悪役令嬢の妹はヒロインと一緒に…。 中
「お姉様、カイル殿下は婿入りするとはいえ王族ですもの第二夫人や愛人など当たり前に必要ですわ、公爵家に婿入りしたお父様でも私の母が居るのですからその様に落ち込むなんて婚約者として覚悟が無いんですか?」
フィーナが言うように、カイルは王族で兄の王太子殿下は王太子妃と結婚した三年後に第二妃を迎えているが、カイルは婿入りするので、第二夫人は持てないし、私の父親のように愛人として囲うことしか出来ない。
この国は、婿入りした者が愛人をもつ場合。
婿入りした家の財産等などは、愛人の生活費などに使う事が出来ない個人の財産で養う事。
と、あるため愛人として迎えるならば、ハルスクーダ公爵の財産は使えないがカイルは王子なので愛人を数人余裕で囲うことが出来るはず。
「覚悟は出来てるわよ…。」
「なら良いのです、ロローア…私の親友がハルスクーダ公爵家にカイル殿下の妻として来てくれるなんて嬉しいです」
「フィーナ…ヤード男爵令嬢は妻ではなくカイル殿下の愛人
と言う立場にしかなれませんからハルスクーダを名乗れませんよ、貴女のお母様もそうでしょう?」
「そんな事わかりませんわよ、カイル殿下はお姉様より、ロローアを妻として扱うかもしれませんし。」
「フィーナ…。」
「お姉様、覚悟があるとおっしゃいましたよね…」
フィーナは、ヤード男爵令嬢を絶対と言うほどカイルと結びつけたいようです。
「わかったわ…カイル殿下にお伝えしておきます。」
「良かった!私も嬉しいです、早速ロローアに手紙を書かなくては。」
フィーナと話して居る間に屋敷へと着いてしまい、私もカイルへ手紙を…何時かは、カイルに愛人を持ちたいと言われてもお母様のように、受け入れなければと思っていました。
「覚悟はしていたたはずなのに…。」
カイルの隣に、私ではない誰かが立つなんて…。
「お嬢様、どうなさいました?」
馬車を降りて、立ち尽くす私に声をかけてきたのは、私の乳兄妹のジューンで現在は屋敷で執事見習いをしている。
「ジューン…少し考え事」
「…フィーナ様がヤード男爵令嬢を屋敷に連れてこられた後から、カイル殿下がヤード男爵令嬢を妻に望んでいるなど、噂が流れていましたが…」
「ジューン!知っていたの?」
「はい、商家に嫁に行った姉から手紙が来てましたから」
「何故、教えてくれなかったの!」
教えて貰って居たとしても、何も変わらないだろうけど…少しは心に余裕が持てたかも知れないのに。
「このような所で話すことではございません、談話室へ行きましょう、直ぐにお客様も見えるはずですから。」
ジューンに談話室へ連れてこられ、お茶を待って居ると。
「イージュ!」
「あらカイル殿下、ヤード男爵令嬢とお忍びのデート中では?」
カイルがヒーニアスを連れて慌てたように談話室に入ってきた。
「誤解だ!」
「イージュ、申し訳ありませんが殿下の、私達の話を聞いてもらえませんか…。」
「ヒーニアス…」
カイルとヒーニアスにお茶を出しメイドを下がらせる。
「フィーナ嬢は居ないね?」
「?、えぇフィーナはシャロン様の家に行く日でしたので街から帰った後直ぐに出かけましたわ」
フィーナも、一緒に出かける相手がデート中と言うことで街から帰ってから直ぐに予定を繰り上げ、シャロン・ワースト様(父の愛人でフィーナの産みの母)の家に泊まり掛けで出かけて行ってしまった。
「今日、僕が街でイージュを待って居ると…」
カイルが私を待って居ると、男達に追われながら男爵令嬢が走りながら近づき、護衛が男達に気を取られた一瞬に男爵令嬢に引っ張られ、あの店まで連れ去ったらしい。
「殿下をあのような女に連れ去られ、護衛を果たせなかった私達護衛官の失態です。」
「僕も令嬢に引っ張られ連れ去られるなんて、情けないよ。」