11話 レベル1鍛冶師VS駆け出し勇者
「――ちょこまかと、逃げてんじゃねえっ!」
剛田が大きく振り回す『エクスカリバー』を、紙一重でかわす。
ゴーレムよりも早い一撃ではあるが、単調すぎる。
ガイアウルフと戦った時にみた『風来の乙女たち』のメンバーや、たまに模擬選を付き合ってもらうミミやココネなど、本物の技術を使う人たちに比べれば粗末なものだ。
だからこうして躱せるし、こうして隙を突ける――!
「ぐはっ、、、 ふざけんな!」
『オレイカルコス』の刀身は、確かに剛田を斬った。
しかし、剛田の体に異常は現れない。
ダメージを聖剣の恩恵が肩代わりするためだろう。
まあ、痛みは残るんだがな、、、
ゴーレム戦のときの俺もそうだったからわかる。
(――それに、今回の目的は剛田を殺すことじゃない。気絶させて記憶を消せば俺の勝ちだ)
確かに剛田には恨みこそあるが、殺して報復したいわけではない。
だから、聖剣の恩恵があるうちに痛みで気絶させることができれば、、、
「――はあっ!」
声を上げ、わざと大きく『オレイカルコス』を振り下ろす。
――どうせ頭でっかちの剛田のことだ。
力任せに『エクスカリバー』で迎え撃つに決まっている。
それを、いなして懐に潜り込めば、、、!
「俺の聖剣を甘く見るんじゃねえ! ――【一触全斬】!」
「なっ、、、」
確かに予想通り、剛田は『エクスカリバー』で迎い撃ってきた。
だが、スキルを使ってくるとまでは予想していなかった。
――慌てて距離を取る。
スキルを使った『エクスカリバー』と打ち合った『オレイカルコス』の刀身を確認する。
刀身が欠けているものの、折れてはいなかった。
「――はあ? なんで、俺の聖剣のスキルを食らっても剣が無事なんだよっ!!!」
「こいつも特別性だからな」
『オレイカルコス』の【瞬間再生】を使い、欠けた刀身を直す。
すると、傷一つない綺麗な刀身に戻る。
(――それに1つ、嬉しい誤算もあった)
『エクスカリバー』のスキル【一触全斬】は、触れたものを無条件で切り裂くスキルではなかった。
触れた部分を、問答無用に切り裂くだけらしい。
ようするに、ただ単にものすごい切れ味がいいだけだ。
実際、刃が当たった瞬間に引いた『オレイカルコス』は、『エクスカリバー』の刀身に当たっていた部分しか欠けていなかった。
(聖剣だろうと関係なく切れるのはすごいが、ただそれだけだ)
――聖剣を持った素人同士の戦いはまだまだ続く。
◇◆◇
「――はあ、はあ、、、」
「――はあ、、、 はあ、、、」
互いに吐く息が荒くなってきた。
素人とは言え、聖剣を持ちステータスが跳ね上がっている者同士の戦いは中々激しい物になった。
――斬っては斬られ、斬られては斬る。
その度に、スキルや魔法で傷を治していく。
その結果、体力と精神力がものすごい勢いで削れていく。
そして、それが被弾の増加へと負のループを起こす。
「――くそっ! なんで勇者の俺が『かじし』なんかと、互角なんだよっ!!!」
互角、、、か。
確かに、今のままじゃ勝てるかどうかはわからないな。
恩恵の値は互角、聖剣の格は『エクスカリバー』の方が優勢。
そして、戦闘の腕はぎりぎり俺の方が上手、といったところだろうか。
(――せめて『氷面鏡椿』があれば、話は変わるのに)
1ヵ月に1回しか使えない【一刀両断】は、フルメタル・ゴーレム戦の時に使ってしった。
もしかしたら、『エクスカリバー』を壊せたかもしれないが、所詮ないものねだりだ。
(どうするか、、、)
――他の聖剣では、ステータスの恩恵が下がるし、そもそも有効なスキルがない。
ましてや魔剣では話にならない。
(しょうがない、このままじわじわと削るか、、、)
【超高位鑑定】が使えないので、正確な数値はわからないが、それでも少しずつは削れているに違いない。
(――剛田だって疲れてきているはず、、、って、何をっ!?)
急に剛田が『エクスカリバー』を地面に思い切り叩きつけた。
――気でも狂ったのか?
「ふざけやがって、このおんぼろ剣がっ! もっと力をよこしやがれっ」
どうやら、剣に八つ当たりしているらしい。
――なんか、急にかわいそうなやつに思えてくる、、、
しかし、剛田は一度スイッチが入ると見境なく八つ当たりをはじめ、気が済むまでは止めない。
「――って、これはチャンスなんじゃないか?」
自らの武器に八つ当たりしている敵、、、
隙だらけの何物でもないな、うん。
「――今がチャンスっ!」
俺は、剛田に攻撃を入れようと動いた瞬間――
――地面に勢いよく叩きつけられた、聖剣『エクスカリバー』が折れた。
――はあ!?




