05話 呪(まじな)いのミサンガの恐るべき効果
――目の前に、大量の金貨が積まれている。
呪いのミサンガの効果が判明し、俺のレベルが上がらないことが確定した日から、3日が経った。
俺は、呪いのミサンガの効果を甘く見ていた。
――この呪いのミサンガの効果は、こう表記するのが正しい。
【取得経験値-100%】になる代わりに【金運上昇】を得る。
これが、レアリティ10である最高位の呪い――呪いではなく、呪い――による効果ということが重要になる。
このミサンガをつけると、とんでもなくお金に恵まれるのである。
その結果が目の前の金貨である。
この3日間で金貨100枚近く手に入れた。
日本円で換算すると1000万くらい。
いつも通り採ってきた薬草が、10倍の値段で売れ。
拾ったガラクタがマニアに高く売れ。
歩いていただけで盗人から荷物を取り返すことになり、貴族からお礼を渡され。
買った宝くじ(異世界人が広めたらしい)が大当たり。
もはや恐怖を覚えるくらいの効果だった。
「これは、いわゆる資金チートだけど、、、
なんだろう、あんなに欲しかったチートなのに簡単に手に入ると逆に怖い」
だからと言って、ミサンガが外れることはないし。
もちろん、お金は欲しい。
なので、俺はこう気持ちを切り替えることにしよう思う
――そんなわけで、TUEEE系は出来なくなったけど、お金には困らなくなっちゃったんだぜ。
◇◆◇
「ともかく、レベルが上がらないから冒険者はできない。なら、念願だった魔剣や聖剣を作るため鍛冶師になろう!!!」
こうして、俺は冒険者を諦め、鍛冶師になることを決めた。
いい職人がいたら弟子入りも視野にいれるとしても、まずは情報収集だ。
雑貨屋のおっさんや冒険者ギルドで、何人か職人を紹介してもらったのだが、、、
「この世界の鍛冶師はおかしい!!!」
この世界の鍛冶は、金属を炉で熱し、ハンマーで叩くなどすることはなく。
【鍛冶師】のスキルで、MPを消費して武器や防具を作るらしい。
そして、消費したMPに応じて武器や防具の強さが変動するということなんだと。
つまり、【鍛冶師】のスキルを持つこと、MP値が高いこと、が鍛冶師としての条件になる。
【鍛冶師】のスキルは、後天的に得ることはできるらしいのだが、俺のMP値は救いようがない。
――レベルが上がらないのだから。
その他にも、MPについて重要な情報をいくつか聞けた。
・MPの回復量はMP最大値に依存するもの、比較的回復が遅い。
・MPは一度完全に消費すると、最低でも1週間、長ければ1ヶ月は全回復しない。
・魔法は適性がなくても、MPを多めに消費することで使うことができる。
――まあ、何が言いたいかと言うと、、、
「レベルが上がらない俺は、MP1で固定だから、鍛冶師にもなれないし、魔法も使うことができないということか」
こうして、異世界での鍛冶師の夢は潰えた。
◇◆◇
「――さて、これからどうしようか、、、」
呪いのミサンガのおかげでお金には困らない。
だけど、そのせいで鍛冶師になることも叶わない。
レベルが低く弱いため、旅をするには危険すぎるから、異世界観光などもできない。
「てか、【鍛冶師】のスキルに頼るんじゃなくて、俺の中の普通――元の世界の刀匠としての打ち方――で剣を打てばいいんじゃないかな?」
お金はなんとかなりそうだから、炉の付いた工房を買うこともできるだろうし。
異世界金属もお金で買える。
むしろ、ミスリルとかオリハルコンとか、アダマンタイトとかで刀を打てるなら、、、
「爺さんに教わった技術で、異世界金属を使い、刀を打つ。――それはオタクで見習い刀匠である俺として、これ以上はないんじゃないか?」
もともと、やることはない。
それにミサンガのおかげで多少、資金がかかったのに後でダメでした、となっても問題ない。
――やることは決まった。
ならば、あとはやるだけだ。
思い立ったが吉日、だ!!!
ヒロインはもう少し後で出てきます。
今のところ女の子要素は少ないですか、温かい目で読んで下されば幸いです。