06話 神鋼炉
1ヵ月後、なんと核シェルターが建てられました、、、はい。
「なんで、こうなったのかな、、、」
俺は、目の前に建つ、『工房付きの家』を見ながら、思わずつぶやいたのだった。
時は遡り、1ヵ月前。
元の世界で教わった刀匠としての技術を使い、異世界鉱石で刀を打つことを決めた俺は、不動産屋に向かい工房の付いた家を買うことにした。
「――と、いうわけで。炉の付いた工房がある一軒家が欲しいのですが」
「はあ? 剣を作るための炉が付いた家だと、そんなもんあるわけないだろうが」
この世界では、武器や防具は材料とスキルだけで作れる。
そのため、炉を使う職人はいないし、炉が備えられた家など需要がないらしい。
「そこを、どうにかなりませんか? できれば最高レアリティの鉱石も溶かせられるくらいの炉がほしいんですが、、、」
「そんなこと言われてもなあ。硬貨を作るための炉を作る技術自体はあるんだが、って最高レアリティの鉱石を溶かすだとっ!!!」
「何か問題でもあるんですか?」
「当たり前だろ! 今流通している最高の鉱石って言ったら、アダマンタイトかヒヒイロカネぐらいだが、そいつらを溶かすとなると、それこと王級の魔法でも用いない限り、、、いや待てよ」
雑貨屋のおっさんに紹介された不動産屋のおっさん――おっさん2だな、が物々をつぶやきながら、自分の世界に入ってしまった。
雑貨屋のおっさんいわく、このおっさん2は【鍛冶師】のスキルを持っている程度には鍛冶に詳しいから、と紹介されたのだが。
「おい、小僧!」
「――な、なんですか?」
「お金はいくらまで用意できる? それによっては面白い話がある――」
「ああ、それなら――」
こうして俺はおっさん2にとある場所に連れていかれた。
◇◆◇
おっさん2に連れられてきたのは、鍛冶師ではなく工事関係の職人であるおっさん3の職場だった。
目の前ではおっさん2とおっさん3、それにいつから来たのか、おっさん1までやってきて暑苦しい会話が繰り広げられていた。
「――神鋼炉の建設――」
「――それなら、無理だと――」
「――いや、費用によっては――」
「――それで、できるのか?――」
「――可能性は――」
「――俺はやってみたい――」
「――俺も見てみたいが――」
「――俺も賛成だ――」
「「「――よし! 決まりだ!!!」」」
ようやく話が纏まったみたいで、おっさんたちは揃って俺の方へむいた。
「――話がある」
「なんでしょうか?」
「どこから話したものか、、、」
「は、はあ、、、」
この後、おっさんたちが話し出すけど、、、
誰がどのおっさんかなんて、もはや区別できないから適当でいいか。
「俺らは昔からの腐れ縁で、ある夢があった。それは【太古の鍛冶】についてだ」
「【太古の鍛冶】ですか?」
「そうだ、俺らはとある遺跡の地下で資料を見つけたんだが、そこには武器や防具を作る方法が書かれていた。それは今の【鍛冶師】のスキルで作り出すものではなく、金属を熱し、溶かし、叩いたりして作り出すと書かれていた」
「それは、まるで、、、」
「そうだ。お前が話していた作り方なんだろう。だが、問題はそこじゃねえ」
「お前さんの他にも異世界人が似たような方法を提案したことがあるらしいのだが、失敗に終った。理由はその異世界人が詳しい知識を持っていなかったことと、それ以前に鉄以上の金属を溶かすことができる『炉』が建造できなかったかららしい」
「だが、遺跡の地下に残されていた資料には『神鋼炉』というものの作り方も書かれていたんだ」
「当時の俺ら、いや今の俺らでも建造は難しい、主に金銭的な問題でだが」
「そこで、兄ちゃんが金を出してくれるんなら、俺らにその『神鋼炉』を作らせてはもらえないか?」
「「「――頼む! 俺らに夢をもう一度見させてくれ!」」」
おっさん×3の暑苦しい土下座が眼前に広がる。
「わかりましたから、頭をあげてください、、、」
アレに抵抗できる人がこの世にいるとは思えない。
◇◆◇
と、いう経緯をもって、『神鋼炉』付きの家が完成したのである。
万が一の『神鋼炉』の事故を考え、シェルター機能までついている。
「「「――念願だった『神鋼炉』が、遂に作ることができた!!!」」」
おっさん×3が、感動のあまり抱き合って、暑い抱擁を交わしている。
ちなみに、少量だけ用意したアダマンタイトが溶けることも確認してある。
「「「なんかあったら、いつでも頼ってこいよ!!!」」」
こうして、俺は異世界での、自宅と工房を手にいれることができた。
――おっさん×3には感謝するべきなんだろうけど、その気になれないのはなんでだろう。