24.連携
ギルバートの作業が終わったので、再び移動を始める。
ルカ・ルーが先頭に立ち、探索に意識を集中する。
探索の範囲を少し拡げたら、四方にかなり多くの魔物にいることに気づいた。
「この辺はかなり魔物が多いですね。あちこちにいるようです」
「山に近づくように進んでいこう」
「分かりました。途中で魔物とぶつかっても、だいじょぶですか?」
「倒しながら進もう」
「了解です」
森の中の細い道を、時々枝分かれしながら山際に向かって進んで行く。
しばらくすると、道の先に7-8匹の魔物の集団が感知された。
「この先に7-8匹の集団がいます」
「この辺でその数なら、ズールエイプ。人の大きさの凶暴な猿」
「数が多いですね」
「んー、まあ、二人ならだいじょうぶ」
「私はどうすればいいですか?」
ルカ・ルーは分からない事は素直に聞くのが一番、と思って尋ねる。
「まずは1匹に集中攻撃して倒してくれ。俺が他のを引き寄せるから、順繰りに確実に息の根を止めてくれ」
「分かりました」
知らない魔物の対応を聞いても、ギルバートは嫌な顔もせずに教えてくれる。
彼に対する信頼感は、どんどん増すばかり。
「準備できたら近づいてみよう」
「はい」
ルカ・ルーが前になり、気配を消して魔物に近づいていく。
少し進んだところで、黄色い大型の猿が数匹見えてきた。
木の実を拾って食べていたり、他の猿の毛繕いをしていたり。
一番手前の1匹はキョロキョロしながら周りを警戒している。
ルカ・ルーは射程ギリギリから、背中を見せて毛繕い中の個体に狙いを絞る。
矢をセットして、集中して弦を引いた。
「ひょぃ」
いつもの口癖が飛び出す。
ピュシュッ
いい音がして矢が飛んでいく。
ズシッ
矢に気付かないまま、猿の背中に深々と突き刺さった。
矢を食らった猿は、身構えながらこちらを振り向く。
ほぼ同時に他の猿も皆、こっちを見た。
ギャアアアアアッ
一斉に雄たけびを上げて、威嚇してくる。
ルカ・ルーは最初に狙った猿に向けて、すでに2射目も放っていた。
矢が真っ直ぐ、魔物に向かって飛んでいく。
狙われた猿は、右に飛んで逃げようとした。
ルカ・ルーは矢を操り、右に逃げていく猿を追いかけて腹に直撃させた。
猿は腹を押さえてその場でうずくまる。
3射目は首から肩を狙った。
その矢が深々と突き刺さる。
(いい感じで刺さった!ナイス!)
調子がいい時には、どんどんうまくいく。
ルカ・ルーは知らず知らずのうちに、顔に笑いが浮かんでいた。
ギルバートは矢が放たれると同時に、スタスタと群れに向かって歩き出していた。
矢が当たり、猿の集団が彼女に襲いかかろうとダッシュをしだす。
群れに近づいたところでギルバートは、横殴りに剣を振るった。
猿の集団全体に向けて、薄い霧のような物が飛び出した。
それを受けた猿の集団は、一斉にルカ・ルーから目を離し、彼に向かいだす。
猿たちは怒った顔をして、全てが彼に噛み付こうとしだした。
(これはたぶん、敵のターゲットを自分に集める魔法ね)
猿たちの攻撃目標が、ギルバートに固定したようだ。
ルカ・ルーは余裕を持って、狙いをつけられるようになった。
1匹づつ確実に倒していく。
ギルバートは多くの猿に一斉に攻撃されても、苦にする様子は全く見せなかった。
彼も剣をうまく使い、猿に反撃を加えている。
ルカ・ルーは気持ちよく矢を当てまくる。
計6匹のズールエイプを倒した。
ギルバートはその間にターゲットを固定しながら、2匹の獲物を倒していた。
合わせて8匹のズールエイプを、あっさりと無傷で倒しきった。
「攻撃が素早いから、殲滅速度がすごい」
「相手から攻撃がこないので矢を射るのに専念できて、気持ちよく撃てます」
「なんか、俺たち相性、すごくいいみたい」
「ですねー。安心感がハンパないです」
お互いの相性のよさを確認し合い、不思議に感じながら二人で魔石を拾い歩く。
「このズールエイプが、ジャイアントグリズリーの餌になる」
「なるほど。大きな熊だとこれくらいの獲物がちょうどいいんですね」
「そういうこと」
「ジャイアントグリズリーの注意を引くには、このくらいの大きさの黄色い塊がいいかな・・・・・」
「ん?」
「ああ、独り言です。すみません」
「そか」
◇ ◇ ◇ ◇
魔石を拾い終わり、二人は再び先に進むことにした。
山が少しずつ近くなってきている。
「周りには1匹だけの魔物、数匹の集まり、10匹前後の集団があちこちにいるようです」
「ここはかなり魔物の密度が高いので、一部の狩人には人気なんだが・・・・・」
「はい」
「獲物が微妙なんだ」
「というと?」
「ソロで来るには魔物が多すぎる。大きなパーティでは相手が弱すぎる」
「ふむふむ」
「数人で来ることが多いけど、獲得品がいまいちなので儲けが少ない」
「それは・・・・・来る人少ないかもですね」
「その上ジャイアントグリズリーが住み着いたとなると、敬遠されるだろうな」
ウイングボーンに常に居るわけではないのに、彼はこの付近の事に詳しい。
性格はかなりのんびり系なのだが、知識欲は高い。
自分が知らないって事を、ギルバートは許せない性質なのだ。
ウイングボーンに来た時には、空いた時間で近辺の狩り場を巡っていた。
冒険者ギルドでも情報を細かく聞いて、確かめたりしていた。
そういう事には手間を惜しむ気持ちはさらさら無い。
その積み重ねが彼の余裕であり、存在感につながっているのは当然のことだった。
話をしながらも、ルカ・ルーは油断無く辺りを探索しながら進む。
少し探索範囲を狭めて、確実に魔物の動きを見極める。
全部を倒していてはキリがないくらい、魔物は湧いてきていた。
通路に近いところにいる魔物以外は、スルーをする。
しばらく進むと、同じようにズールエイプの集団にぶつかった。
10匹いたが、まったく問題なし。
先ほどと同じくギルバートがターゲットを集め、ルカ・ルーが確実に仕留めた。
「ギルさんの使っている魔法は、相手の目標を自分に集中させるのですね?」
「あれは水吼。騎士団では真っ先に覚えるべき魔法」
「戦場で使うんですか?」
「それもあるけど、魔物の大量発生の処理とか要求されるんで」
「ふむふむ」
「各属性ともにある。火吼や土吼、風吼。違いはほとんどない」
「補助系統なんですか?」
「そう」
狩り方の違いや、魔法の使い方などの意見交換をしながら、順調に進んでいく。
時々休憩を入れながら慎重に、続けていった。
どちらも狩りの経験は豊富。
それぞれ自らのペースを身につけていたので、ほとんど混乱する事はなかった。




