03話 不思議なミサンガ
ココルテの町についてから1週間。
俺は、最初にいた森で薬草探しをしていた。
「念願の異世界なのに、なんでこんなことに」
兵士の詰め所を後にした俺は、言われた通り冒険者ギルドに行った。
そこで、冒険者登録をしたのだが、受付の女性に笑われてしまった。
原因はもちろんステータスだ。
一般的な人――戦いや力仕事をしていない女性も含む――のステータス平均がこうらしい
――――――――――――――――――
LV: 3
HP: 150
MP: 30
STR: 50
INT: 50
VIT: 50
AGI: 50
――――――――――――――――
俺のステータスはこれ
――――――――――――――――――
LV: 1
HP: 100
MP: 1
STR: 1
INT: 1
VIT: 1
AGI: 100
――――――――――――――――――
レベル1なのを考慮しても、俺はそこら辺を歩いている女性よりも弱いらしい。
受付の女性が思わず笑ったのも頷ける。
ちなみに、冒険者のトップクラス――Sランク冒険者のステータスは、平均1000程度になるらしい。
それで、俺が薬草取りに来ている理由だが、、、
お金を稼ぐために依頼を受けなければならないのだが、街中の力仕事などは、ステータスのこともあり戦力外。
仕方なく、少々の危険は伴うものの唯一の救いであるAGI――すなわち素早さを活かせる、町の外で採取依頼ということになった。
「薬草20本で、銅貨2枚か」
金銭に関することは、もらった冊子に書いてあった。
大雑把な解釈でまとめるとこんな感じである。
鉄貨=10円 銅貨=1000円 銀貨=1万円 金貨=10万円 白金=1億円
単位はコルと言って、10円=10コルと考えてよさそうである。
薬草20本で銅貨2枚。すなわち2000円になり、ココルテの町の安宿で質素な料理を食べるのとほとんど同額になる。
「これで、20本目だな」
ようやく見つけた最後の薬草を【アイテムボックス】に入れ、固まった筋肉をほぐすように背伸びをする。
時間はそろそろ夕方になるぐらいか。
夜の森は危ないから、駆け出しは行くなって釘を刺されているし、そろそろ帰らないと。
俺は【マップ】を使い、ココルテの町に向け、歩き出した。
――ガサッ
「――っ!?」
不意に聞こえた、草木がこすれる音。
おもわず、振り返るとそこにいたのは、、、
「緑色の肌に、凶悪さをうかがわせる鋭い牙を持った顔、飢餓症状を思わせるぽっこりとしたお腹。――これがゴブリンか、、、!」
俺はわき目も振らず逃げ出した。
◇◆◇
駆け出し冒険者鉄則。
・ゴブリンを見たら、すぐに逃げること。
ゴブリンは繁殖能力が高いため、一匹みたら近くに数匹いることが多い。
低いが知能も持つため、集団で囲まれることもあり、熟練の冒険者でも後れを取ることがあるため、注意すること。
冒険者ギルドで教わったことを思い出した俺は、全力で森の中を走る。
素早さだけは、腕を鳴らしている冒険者程度はあるため、ゴブリンに追いつかれることはなく無事ココルテの町にたどり着いた。
冒険者ギルドで、薬草の換金を終わらせ、宿屋に戻った俺は、全力疾走で疲れた体を休ませるため、ベッドにダイブした。
「ゴブリンごときに全力で逃げるなんて、情けない、、、」
◇◆◇
次の日、俺はまた薬草採取に森に入っていた。
できることなら、今日は休みたかったが、お金がないので働かないわけにはいかなかったのだ。
昨日のこともあり、いつもより周囲に気を使いながら、薬草を探していた。
「ようやく半分か」
10本目の薬草を見つけた俺は、薬草を【アイテムボックス】に入れる。
そして、次の薬草を探すため、また歩を進める。
「――っ!」
わけがわからないが、言葉にできない不安感が押し寄せてきた。
おもわず、あたりを見渡すと、わずかだけど荒い息遣いが聞こえてきた。
木の影に隠れながら、音の聞こえた方を見ると、そこにいたのは3匹のゴブリンだった。
「――ガアァ?」
「――っ!!!」
――目が合った!
俺はすぐに振り返り、また脇目も振れず全力で逃げ回った。
◇◆◇
ゴブリンから逃げることに成功した俺は、また同じところに戻ってきた。
この辺は薬草の群生地になっていて、採取が終わってなかったため戻ってきたのだ。
ようやく20本目の薬草を見つけた俺は周囲を警戒しながら、ココルテの町へ向かっていた。
「ここは、さっきゴブリンがいた場所か、、、」
ココルテの町への最短距離を移動していた俺は、見覚えのある場所にやってきた。
【簡易マップ】のおかげで、昨日もゴブリンとあった場所もここだと分かる。
――ゴブリンはここで何をしていたのだろうか?
疑問を感じた俺は、周囲にゴブリンがいないことを確認した後、ゴブリンが屯していた場所を探してみることにした。
「いくつか、薬草は見つかったけど、ほかには何もないか、、、」
薬草はあれば金になるのでラッキーなのは間違いないが、ゴブリンがいた理由にはならない。
「もしかして、怪我をしたゴブリンが薬草で治療していたとか、、、? ん?」
足元に不可解な感触を覚えた俺は、足元を探ってみた。
そこにあったのは、――ゴブリンの血、、、ではなく
「――ミサンガ?」
ミサンガを拾い上げ、見てみる。
特にミサンガにおかしいところは見当たらなかった。
と、思っていたところ、急にミサンガ光りだして、左手首に巻き付いた。
「――――――――――――えっ?」