02話 ココルテの町へ
【簡易マップ】にあった町にむかい森の中を歩いていく。
あ、もちろんボーっと歩いていたわけじゃないよ?
足元に生えている草を採取しながらである。
――と、いうのも
「アイテムボックスに入れたアイテムは鑑定できるのだ!!!」
名前と簡単な効果だけしかわからないのだが、鑑定のスキルがない上に異世界の知識もないのだから非 常に重要な効果である。
採取したアイテムは薬草が1本と雑草が21本。
効果は以下のとおりである。
・薬草:成分を抽出するとポーションの原料となる。そのまま使うと、ごく微量な回復効果が得られる
・雑草:雑草。とくに効果はない。
雑草は所詮雑草だが、アイテムボックスの容量の確認もあるため、捨てずに取っておくことにした。
「お、あれが初めての街か」
1キロしかなかった道のりだが、森の中ということもあり一時間ほどかかった。
あ、時計なんか持ってないよ? 体感で1時間ぐらいかなって。
【簡易マップ】で確認してみるが、町の全貌が入りきらないため、大きさがわからない。
見た感じでは、それなりの壁でおおわれているし、兵士が門番をしていることからして、結構大きい街なのかもしれない。
問題は、お金も持っていない、素性もわからない俺を、町の中に入れてくれるかどうかなんだよな。
お約束なら、誰かが助けてくれるとかありそうだが、チートスキルをもらえなかったことからお約束は期待できない。
最悪は奴隷落ちなんてこともあるかもしれない。
「でも、このまま街に入らないと、それはそれで詰みだからな」
魔物はいるかわからないけど、都会暮らしのニートが、いきなり森で自給自足なんてできるわけがない。
――絶対に無理だ。
「悩んでいても仕方ないな。兵士のところで事情を説明してみよう」
時間がいいのか、門で並んでいる人はそんなに多くはなく、最後部になるべく目立たないようにして並ぶ。
見た目のせいなのか、格好のせいなのか、ちらちらと視線を送られるが話しかけてくる人はいなかった。
そして、すぐに順番がきた。
「ココルテの町へようこそ。身分証の提示を」
「すみません、身分証がないんですが。どうしたらいいですか?」
「それなら、銅貨1枚と検査を受けてもらうことになるが」
「すみません、お金ももっていなくて、、、」
俺の言葉に疑問を持ったのか、兵士の視線にわずかな変化がでる。
しかし、俺の格好も見て何かに気づいたのか、兵士から驚きの言葉が出てくる。
「お前もしかして、異世界人か?」
◇◆◇
兵士たちの詰め所に案内された俺は、そこでいろいろな話を聞いた。
どうやら、この世界は次元のつなぎ目というものがほどけやすく、異世界人が頻繁に訪れるらしい。頻繁といっても年に数人らしいが。
昔は異世界人がくるたびに様々な問題が出たみたいで、神様(実在する)がこの世界に適応できるように異世界人セットと呼ばれるスキルを渡すことにしたんだと。
それに大きい町では異世界人に説明するためのマニュアルまで決まっているらしい。
「で、お前さん。異世界人セットのスキルの他に特別なスキルは渡されたか?」
「なんでそんなことを?」
「あー、確かに他人のスキルを詮索するのはマナー違反なんだが、異世界人の中にはものすごいスキルを持つやつがいてな。その場合は国への報告が推奨されているんだ。答えたくないならいいんだが、どうだ?」
要は、定番通りチートスキルを渡され、小説みたいなことをしたやつがいたんだな。
てことは、やっぱり俺はハズレなんだろう。
チートスキルを持ってないことを隠しても利点なんてないだろうし、それより兵士からの好感のほうが重要か。
「残念ながら、チートスキルは持ってないよ」
「そうか、、、 あんま気落ちするなよ? 異世界人は持っている知識で大成することも多いし、なんとかなるだろ」
「ああ、残念だが持ってないものはしょうがない」
気落ちしている俺を、気まずそうに見ている兵士が、ばつが悪そうに冊子を手渡してくる
「ほれ、この町の情報と国のことも書かれている冊子だ。金も持っていないだろうから、まずは冒険者ギルドに行って冒険者として登録するのを勧めるぞ」
「ああ、そうしてみる」
こうして、俺は兵士の詰め所からでて、初めての異世界の町であるココルテに足を踏み入れた。
――なんか、思ってた異世界物と違うなぁ