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21.副ギルド長


翌朝、いつものように薄暗いうちに起きたルカ・ルーは、張りきっていた。

ギルバートとの模擬戦が、楽しみで仕方がなかった。

身支度をして、狩り用の装備を身に付ける。



(今日は自分の力を精一杯、ギルさんにぶつけてみよう)



準備をして宿を出発する頃には、日が昇り始めていた。

冒険者ギルドまで歩くメイン通りには、すでに多くの人たちがいる。

前日とは違って、華やかな人たちではなく、冒険者や狩人の格好をした人が大半。

それらに混じってルカ・ルーも歩いたが、妙に注目されているのを感じた。



(私、なんか変な格好でもしているのかな?)


(というか場違いだと思われている?)



やや不安な気持ちが湧いたが、気持ちを強くして、冒険者ギルドに急ぐ。

ギルドが近づいてくると、さらに周りの人の数が増えた。

人混みにまぎれながら、ルカ・ルーはギルドの入り口に向かっていく。

中に入って、目立たないように壁際をゆっくり歩く。


いろいろな方向から、視線を感じる。

多くの人が自分を見ながら、こそこそ話していた。



(やっぱり昨日の事よね・・・・・もう知れ渡ってるっぽいなー)



直接話しかけてくる人はいない。

でも、どうやら話題の中心になっているのは間違いない。


とりあえずギルバートを探すが、まだ来ていなかった。

ルカ・ルーはなるべく人の少ないところで立ち止まり、壁に寄りかかる。



「あれか、噂のエルフは。あれで本当に強いのか??」


「あの娘のようね。弓使いなんだって?」


「あれが鉄壁の女だろ。ヤツに負けないくらい強いらしいぞ」


「ああ見えて、すごい技いっぱい持ってるらしいぞ」


「なんでも相当な田舎から出てきたらしいよ。ここに住み着くのかね」



聞きたいわけではないのに、小声で囁かれてる言葉がどんどん流れ込んでくる。

ルカ・ルーはあまりにも注目されていて、気分が悪くなってきた。


ただでさえ目立つのが嫌なのに・・・・・

最も注目されやすい冒険者ギルドに来たことを後悔する。



(ギルさんのせいだ。なんでまた冒険者ギルドなのよ・・・・・)



もう外で待とうと思い、壁を離れ、出入り口に急ぐ。



「風弓さん!」



扉に届く寸前、名前を呼ばれて振り返る。

受付に並んでいる人をそのままに、アンジェリクが大きく手を振っていた。



「待って、用があるのでこっちに来てぇ」


「わかりましたー」



さすがにアンジェリクの事を無視して、外に出ていくわけにはいかない。

周りの目を気にしながら、カウンターに向かって歩いていった。



「風弓さん、奥に案内するのでちょっと待っててね」


アンジェリクが後ろを振り向いて、他の職員に指示を出した。





◇ ◇ ◇ ◇





指示を受けた人間の女性、マルティナがルカ・ルーの元に近寄ってくる。



「風弓さん、こちらにどうぞ。案内させていただきます」



マルティナがルカ・ルーを連れて階段に向かい、2階に上がる。

2階には冒険者はほとんどおらず静かだったので、ルカ・ルーはホッとした。

上がった後も廊下を進み、立派な扉の部屋の前でマルティナが振り向く。



「風弓さん、こちらにどうぞ。副ギルド長がお待ちです」



副ギルド長と聞いて、ルカ・ルーは再び緊張する。



(私なんかヤバいことしたかな?)


(それとも昨日の事で褒められるのかな?)



ルカ・ルーは落ち着かなくなったが、促されて副ギルド長室に入る。



「失礼します」


「どうぞ、お入りください」


「あの、ルカ・ルーと申します。初めまして」


「やあ、あなたが風弓さんですね。私は副ギルド長のローペと言います。本来ならギルド長のリシャールが挨拶するところなんですが、彼は今出張中でしてね」


「はぁ」


「ま、そこにお掛けください。気楽にどうぞ」



(なんか、怒られるわけではなさそうね)



