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求めたもの

作者: 立花 悠

 私には感情がなかった。

正確には理解できなかった。

人から聞きかじった知識としての感情、人形のように虚ろなまま表情を作る。

それが私のすべてだった。


 他人が泣き、笑い、怒る。

いつも私はどこにも無くて、人形が佇んでいるだけだった。

生来器用だったからか不自由は無かったし、感情があることを愚かであるとすら思っていた。


彼女に出会う事がなければ、感情を理解したいと思うことが無かっただろう。

戯れに手に取った本、その中にいた彼女。

愛した男の為、自らの弟を殺し、国も何もかもすべてを捨てて愛した者に尽くした女。

その太陽のような情愛に男は焼かれ、彼女を疎み、捨てた。

愛の深さゆえに捨てられた、哀れな女。

それが彼女だった。


私には理解できなかった。

すべてを捨てるほどに他人を愛する。

それほどまでに狂おしい愛を持った人。

その存在を認めたとき私の心に暖かい不思議な欲求が生まれた。

初めての感覚だった。

戸惑いはあった、でも不快ではなくむしろ心地よかった。

彼女のように、他人を愛せたら。


 初めて知った感覚の骨組みに、知識としての感情を着せ、想像によって仮初めの命を与える。

滑稽な人形遊びでしかなかったが、満足だった。

幾度も、幾度も繰り返すうちに彼女のように他人を愛したい。

気が付けばそう考えていた、理由はきっと無いし、考える気もなかった。


想いは広がり、祈りへ、願いへと姿を変えた。

そして、願いは私に夢を見せた。


どこか私に似ている男。

いつも水仙を見ていて、私に気が付くと、どうだいキレイだろと誇らしげな視線を向け、視線を戻す。

彼も私も声をかける事は無かったし、名前も知らなかった。

私はそれでよかった。見ているだけで満足だった。

公園のベンチに腰掛けた彼を見る。

私の中に感情がどんどん生まれていった。

きっと幸せだったと思う。

幸せだから変えようと思わなかった、永遠に続く事なんてありはしないのに。

変わらないモノはないとわかったばかりだったのに。


 花が終わり、水仙が葉だけになった時、彼は姿を消した。

その後も、何度も彼のいた場所に足をはこんだ。

水仙もベンチも何もかも、最初から何にもなかったみたいになくなっていた。

もしかしたら彼は、私の妄執によって生まれた妄想だったんじゃないか。

人を愛することの出来ない人形が自らを慰めて安心しようとしている、自慰行為でしかなかったのではないか。

理解できない想いの炎に焼かれながら私は自嘲的に笑うしかなかった。


 望んだものはすべて与えられた。

感情も、身を焼かれるような想いも何もかも。

本当に欲しかったモノは願うこともなく、失われてしまった。

幸せだったから、十分だと決め付けてしまったから。必要だと思わなかったから。

感情なんていらなかった。

そうやって泣き叫ぶしかなかった。

泣いて、泣いて、涙が枯れ果てても泣いて。

泣きながら彼を探すのだろう、私にどこか似た男を――。


読んでいただいてありがとうございます。

あまりに読み難く、つたない文章であったと思います。

これから勉強していきますのでよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言]  立花悠先生、初めまして。私、鏑(かぶら)と申します。本作品の感想を残させて頂きたく思います。  プロットは、しっかり練られているように感じました。話に展開がありますし、感情のない主人公の動…
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