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6.冒険者ギルド


トイレで用を済ませた後、銭袋の中身を確認する。

お金は少ししか残っていなかった。



(金は倉庫に、けっこう残っているはずだけど)


(早めに稼いでおかないと、後で困るかなー)



ギルドカードを首からはずして、銭袋の中に入れる。

銭袋を手に持ったまま、部屋から出ていく。


廊下で振り返り、今出てきた部屋に鍵を掛ける。

その鍵を銭袋に入れ、鎧の裏側に忍び込ませてしっかり固定。

こうしておけばなくす事はまず無いだろう。


廊下から階段に進み、1階に下りる。

通路には誰もいなかったのでそのまま進み、食堂の横を通る。

食堂の入り口から中で動いているビオレッタが、ちらっと見えた。

声を掛けようかと思ったが、彼女が料理を運んでいたので、スルー。


ルカ・ルーはそのまま宿を出て、南に向かって歩きはじめる。

周りをキョロキョロしながらも、街の住人たちと同じような動きを心掛けた。


冒険者ギルドを探していたのだが、割と大きな交差点に差し掛かった時。

右に向かう道路に、大きな樽の絵の看板があるのが、目に入った。



(あ、倉庫の看板だ。ちょうどいいや、寄っていこう)



交差点を右に折れて、看板のある建物に近づくと、間違いなく倉庫だった。



(ふわぁぁ、大きいなー)


(やっぱり村とは違うのね)



彼女はその大きさに、圧倒される。

やや気後れし、しばし見上げてしまった。


意を決して、スイングドアを押して中に入っていく。


トレードマークの鉄格子が張り巡らされたカウンター。

入り口側の壁際に、待つためのソファーや荷物を詰め替える作業台。


かなり多くの人が、思い思いの顔をして作業をしていた。

ヒソヒソと小声でやり取りしている人達をぬうように、ルカ・ルーは進む。


カウンターにはいくつもの窓口。

ここにもけっこうな人数が並んでいた。


彼女は一番人の少ないところに並ぶ。

しばらくしたら順番が回ってきたので、倉庫番にギルドカードを提示。

自分の収納袋を出してもらった。


それを持って作業台に移り、当面使いそうなお金を手持ちの銭袋に移す。

必要な着替えと日用品を、魔法鞄に詰め直した。


準備を終えたルカ・ルーは、別のカウンターに収納袋を持っていく。

礼を言って、それを倉庫番に受け渡す。

そして規定の手数料を支払った。


再び人を縫うようにして移動。

入ってきたドアから外に出る。


ふぅっと、この日何回目かの安堵の息を付く。

彼女は通りに目をやり、歩いている人たちを見回した。



(みんな、気難しそうだなー)



忙しげな人の多さにやや戸惑う。

そのペースに慣れなくては、と自分に言い聞かせた。


元の道に戻り、南に体を向け、先を見通そうと目を凝らす。



(このまま行けばいいのよね、たぶん)



周りの同じような年頃の男女の様子が気になる。

みんなオシャレで、かっこいい。

街着の人もいれば、防具を装備してる人もいる。


人種も様々なんだけど、なんというか・・・・・総じてすごくあか抜けて(,,,,,)いた。


どうにも気になってキョロキョロしてしまう。



(うー、いろいろ見て回りたいなー)


(ダメダメ、何気を散らしてるのよ!)



まずはお仕事だ、と自分に言い聞かせて彼女は歩き出した。





◇ ◇ ◇





ルカ・ルーは冒険者ギルドに行くため、メイン通りを南に向かって歩いている。

周りをしきりに見回しながら、案内されたとおりに進む。

直にそれらしい建物が、見えてきた。



(冒険者ギルド・・・・・ここで良さそうね)


(でっかいなぁ。さぁ、がんばるのよっ、わたし!)



育った村との違いに戸惑いながら、気後れしてしまう自分に渇を入れる。



「ひょぃ」


口癖で自分に気合を入れながら、入り口のスイングドアを押して入る。

中では多くの人たちが、忙しなく動いていた。


戦利品をカウンターに上げている人。

大声で言い合っている人たち。


人の多さに緊張しながら、ルカ・ルーは壁際に沿って進む。

空いてた椅子を見つけて、そこに座って気を静めた。



まずはギルド内の様子見。


右側にある掲示板には、依頼用の羊皮紙が貼られている。

難易度順にしきりができているようだ。


それを熱心に見ている多くの冒険者たち。

ベテランの冒険者が窓口で、ギルド職員と深刻そうな顔をして話し込んでいた。



(なんか、村のギルドとは全然違う。みんな忙しそうだ)



ルカ・ルーは一番端っこの受付が空いているのに気付く。

彼女は、そこで手続きをすることに決めた。


少しおどおどした感じで、ゆっくりと受付に向かう。



「すみません、ここいいですか?」


「はい。御用は何でしょうか」


「私はベアバレーから、今日移ってきたんです。移動の手続きをしようと思って来ました」


「分かりました。それではギルドカードを出してください」



カウンターの内側に立っていたのは、見事な赤い髪をなびかせた痩身の女性。

アンジェリクといい、年の頃は20代半ば。

利発そうな眼差しで、手元のギルドカードを見ながら、その内容を確認している。



「えーと、ルカ・ルーさんですね。確認をさせていただきました。このカードはお返しします」



アンジェリクが右手に持ったカードをルカ・ルーに差し出す。

カウンターの外側にいるルカ・ルーは受け取って、鎧の裏側にしまいこんだ。


手続きが無事に済んで、やや安心したルカ・ルー。

ニコッと笑顔を浮かべながら、アンジェリクに応える。



「ありがとうございます。しばらくこの街に滞在するつもりです」


「ようこそ、ルカ・ルーさん。この街を気に入ってくれるといいですけど。分からない事があったら遠慮せず聞いてくださいね」


「ありがとうございます。ヨロシクお願いします!」



優しく声をかけられて、ますます安心した彼女は自然と声が高ぶる。



「こちらでの初仕事を、今日、手配しますか?」


アンジェリクが尋ねる。



「いえ、まだ来たばかりなので、明日から考えたいと思います」


「分かりました。では、明日もまた来てくださいね。私は受付担当のアンジェリクと申します。アンジェと呼んでください。これからよろしくね、ルカ・ルーさん」


「分かりました。アンジェさん、ヨロシクお願いします!」


「ルカ・ルーさんは呼び名とかあるのかしら?」


「ベアバレーでは風弓と呼ばれていました」


「じゃぁ、私も風弓さんと呼ばせてもらうね」


「はい、ありがとうございます」



お互い呼び名の交換をしたので、アンジェリクの口調がぐっと親しげに変わる。

ルカ・ルーは丁寧な対応をしてもらって、かなり安堵した様子。



(ウイングボーンはどこに行っても優しい人が多いな)


(良い人ばっかりの街だったりして)



これならなんとかやっていけそうと、この日何回目か思い、彼女は自信を深める。



「あとでお尋ねしたい事もあるんですが、まずはギルド内とか街の様子を見て回ってみます」


「それじゃ、ゆっくりしていってね。依頼はそっちの掲示板に貼ってあるのよ。常設依頼は冊子にまとめて喫茶コーナーの方にもあるので見てみて」


アンジェリクが左手を上げて、掲示板コーナー示しながら説明。



「親切にありがとうございます。ではまたです!」



ルカ・ルーは教えてもらった掲示板の方に向かって歩く。

大きな街での依頼内容が、村のとはどのくらい違うのか興味津々。

依頼書を一つずつ、丁寧に目を通していった。


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