45.作戦決定
全員立ち上がり、移動を始める。
部屋を出て、話し合いの予定されている会議室に向かっていく。
すぐに入り口にたどり着き、ルカ・ルーが扉を開ける。
部屋には結構な人数が居たが、椅子が一部空いており、来てない人もいるようだ。
一番遠くに座っているリシャールと、目が合う。
やや不思議そうにこちらを見ていた。
ルカ・ルーはぺこりと頭を下げて挨拶。
一番後ろの空いている席に、テオドールとリリー・エフを座らせる。
そして自分もその隣に座った。
ギルバートはリシャールのそばまで、歩いて行く。
そのまま前屈みになり、リシャールの耳元に顔を寄せて話し始めた。
その隣に居たローペも参加し、事前の打ち合わせをしている模様。
参加している他のメンバーは、チラチラと後ろに座った三人を見ていた。
彼らも時折、顔を寄せ合ってひそひそ話している様子。
扉が開いて、大地の鼓動のメンバーが入ってくる。
回りに挨拶をしながら前の方に進み、空いている席に無造作に腰を下ろす。
彼らが座ったら、ほぼ空席はなくなった。
ローペが立ち上がり、皆を見回しながら話し始める。
「皆さん、揃ったようなので始めましょう。昨日から、いくつか進展がありました。まずはリシャさんから、簡単に説明してもらいます」
「おお。まずは、作戦のめどが付いたので、その辺からだな」
「はい。お願いします」
「今回の討伐は、ギルに指揮を執ってもらことで決定だ。そんで、デバッファーの目途も立ったので、少数精鋭でいくことになる」
「デバッファーは王都から来るんですかい?それなら結構待つことになりますね?」
Cランクパーティのリーダーが、声を上げた。
「いや、王都から呼ぶつもりだったが、ギルが昔の知り合いに頼んだようだ。今、後ろの来ているダークエルフさんがそうらしい」
リシャールがそう告げると、参加者は一斉に後ろを向く。
テオドールは無表情のまま、前を見ている。
リリー・エフはニコニコと、愛想笑いを浮かべていた。
「それで、まずは具体的にメンバーを決めちまおう。前衛からだな。ギル、前は3枚でいいのか?」
「ん、大盾が3枚揃ったから、それでちょうどいい」
「んじゃ、真ん中にギル、両隣に一人ずつだ。大盾はギルドから貸し出す」
「俺は参加するぞ。レオが居ないとなれば、俺ががんばるしかねーや」
大地の鼓動と並ぶBランクパーティのリーダー、盾士のマルコが声を上げた。
「ああ、マルコには頼もうと思ってた。もう一人は誰がやる?」
「・・・・・」
他に積極的にやりたい、という声は出なかった。
残りのCランクパーティのリーダーたちが、浮かない声で話す。
「前衛3人だけなんて無茶だ。俺じゃ、耐えられないって」
「うーん、うちの盾士も、少数精鋭で行くなら、ちょっと自信ないって言ってたな」
「鉄壁さんとマルコと並ぶんじゃ、それなりの実力が無いとバランス取れないな」
「うちのレオが居れば、すぐ決まりなんですけど・・・・・すみません」
最後にフィリーネが、決まり悪そうに話した。
ギルバートは特に反応なし。
リシャールは渋い顔をして、参加者を見回している。
雰囲気を読んだローペが、話を進める。
「えーと、盾士の残り一人はとりあえず置いておいて、決め易いところから、どんどん決めていきましょう。盾士とセットで回復士も3人ですかね」
「だな。希望者は言ってくれ」
「私は参加しますよ。レオの敵討ちなんで、がんばります」
フィリーネが真っ先に手を上げた。
すぐ続いて、アンジェリクが立ち上がる。
「私も参加させてください!」
「うーむ・・・・・」
リシャールはなんとも言えない様な顔をして、ギルバートを見る。
ギルバートも困惑気味。
「もう、ここで待ってるのは飽きたわ。私も一緒に戦いたいの!特に危険が増すなら、私にもお手伝いさせて、お願い」
アンジェリクはギルバートを見詰めながら必死に訴える。
ギルバートは目を瞑って、思案気な様子。
ルカ・ルーは心配そうな様子で、アンジェリクとギルバートを交互に見ている。
「他に参加してもいいって回復士は、いねーのか?」
とギルバートが見回す。
「うちのは、やっぱ自信ないって感じだったな」
「申し訳ない、この前の戦いでブルっちまってる」
「説得してみないと分からんな」
色のよい返事がなく、リシャールは険しい顔付きになる。
ギルバートはアンジェリクをしっかり見詰め、うなずく。
