悪役令嬢編 デート編 前
「イージュ!」
「カイル…殿下、そんなに慌てて、どうなさったの?」
お茶会から早5日学園の廊下で、カイルに呼び止められた。
「1日予定が開きそうな日があるんだ、良ければその日に先日約束したデートしないか?」
「よろしいんですか?、ではお父様に予定を確認してみます。」
「ああ、楽しみにしてるよ」
「私もです。」
カイルとデートの計画をたて、ちゃんとお父様に出かける許可を
もらい後はデートの日を待つばかりです。
約束の日
「お姉様…どちらへお出掛けですか?」
「フィーナ…カイル殿下と少し街を散策する約束をしているので、出かけてきますね。」
お茶会の後から、少しずつフィーナが話し掛けてきてくれるようになりました。
「フィーナも出かけるの?」
「はい、ロローアと買い物に行く約束をしていて…お姉様良ければ一緒の馬車で出かけませんか?」
「えぇ、良いわね!」
フィーナは男爵令嬢とカイルを何故取り持とうとするのはわかりませんが、フィーナと姉妹として交流出来るのは凄く嬉しいことです。
私もフィーナも待ち合わせ場所は同じ、乙女の噴水広場で…その昔一人の乙女が戦にでた恋人の無事を100日祈り続け恋人と再会した場所、王都で待ち合わせするときは絶対として皆集まる場所。
「カイルも、ロローアさんも居ないわね?」
時間通りに、約束の場所に着きましたが私達の待ち人は居ませんでした。
「イージュ嬢!」
「ヒーニアス様?」
私を呼び止めたのは、カイルの護衛の一人であるヒーニアス・アリスト侯爵令息で私やカイルとは幼なじみで騎士を目指し身体を日々鍛え努力を怠らない方です。
「イージュ嬢それにフィーナ嬢、少しお話が…。」
「ヒーニアス様、カイルになにか合ったのですか?」
「…此方へ」
ヒーニアス様に連れてこられたのは、一軒の可愛らしいお店でした、広場から少し奥まった場所にありお客さんは余り居ませんが頑張れば、庶民でも買える装飾品を販売するお店。
お店のドアを、開け中を見るとカイルと男爵令嬢が寄り添い頬を少し赤くしながら二人で指輪を見ている…。
ドアを開け、ボーッとしていると店員が慌ててやって来て。
「申し訳ありません、本日は婚約が決まったお二人の為の貸しきりとなっております。」
「え…あの中に待ち合わせた人が…。」
「申し訳ありませんが、後日ご来店くださいませ。」
丁寧な言葉と違い、乱暴に外へ出されてしまいました。
「イージュ嬢! 大丈夫ですか!」
「ヒーニアス様…中にお二人が居たのですが、婚約が決まった二人の為に貸しきりなんだそうです?」
「殿下とあの男爵令嬢が婚約?何の冗談です…!危ない!」
「きゃぁ!」
バシャーンと、私に向かいかけられた水から庇ってくれたのは、ヒーニアス様でした。
「大丈夫ですか?イージュ嬢?」
「はい、ヒーニアス様は?」
金の髪から、水を滴り落としながら私を抱きしめ微笑みを浮かべるヒーニアス様を見つめていると。
「隊長、捕まえました!」
「ご苦労、殿下をお呼びしろ!」
「は!」
「ヒーニアス様、お使いください」
私はポーチに入れていたハンカチを取り出し、ヒーニアス様に渡す。
「ありがとうございます、イージュ嬢」
「私は、殿下がでてくる前に屋敷に帰ります。」
「お待ち下さい、すぐに殿下からお話が…。」
「カイル…殿下にお幸せにと、お伝えください」
ヒーニアス様の返事を聞かず、私は慌てて馬車へ引き返し屋敷へとフィーナと帰りました。
フィーナは騒ぎの事など知らず、少し離れた場所で品物に見とれて居たと慌てて何処からともなく合流しました。