表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/39

ブラックカンパニー

 大爆発。

 時代維持部隊の本部を揺るがす巨大な振動。

 一度や二度では無く、何度も続くそれは、わななきであった。そして、身もだえであった。

 そう、ある生き物――即ちリストラの。

 サイココンデンサは、ネットワークケーブルを通じ、時代維持部隊本部にも接続していた。

 それは決して時代維持部隊本部にコンデンサがあり、集めたエネルギーを蓄えようとしたわけではない。単にデータを解析するために、ネットワークを介してデジタルデータを集めていたにすぎない。

 が、各地のCAREで溢れだしたエネルギーはそれを逆流。

 ケーブルを通じて時代維持部隊本部の地下にあるメインコンピュータを襲った。

 ジタイのコンピューターはその機密性から、特別なネットワークのみ接続し、この場合CAREがそれに当たる。

 その閉鎖性が完全に裏目に出た。

 全国各地から一点を目指し集中するストレス。

 スーパーコンピュータをまるでさなぎとするかのように受肉したそれは、各地で暴れるリストラなどとは比肩できぬほど強大だった。

 様々な色が混じりあった結果、完全な黒を成す。

 不定形にうごめき、あらゆるものを捕まえて取り込む。増える。伸びる。

 地下最下層で生まれた黒が、エレベータシャフトを駆け昇り、手当たり次第破壊を始めた。

 まずすぐ上の地下駐車場が餌食となり、ひしゃげた車両から漏れ出したガソリンが気化。

 初めの大爆発を引き起こした。

 爆発で生じた亀裂は容易に黒を侵入させ、侵入と同時に体積を増大させたそれは、天井を、壁を引き裂く。

 その進路にある全てを飲み込み、無論人すら取り込んでいく。

 リストラに襲われた者はリストラが持つやるせなさから脱力し、昏倒するが、この黒は違う。

 取り込んだ者を、文字通りその一部とし、端末へと変えてしまう。

 捉えられた人々は胴体を半ばまで侵食され、胴より下は本体に繋がる巨大な一本の触手と化す。まるでチョウチンアンコウの疑似(ぎじ)()のように伸びていく。

 そして、他の被害者を引きずりこむのだ。

 彼らに己の意思はほとんど無い。陰鬱(いんうつ)とした気分と頭にかかる(かすみ)があるだけだ。

 時代維持部隊の隊員たちは若者がほとんどであるが、取り込まれてしまった彼らの瞳から、若さゆえの希望を見出す事は出来ない。

 取り込まれた時点で個を喪失し、奉仕者たる端末になるのだ。

 あたかも蜘蛛の糸を登るカンダタにまとわりつく亡者の如く、全てを取りこんでしまう。

 一度捕えられれば逃げる事も叶わない。

 もはやリストラを超えた存在、黒き仲間たち――いわばブラックカンパニーであった。

 ブラックカンパニー――BCはそのまま上昇を続ける。

 理念などない。

 ただただ、活動するだけの存在。

 そして、その活動は関わった全てを不幸にする。

 生ける不幸は、次第に中層にある放送室へと迫っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