「分かった、アンジェに頼もう。俺の回復を頼む。フィリィはマルコの回復だ。最悪、2組でもいけるだろう」
「ギール、ありがとう・・・・・やっと・・・・・」
アンジェリクは涙を浮かべながら、つぶやく。
ギルバートはローペに目をやり、先を促す。
「ロペさん、続けてくれ」
「では、次に魔法士ですね。これも3枚でいいのかな?」
「ん、そんな感じ。リシャさんは決定」
「まあ、俺は行かんとまずいだろ」
「大地の鼓動からパトリスが出るわ。うちは全員参加のつもりだから」
大地の鼓動の全員が頷いている。
レオポルドの分を全員でカバーする気のようだ。
「ノア。お前も参加だ」
いきなりギルバートが、ノアハルトに向かって声を掛けた。
「えっ!おいらも連れて行ってくれるのかい!」
「ん、おめーの火力は捨てがたい」
「ありがてー!さすがは鉄壁さんだ!見るところが違うねっ」
まさか指名されるとは思っていなかったのか、ノアハルトは立ち上がって喜ぶ。
「絢爛っ。いい気になるなよっ。またヘマしたら、ただじゃおかねえぞ!」
「おめーごときが、行くのは不本意だが、しょうがねえ。またタゲとって邪魔すんなよっ」
「何だと!自分で参加する勇気もねーくせに威張るないっ!」
横から口を出されて、また激昂しかかるノアハルト。
それを見て、機先を制するようにギルバートが声を掛ける。
「ノア、黙ってろ。しのごの言わねーで、実力を見せ付けろ。俺は絶対にタゲを飛ばさねーから、思いっきりやれ」
「分かったよ、鉄壁さん。おいら、死ぬ気で撃ちまくるよ。絶対に選んだことを、後悔させないからっ」
ノアハルトは立ったまま、ギルバートを見詰めて力強く宣言した。
ルカ・ルーは聞いてて思わず手に力が入り、ウンウン首を縦に振っている。
「それでは、魔法士は三人決まりました。あとは補助的な役割ですが・・・・・」
「デバッファーは、疾風のテオドールさん。その補助で黒百合さんだ」
ギルバートがローペの振りを受けて、二人を紹介した。
テオドールとリリー・エフは立ち上がり、挨拶をする。
「テオドールと申します。デバフが使えるってんで呼ばれてきましたが、もう年なんでうまくできるか分かりません。足を引っ張らないようにがんばります」
「あたしはリリー・エフってんだ。黒百合と呼ばれてるよ。ソワイエ商隊って行商隊で王国中を旅してるんだよ。テオドールはあたしのオヤジでね。デバフの時にあたしが魔力補充の手伝いをする予定さ。よろしくね」
他の参加者は全く知らない二人がいきなり現れたので、戸惑っていた。
しかも冒険者じゃないと聞いて、だいじょうぶなのかと心配そう。
「疾風のテオさんとは、王都でよく一緒に仕事したんだ。組んでドラゴンとも戦った事がある。大物狩りのデバフ役に関しては、大ベテランだ」
「へえええ。そいつは心強いな。ドラゴン戦の経験者が少ないんで助かるな」
リシャールが感心したように、つぶやいた。
ギルバートが話を進める。
「支援士として、大地の鼓動からホルガーが参加だな。斥候も兼務か」
「まかせてください」
「弓士はルカ・ルーとアナベルでいいな」
「はい。何でもやりますので、こき使ってください」
大地の鼓動の弓士、虎人のアナベルがうれしそうに答えた。
その後は順調にメンバーが決まっていった。
大枠の方針が示され、個々のパートごとに動きを指示していった。
リシャールが何かを確認するように頷きながら、立ち上がって話す。
「そんじゃ、大体、こんなところか。出発は早い方がいいな。明後日でいいかな?」
「明日でもいい」
「いや、まだ盾士と回復士の1組が決まっていない。1日猶予を取っておこう」
「分かった。リシャさん、この後、どうするか決めよう」
「ああ」
◇ ◇ ◇ ◇
話し合いが終了し、解散となった。
参加が決まったメンバーは残り、それ以外の冒険者は帰っていった。
「さて、ギル、前衛はどうするかな。2人じゃきついだろう」
「んー、何とかなるが、もう一組居た方が余裕ある。いい盾があるんだし」
「しかし、Cランクの連中は、乗り気じゃなかったな。まあ、無理強いはできん」
「やる気無いやつは、居ない方がいい」
「ソロでやってる盾士はあんまりいないしなぁ」
「数日待ってもらえれば、うちのレオがいけるかも」
「いや、無理させるな。怪我をなめたらいかん」
「はい・・・・・」
フィリーネが申し訳なさそうにうなずいた。
「あの、ちょっといいですかい?」
