。


昨今、突然声をかけただけでも事案として地域ニュースになってしまうくらいだ。


こっちもきょどらないための心の準備とか、声が上ずらないための準備とか色々必要なので、声かける前には五分ほど前に一言ラインスタンプ送るとかで教えてほしいものだ。


カント曰く、『真面目に恋をする男は、好きな人の前では困惑し、愛嬌もろくにないものである』、とのことだ。


全くもってその通りである。というか、こんな名言残すってことは、カントも同じような経験したってことか。なんか親近感湧いてくる。


「はぁ……。」


情けない自分に対し、今日一番の大きなため息が出た。


いや、正直すごい嬉しいのだけど……。向こうから声かけられただけで、今日一日授業中だって構わず小躍りできる気分である。土足で椅子に上がり、机の上にのって、ぴょんぴょんと机を跳びわたって、先生の前で尻をぺちぺち叩いてリズムを取りながら小躍りできる。まぁしないのだけど。


「生徒会室いくか。」


切り替えがパッとできるのが、俺の48あるいいところの一つだ。なお、悪いところを数えはじめると、きっときりがないから辞めとこう。


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