ルカ・ルーはなごやかな雰囲気に、安堵する。

ローぺは壮年の人間の男性。

とても人当たりのよい、優しそうな雰囲気を纏っていた。



「昨日は大活躍だったそうですね」


「いえ。ぜんぜんたいした事してないです」


「ギルさんと二人で飛鷹騎士団を壊滅させたんですから、普通じゃできない事ですよ」


「あ、そのギルさんと今日ここで待ち合わせしてるんですが・・・・・」


「ああ、そうでしたか。ちょっと待っててください」



ローペはそう言いながら、机の上にあったベルのような物を鳴らす。



リリン、リリン



少しして、マルティナが顔を出す。



「風弓さんが、ギルさんとのお約束があるそうです。彼が来たらこちらにお連れしてください」


「あ、鉄壁さんなら下に来てましたよ。多くの冒険者に囲まれて大変そうでした」


「ふむ、それならすぐに、お連れしてください」


「かしこまりました」



ギルバートが冒険者に囲まれて、閉口している様子が想像できる。

ルカ・ルーはなんともおかしかった。



「すれ違ってしまったようですね」


「下はすごく人が多かったですので」


「うちは朝にはいつもこんな感じです」


「田舎では狩人ギルドしか行った事がなくて、ここの賑やかさにびっくりしました」


「そうですか。ベアバレー村でしたっけ?」


「はい」


「何回か行った事ありますよ。あそこは静かでいいところですね」


「ありがとうございます」



コンコンと扉を叩く音。



「ああ、入ってください」


「失礼します」



と言って、マルティナが扉を開ける。

そしてギルバートが、スタスタと中に入ってきた。



「ロペさん、久しぶり、昨日はいなかったね」


「やぁ、ギルさん。下でもみくちゃにされたって?」


「ん、参った。うるさいくてかなわない」


「まぁ、有名税です。我慢するしかないですね」


「んー、なんかイヤだなあ」



ルカ・ルーは本気で嫌がっているギルバートを見て、また可笑しくなる。

つい声に出して笑ってしまう。



「ふふふ」


「風弓さん、何笑ってんの。うるさい原因の半分は君なんだぞ」


「ええっ!」


「あれは何者だ、どういう関係だ、もうどうでもいいこと延々と・・・・・」


「うわぁぁ。もうしわけありませんです」


「いいけど、で、ロペさん、今日はなんだい?」



ギルバートはローペの方を向き直って、話しかけた。





◇ ◇ ◇ ◇





「昨日の事で二人に、ギルドから感謝を述べようと思ってね」


「ん。そんじゃたいした用はないんだ」


「うーん、そう言われちゃうと身も蓋もないないですねぇ」


「リシャさんが戻るの明日なんでしょ?」


「そう。今回の清算は、明日の予定となってますよ」


「んじゃ、明日、また来るよ」



ギルバートは副ギルド長やギルド長と、かなり仲がいい様子。



「それと、風弓さんにはレベルアップの話がありましてね」


「えっ!私、レベル上げてもらえるんですか?」


「そう。昨日の大活躍がギルドへの貢献と認められるんですよ」


「そうなんですかー。特に依頼を受けたわけじゃないんですけどね」


「まぁ、こっちの都合もあるというか・・・・・」


「ギルドの都合??」


「要は、実力がある者はきちんとレベルを上げて、実力が劣る者は必要以上にレベルを上げない」


「そういうことか」



とギルバートが納得している様子。



「冒険者ギルドの組織内でね、レベル表記をできるだけ実力どおり適正にしよう、という機運が高まっているんですよ」


「それは賛成。ロクに動けないやつがレベル20、とかある。特に最近はレベルが当てにならん」


「とにかくレベルを上げたがる人が多いですよね、確かに」



ようやく理解できたルカ・ルーもうなづく。



「ほんとはギルさんのも実力通りにもっと上げたいんだけど、本人が嫌がりますからねぇ」


「俺はいい。聞かれるたびにゴチャゴチャ言われてめんどくさい」


「まぁ、そのうち気が向いたら受けてくださいよ。冒険者ギルド創設以来、初のレベル40ってのは上層部でも期待してるんですから」


「レ、レベルよんじゅうううっっ!?」



素人丸出しで驚くルカ・ルー。



「だからイヤだっつーの。見世物じゃないって。めんどうなこといっぱいだろ、どうせ」


「まぁ、今回は無理に上げろとは言いいませんよ。でもうちのギルドがレベル表記を、実力主義に切り替えようとしているのは賛成でしょ?」


「まあな、そしたら風弓さんなんか一気にレベル20以上にしてもいいんじゃない?」


「イヤイヤイヤ!ギルさん、おおげさですから!」



自分に振られてあわてるルカ・ルー。



「さすがにレベル5からいきなり20というわけにはいきませんよ」


「も、もちろんです。それは私の心臓に悪すぎます」


「でもまぁ、昨日の矢の刺さり具合を見れば、只者ではないというのは大体分かります」


