悪役令嬢の妹はヒロインと一緒に…後
「お嬢様…」
壁際に控えていた、ジューンの母であり私の乳母であるマーサが書類を持って、声をかけてきた。
「マーサ、この書類は?」
「フィーナお嬢様がヤード男爵令嬢と知り合ってからの行動と言動をまとめたものでございます。」
「マーサ!」
「ヤード男爵令嬢と親しくなってからのフィーナお嬢様は、ハルスクーダ公爵家の令嬢としては如何なものかと、認めておりました。」
「イージュ少し見せてもらえるかな、代わりにこちらの書類を…。」
「カイル?」
カイルから代わりにと渡された書類は、街で私やカイルに起こった事の報告書だった。
「うそ…でしょ、フィーナがこんな…。」
「イージュ嘘ではありません」
私が呟いた言葉に、返事をくれたのはカイルの後ろに控えていたヒーニアスでした。
「貴女に向けて水をかけた犯人も捕まえ、ヤード男爵令嬢を追いかけていた男達も捕らえ吐かせたので間違いありません」
「そんな…フィーナがヤード男爵令嬢を襲うようこの人達に頼んだの?」
「ヤード男爵令嬢を追いかけるだけの仕事だったみたいですよ、カイル殿下に近づく為に…」
フィーナは、カイルにヤード男爵令嬢を助けるように仕向けて私がカイルに合流するのをわかっていて、ヤード男爵令嬢とカイルが寄り添いあっている姿を見せて私を絶望させたかったようだと、ヒーニアスに言われました。
「ヤード男爵令嬢の回りからは、カイル殿下と結婚する事になりハルスクーダ公爵家に第二夫人に入るとヤード男爵の経営する店の従業員達に話して居るようです。」
「僕はイージュしか要らないからね。愛人なんていらない。」
書類を見ていたカイルが私を真っ直ぐと見つめ、私しかいらないと言ってくれた。
「カイル、ありがとう。」
「イチャイチャしないで早く書類を呼んで下さい、殿下」
カイルと見つめあって居ると、ヒーニアスに止められてしまいカイルは書類に目を向けた。
「フィーナ嬢は僕と結婚しヤード男爵令嬢を第二夫人に、なんて貴族の決まりがまだわからないみたいだね。」
「えぇ昔から何度もフィーナに言い聞かすのだけど、分かってくれないのよ。帰りの馬車でも第二夫人が…」
「イージュ?どうかした?」
馬車で、フィーナに言われた事を思い出した。
「フィーナに愛人を持つことを認められないのは、婚約者失格と言われてしまって…。」
「婚約者失格なんかじゃない!、僕もイージュは独り占めしたい!」
「カイル…」
「イージュ…」
「そこまでですイージュ、フィーナ嬢は他にはなにか?」
「ヤード男爵令嬢が、2ヶ月後の誕生月にデビューが決まったそうでカイルにエスコートを頼みたいと。」
「「イージュ…。」」
「ごめんなさい。」