めでたしめでたし
「……総監は出頭したぞ。それで、お前はどうするんだ?」
BCが消え、崩落の心配が無くなった時代維持部隊本部、その近くの小高い丘に植木と綺羅星は居た。
本部の正面玄関前は警察や軍の関係車両や人員がごった返し、二人の居る場所までその喧噪が聞こえてくる。
黒曜石を思わせる黒き塔はあちこち砕け、かつての栄華は最早無い。
だが、落ち行く太陽の光を浴びて黄金に輝いていた。
「そうさなー……つっても記憶は別に戻ってねえからな。適当に旅しながら、それでも探すとするさ」
「……一人でか?」
「ああ、今までだってそうだったしな」
「……」
綺羅星は途端に顔を歪めると、くるりと背を向け、そのまま大股で歩いていく。
向かった先にはソロモンが停められていた。
無造作にまたがる綺羅星。
「お前さんはどこに行くんだ?」
「乗れ」
「は?」
「旅に出るのだろう? 私が運転してやる。乗れ」
その語気は強く。
「い、いや、そりゃ悪ぃだろ」
「悪くない。乗れ」
有無を言わさぬ迫力があった。
「お、おう。嬢ちゃんがいいってんなら……」
おずおずと後部座席に座る植木。
「綺羅星」
「なに?」
「嬢ちゃんではない。綺羅星と呼べ」
子供のように頬を膨らませて言う。
「……わかったよ。じゃあ行くか綺羅星」
「ああ!」
今度は満面の笑みで、綺羅星はスロットルを全開にした。
エンジンが唸りを上げ、ソロモンが走り出す。
風を切り裂き、夕日を浴びて丘を駆け下りる。
「旅は道連れ世は情け」
植木は笑う。
「さてさてどうなります事やら」
心底楽しそうに。
――チャンチャン。