「そ、そんなもんなんですか・・・・・」


「オークの後ろっ首なんてそれはもう、きれいにきっちり突き刺さってましたよ」


「ん、風弓さんは弓を射る姿から、飛んでる時の矢筋、矢の姿勢、それはもう見事だった」



とギルバートが納得しながら、つぶやく。



「ほう。ギルさんが他人を褒めるってのはめずらしいなぁ」


「くだらんヤツラを褒めてもしょうがない」


「私も褒めて貰った事がないというのは、くだらんヤツラの一員ってことですかね」


「本人には面と向かって褒めたりしないの、俺は!」


「そうやってムキになるのも、まためずらしいですね」



とローぺはニヤリとしながら、ギルバートに顔を向ける。



「まぁ、冗談はこれくらいにしておきましょう」


「だな」


「とりあえず風弓さんはレベル10ということにしますね」


「ええっ!結局いきなりアップでいいんですか!」



予想していたよりも上がっていたので再び驚くルカ・ルー。



「ギルドとしてそれ以上の実力があるという認定なので、遠慮せず受けてくださいね」


「は、はい・・・・・」


「私は、たぶん戦闘力だけなら、レベル20以上でもいけると踏んでます」


「うはっ」


「ただ、冒険者ってただ強いだけじゃダメなんですよ。状況の正確な判断、他人との駆け引き、物事を進める手際よさ、何よりも経験の蓄積」


「なるほど」


「そういう余地を含めてのレベル10ですので、今後に期待してますよ」


「分かりました!これからも御指導お願い致します」


「ま、妥当なところだ」



とギルバートがルカ・ルーを見てにこりと笑う。



「ギルさん、これからもいろいろ教えてくださいね!」


「まあ、俺のできる範囲でなら」


「とりあえずは模擬戦ですね!」


「おう」





◇ ◇ ◇ ◇





なんとなく話がまとまった雰囲気が、部屋の中に流れた。

ローぺも伝えるべきことを伝えたので、まずは一段落といった表情。



「今日はギルドの来たのは風弓さんに会いに?」


とローぺがギルバートに話を振る。



「そう。風弓さんと模擬戦やるんで場所借りようかと」


「模擬戦?訓練所でですか?」


「そう」


「うーん。注目されますねぇ?」


「む、そうだよな。それはまずい・・・・・」



ギルバートはギルドの人の多さを失念していたようだ。



「昼なら空くかな?」


「昼は新人教育でギルドが使いますからねぇ」


「むむ。どうしよう?風弓さん」


「ど、どうしましょうか・・・・・」



自分から言い出した事だったので、ルカ・ルーも困ってしまう。



「風弓さんは得意な場所はどこ?」


「得意?」


「戦いやすい場所」


「えーと。私は森の中なんですよ、好きなのは」


「森の中か。俺はどこでも構わん」



聞いていたローぺが口を挟む。



「それならアッシュベリーの森がいいんじゃないかな?あそこなら誰の邪魔も入らないでしょう」


「んー、それが良さそうだな」


「そんなに遠くないですしね」


「んじゃ、アッシュベリーに行ってみるか」


「分かりました。付いていきます」



アッシュベリーの森がどこにあるのかは知らない。

でも、森と聞いてぜひ行ってみたいと思うルカ・ルー。



「それならギルさん。前から頼んでいたあの依頼も、ついでにやってくれませんか?」


「あの依頼?」


「ほら、あの森に住み着いたジャイアントグリズリーの討伐ですよ」


「そんなのあったっけ?」


「パーティ依頼なので、パーティでとお願いしたら、そんなのやってられるか、と断られました」


「ん、あれか」


「その後も誰も倒せないのでけっこう被害が拡がっちゃっててね」


「めんどくせえなあ」



ギルバートはあまり乗り気じゃない。



「迷惑している人がいるなら、私、がんばりますよ」


とルカ・ルー。



「いや、ソロ依頼じゃないので、複数で行ってもらわないとならないんですよ」


「それじゃぁ、ギルさん。やりましょうよ」


「んー、なんか張り切ってるな。ま、しょうがねーか」



ギルバートがしぶしぶ同意すると、ローペはすごく嬉しそう。



「それは助かります。昨日といい今日といい、二人はウイングボーンの救世主ですよ」


「けっ。そんなおだてられても嬉しくねーや」


「人の役に立てるなら嬉しいです」



正反対の返事をする二人。



「それでは、下に行って手続きしてくれますか?」


「んー、もう下は空いたかな」


「受付がスムーズにできるようにしますから、1階に下りてくださいね」


「はい。分かりました」



ルカ・ルーは妙に張り切って答える。

ギルバートはそれを見て、やれやれという顔。


どこまでも対照的な二人だった。

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