テオドールが遠慮気味に口を挟んでくる。
「テオさん、いい考え、あるのかい?」
とギルバートが答える。
「とにかく硬くて力があって、守りができればいいんですよね?」
「ん、そういうこと」
「うちの商隊の護衛なんですがね。ドワーフなんですが、元冒険者でしてね。あ、元じゃないか、今も冒険者か。攻めはからっきしなんですが、守りはかなりのもんなんですよ」
「ほう」
「鍛冶屋兼冒険者でいい腕だったんで、うちでスカウトしたんです。冒険者やってたのは他所の国なんで、こっちじゃ知られてないですけどね」
テオドールの意見を聞き、興味を持つギルバート。
「テオさんの目から見て、防御は相当なのか?」
「かなりのもんですよ。そういう人材じゃなきゃ雇わないんで」
「今、ここに連れてに来れるかい?」
「ええ。リリッ。ひとっ走り行って、ラドを連れてきな」
「おっけ」
テオドールの指示を受け、リリー・エフがすぐに席を立つ。
部屋から出て、廊下を急ぎ出した
◇ ◇ ◇ ◇
「リシャさん、大盾を見せてくれないか?」
ギルバートがリシャールに向かって、話しかける。
それを聞いた盾士のマルコも、ギルバートに寄ってきて話しに加わる。
「ああ、俺も借りたい。早く慣れないといかんな」
「マルコは大盾は使う事、あるのか?」
「ごくたまにだな、基本的には盾と剣を使うな。うちは弱小なんで攻撃もやらんとな」
「待ってろ。今、大盾を運ばせる」
リシャールは職員に目配せをする。
察した職員が、部屋から出て行った。
「とりあえず盾は持って帰って、使ってみてくれ。強固なうえに、重量軽減とか付いてるって言ってたな」
「ん、俺は前に使った事ある。どこの騎士団も似たようなもんだろ」
「本来は、ここの騎士団が討伐してくれれば、いいんだがな」
「まあ、貴族の親衛騎士団だと、そこまで期待しても無理」
「王都の騎士団とは違うからな。貴族の箔付けみたいなもんか」
「そんな感じ。イザとなったらどこの街も、王都に泣きつく」
リシャールはやれやれという顔で、溜息をつく。
ギルバートは少し考え事をしている様子。
しばしのち、ルカ・ルーの方に顔を向ける。
「ルカ。探索を任せようかと思ってる」
「この前みたいな感じですかね」
「ん、ワイバーンが、他にも居るかもしれん」
「分かりました」
「ブレスの監視は、ホルでいいかな?」
ギルバートは大地の鼓動の支援士にも、話しかけた。
「ああ、任せてくれ。この前ので見切ったんで、たぶん、だいじょぶ」
「わしも、ブレスには気を配っておきますよ」
テオドールが自信ありげに、話に加わる。
「ん、テオさんにも頼むか。とにかく、デバフは切らさないでくれると助かる」
「分かってますよ」
ギルド職員が大きな盾を運んで、部屋に入ってきた。
3枚をリシャールの傍のテーブルに、積み上げた。
リシャールがギルバートに向かって、話す。
「よく見てくれ。大丈夫だとは思うんだが」
「どれ」
ギルバートが一番上の大盾を手に取る。
「ん、やっぱり王都にあったのとほぼ同じだ。これならかなり使いやすい」
「どれどれ。おお、思ったより軽いな」
マルコも1枚を手の取って、じっくり調べだした。
「マルコはフィリィと組むんで、連携取れるように頼む」
「ああ、任せておけ。おい、フィリィ、向こうで相談するか」
「ええ、分かったわ」
二人は少し離れたところに移動し、身振りを交えて打ち合わせを始めた。
「ギル。私はどうすれば?」
「ん、アンジェは、俺の回復。それだけでいい」
「分かったわ。でも一緒に戦うのなんて、何年か振りなんで、ちょっと戸惑うわね」
「んー、今日、このあと、3人で狩りに行ってみるか」
「予行練習ね。ぜひ、お願いしたいわ」
「私もオッケーです。楽しみです!」
アンジェリクがあれほど願っていた、ギルバートとのパーティ狩り。
一緒に行けることになり、喜ぶアンジェリクとルカ・ルー。
「アンジェは対火防御のバフもあったか?」
「あるわよ。攻撃アップと防御アップ、速度アップといろいろ使えるわ」
「役に立ちそうなのをホルと手分けして掛けてくれ。途中で切れそうだったら上書きも頼む」
「それじゃ、ちょっとホルガーさんと相談してみますね」
アンジェリクは離れて行き、ホルガーを見つけて話しかけた。
ギルバートは頭の中で、実際の戦闘をイメージしている様子。
リシャールも戦闘のシミュレートをしながら思案気だった。




